6.親衛隊候補生
とある昼下がりのことだった。
今日も親衛隊員候補生は、貴賓室に集められていた。
当然の事だが、貴賓扱いしてもらっている訳ではない。
単に撮影に使えそうな煌びやかな部屋がここと、玉座の間しかないからだ。
しかし今日は撮影ではないらしく、念写師のおじさんから一冊の写真集を渡された。
どうやら連日の写真が本として仕上がったらしい。
撮影時には居なかった王も、今日は顔を見せている。
「ふっ。君たちの写真集が出来上がった。それぞれ目を通してくれたまえ」
王は髪をかきあげながら不敵にわらった。
嫌な予感しかしないが、一応目を通してみる。
そして……初頁から誤字を発見した。
大丈夫なんだろうか、この組織は。
「あの、すみません。1ページ目のプロフィール欄なのですが、俺の年齢が間違っています」
手を上げて言うと、王はまた髪をかき上げニヤリと笑った。
「ああ、それは気にしないでくれたまえ。
ウチはまっとうな組織としてやっていくつもりだから、13才を正規親衛隊員として働かせてはマズイのだ。
君は結構身長があるし、実際の売り出しまではあと数ヶ月ある。2才程度ごまかして15才と書いたところで全く問題はない。
そのために念写師に頼んで不自然にならない程度に大人っぽく写してもらっているだろう?」
再び写真に目を落とすと、王の言う通りだった。
何気にほんの少し大人っぽく修正されてるような気がする。
しかし『まっとうな組織』が子供の年齢を誤魔化して働かしちゃイカンだろう……と突っ込みそうになりながらも、そこは流した。
髪を染めたり名を変えたりはしてはいるが、どこから素性がバレるか分かったものではない。
こうやって堂々と年齢を偽り嘘の宣伝してくれるなら、そのほうが俺にとっても都合がいい。
他の連中のプロフィールにも目を通す。
「……アリシアは18才だったんだっ……!」
もう少し上かと思っていた。
いや、これもピチピチの十代として売り出したい、王の企てた偽装年齢かっ!?
思ったことがそのまま顔に出ていたようで、アリシアが軽く俺を睨む。
「何エル、その目は!?
正真正銘の18才だってば!! えのとしに直せば竜・クルス神歴では1188年生まれよっ!
失礼ね!!」
憤慨するアリシアを王が見た。
……しまった。
「……君たちは姉弟と聞いていたが?」
王が疑問の声を上げた。