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目が覚めて、時計がある場所を腕を伸ばして探す。何度探しても時計は見つからないので美春は、起き上がって探そうとした。が、いつもの部屋じゃない事に驚き、軽く身動きが出来ないので隣を見てみると、周吾の顔が近くにあって叫びそうになった。美春は初め、寝ぼけて周吾が誰か分からないでいたが、だんだん思い出してきた。


(本当に一緒に寝てしまった)

自分の貞操は守られているのだろうか、そっと体を見たが特に乱れた様子もない。自分の体が何か可笑しいと違和感も感じないので、安堵した。起こさない様に、そっと腕から抜け出しベットから出て自分のカバンが、一階のソファーにあると思いだした。この家は時計が無い為、携帯で確認をしなければいけない。日の出入りが早く、すでに明るいので急いで時計を確認する。


時刻を見れば、まだ六時半だった。

バイトの時間に体が、慣れているのか何時もと同じ時間に起きれてる事に美春は驚いた。朝食を作りたかったが、食材も何もない。コンビニで何か買って来ようと、着替えたようとしたが服が無い。翔子が用意した服は、周吾に鍵を掛けられて入れない状態。昨日の服は、二日間来ていたので着られそうにないが仕方が無いので、着る事にした。


「直ぐに帰れば、恥ずかしくないよね」

誰も二日間、着ていたなんて知らない。人を避ければ、匂いなど気付かれないだろう。お財布が入った鞄を持って、近くのコンビニまで急いで走った。周吾の家は本当に周りが何もないので、走ってコンビニまで行かないと遅くなってしまう。その間にゴミ収集車が来てしまっても大変、家の前に置いといてカラスに突かれてしまって、汚す恐れが大きいので駄目。収集車は一軒家の場合、可燃と不燃は家の前まで来てくれるのでシートで隠していたら気付かれないかもしれない。ペットボトルや、その他のゴミは何処に捨てるんだろう?後で周吾に聞いてみようと、思い今は急いでコンビニまで、走る事に専念した。


「2086円になります」

「あっ、レシート下さい」


最近ではレシートを渡さない店員が、増えてきたので毎回言っている。チッと舌打ちする音が聞こえてきたので、名前を確認した。『下内しもうち』と書いてあり、駄洒落ではないが舌打ちする下内だと、美春は笑ってしまった。名前が読み方によっては、『したうち』だからだ。本当は、舌打ちした相手の名前を確認して文句、言ってやろうと思っていた。しかし、舌打ちする下内が、ツボにはまってしまい文句言う気持ちが無くなってしまった。突然、美春が噴出して笑うので店員は怪訝な顔をしてしまい、早々に店を出る。


笑いが暫く止まらないので、ゆっくり歩いて帰る。漸く笑いが止まって、時計を確認するため携帯を取り出したら振動していた。マナーモードにしていたので、気付かなかったが知らない番号なので、出るかどうかを悩んだ。時間が経てば、振動は消えて画面に戻る。すると、着信履歴が全て同じ相手からになっていたので少し気持ち悪い。そして再び同じ番号の相手から、かかって来たので悩んだ末、電話に出る。


「もしもし」

「出るのが遅い」

「あの、どちら様でしょうか?」

「メイドは主人の声も分からないんだ」


周吾だと分かり、慌てて謝った。だが何故、携帯番号を知っているのか尋ねれば簡単に調べられると、恐ろしい事を平然と言われてしまう。何十回も携帯に着信が、残ってるので何か急用なのかと聞いてみれば、家に居なかったので電話をしたらしい。きっと、色々してやったのに勝手に家を出て行ったと、怒ったのだろうと、美春は思った。


「メイドは朝から何、はあはあ言ってるの」

「走って・・るので・・仕方ないで・・す」

「ジョギングしたいなら庭で走って」


電話に出てから、走り出した美春なので息が、はあはあしてしまう。周吾は勘違いしてるが、早く帰ってこいの言葉に分かりましたと、素直に言う。此処で訂正をすると、余計に苦しいからだ。家に帰った時、往復で四十分も経っていた事に、正直驚いた。美春が笑って、途中のんびり歩いていたが時間がかかり過ぎだ。本当に、何でこんなに、周吾の家の周りは何も無いのか、聞いてみた。


すると、周吾の家周辺は全て、周吾の私有地としている為、何もない。誰も通らないから、道路も私道なのか聞いてみると、特別に許可してる者以外は入れないらしい。ゴミ収集車も許可を出してるので、ちゃんと回収しに来てくれる事に安心した。その他のゴミも周吾の家だけ特別に、家の前に置けば回収するらしい。お金持ちの特権だろうか?理由は分かったが、看板を見掛けた事もないので間違って入って来る人も、いるかもしれない。と、聞けば美春がちゃんと見ていないだけで、看板はあるらしい。以前、分かって何回も入って来た人がいた為に、周吾が言う制裁をしたところ誰も来なくなったようだ。

(この人、一体何をしたの!?)


「その袋」

話は終わったと、いうような雰囲気で美春がコンビニで買ってきた袋を指す。朝食を作ろうとしたが、材料が無いのでコンビニで買った事を説明した。


「昨日と同じ服」

「これは周吾さんが、鍵を渡さないから」

「汗掻いてる。シャワー浴びて」


鍵を渡され早くと、二階の方へ視線を向ける。美春は二階にある周吾が昨夜、鍵を掛けた部屋に向かい開ける。中に入れば、とても大きなベットがあり、その上に一着だけ服が用意されてあった。これを着れば良いのか分からず、一様クローゼットも見た。中を見れば、沢山の服がぎっしり有ったが迷ってしまい結局、ベットの上に用意されていたワンピースを手に持ち、お風呂場に行く。


シャワーを、さっと浴びて出る。急いで着替えて、携帯で時刻を見れば七時半だったので忘れない内にゴミを、門の外に置いとかなければいけない。8時までに出さなければいけないから、来る時間を見計らって出さないとカラスに突かれてしまう。髪は乾かしたいが、此処の家にはドライヤーが無かったので自然乾燥に任せる。髪が傷むが、しょうがない。慌ただしくお風呂から玄関に向かおうと、すれば周吾に引きとめられてしまう。ゴミ出しの事を説明すれば、回収しに来たらチャイムを鳴らして門を解除すれば勝手に持ってくだろ?と、意味不明な事を言っている。外に置かなければ回収などしないと、説明したが面倒くさいの一言で終わってしまった。


そもそも、回収しにチャイムを鳴らすなら毎回来ていたはず。周吾の様子からして、何となくゴミ捨てのやり方も知らないと思った。けど、一回も出した事ないのか分からないが、ゴミ収集車はちゃんと来てくれるのか不安になってきた。今まで、ゴミが出されていないのだから、もしかしたら来てくれない可能性もあるかもしれない。


「なに?」

「本当に来てくれるのかなと、思って」

「なら、電話して回収来させればいい」


面倒だが、周吾が言わないと動かないらしく。何が動かないのか分からないが、電話をして持って行ってと、話していた。これで、ゴミ出しは解決?したらしく朝ご飯を食べさせろと、周吾が言うので半信半疑だったがコンビニで買ってきたご飯を一緒に食べる事にした。


「周吾さん、ご飯かパンか分からなかったので両方買って来ました」

「朝はパン」

「それじゃ、明日からはパン・・洋食で作りますね」


無言でサンドイッチを手に取るが、開け方が分からないようで、くるくる回している。美春が開け方を教えれば、お決まりの『面倒くさい』を言葉にする。きっと、コンビニを行った事が無いのかもしれない周吾は、店でそのまま食べれる物しか見た事が、無いのだろう。二人で、朝食を食べてまったりしていればチャイムが鳴って、本当に門付近に置いてあった大量のゴミを持って行ってくれた。


「周吾さん何者ですか」

「ご主人様」

「・・・」


電話一本で勝手に持って行ってくれる収集車など、聞いた事がない。個人でゴミを依頼したわけでも無いのに、本当に周吾は何者だろうか?不思議だ。


「そう言えば昨日、突然部屋の電気消えましたよ」

突然、思い出した昨日の事を周吾に聞いてみた。


「時間になると勝手に消える」

「凄いですね。てっきり、停電かと思いました」


美春は、時間になると勝手に消えるようになる事が便利で凄いと絶賛していた。しかし、何か作業している時に勝手に消えては、困るのではないか思ったら人の動きで見極めるらしい。何とも便利な家だなと、思ってれば、ふと周吾が眠れたのか聞いてくる。思い出してみれば、ぐっすり眠れた美春だった。


「初めは眠れませんでしたが最後は、安心して眠れましたよ」

「そんなに良かったんだ」

「ええ・・考えてみれば、お父さんと一緒に寝てたようで安心しました」


にこにこ笑顔で話す美春に対し、周吾は『つまらない』と美春に聞こえない小さな声で、喋った。

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