3.幸せの行方
「……兄さん、何のお話だったのですか?」
部屋に帰るとまだリオンは起きていた。
チェスタの盤を前に不安そうに俺に尋ねる。
「何でもないよ。またいつものアルフレッド王の新商品の話だよ。
ただ、ちょっと他のマフィアたちの動きが変だから当分闘技場は閉めるって話も聞いたけどな」
「……そうですか。
兄さんは危ないことをしたりしないですよね?
大丈夫ですよね?」
リオンが心細げに瞳を揺らす。
「しないよ。
俺は王の親衛隊員だから闘技がなければ基本的には城務めだし……。
でもまあ、これからは書類仕事で忙しくなるみたいだから俺が居なくてもちゃんと一人で寝なきゃダメだぞ?」
俺は弟を安心させるために抱き寄せ、そのままよしよしと頭を撫でた。
リオンはいつも通りおとなしく頭を撫でられていたが、
「…………兄さんのお気持ちは……よくわかりました」
と、静かに呟いた。
腕の中で発せられる声音には冷たさが含まれていて、俺は以前森の中で感じたような違和感を持った。
森の中でシリウス国を目指したとき、リオンの言ったあの何気ないセリフ……笑っているのに冷たく感じられたあの違和感が、未だに心に引っかかっている。
でもその違和感の正体が俺にはわからない。
弟はそれきり口を閉ざした。
俺はこの時気づくべきだったのだ。
リオンの様子が明らかにおかしいということに。




