表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/451

2.人の心

 城壁から身を躍らせ、たった一人でアレス軍に挑んでいったのはリオンだった。


 この国を作り上げるときだって、暗殺隊を率いて汚れ仕事を引き受けたのはリオンだった。


 なのに、ヴァティールの活躍の前にはそれすら霞んでしまう。

 大人しかった俺の弟のことなんて、もう誰も思い出さない。


 俺はふと思い立ってリオンの机の引き出しを探った。

 人の机をあさるなんて良くないことだが、どうしても探したい物があったのだ。


 綺麗な細工で編まれた小さなカゴの中にそれはあった。


 リオンが幼い頃、いつも持っていた小さな小さな熊のヌイグルミ。

 実際は俺があげたものではなかったが、リオンは俺からのプレゼントと信じていつも持っていた。


 この国に来て落ち着いてからはそんなことも段々無くなっていたが、それにまだリオンの温もりが残っているような気がして軽く撫でてみる。


 リオンはいつも、どのような気持ちでこのぬいぐるみに心を寄せていたのだろうか……?


 俺はリオンの身代わりとしてヌイグルミを棚の上の方に飾った。

 急にヴァティールがこの部屋に来たとしても、背の低いあいつからは死角となり、気づかれにくいはずだ。

 あいつにはアレを触られたくない。


 いや、弟に関するもの全てを触られたくない。


 弟の魂は深い眠りについてしまったけれどせめて……せめてこの部屋だけはいつリオンが戻ってきてもいいようにこのままにしておくのだ。


 確かにリオンが存在したという証のために。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ