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親友(悪友)

周吾が家の中に入り姿が見えなくなって、美春だけぼーっと立ったままいた。先ほどの、周吾の行動を思い出す。エクレアを食べさせてもらい、凄く美味しかった。だが周吾にクリームが付いてる理由で舐められ、美春がファーストキスと怒り出て行こうとすれば、本当のキス・・・本当の本当のファーストキスをしてしまった。


(どうしてあんな事するの・・・)

初めてで分からない、でも周吾は慣れてるはずだ。挙句キスが優しく触れるだけだったが、厭らしい意味ではなく。安心できる気持ちよさの自分に後から気付き、美春は戸惑っている。周吾は家の中に消え、出て行く事は許されないし、勝手に出る事も出来ないと分かり一先ず家の中に戻る。一階には、周吾が居なかったので二階に上がったようだ。先程いたソファに座り、美春が畳んで置いていた洗濯物は周吾が、崩してしまったので落ち着く為にも再び畳み直した。けど、チラっとソファーの横をみれば、まだ残っているエクレアがどうしても、周吾とのキスを思い出して落ち着かない。はぁーと長い溜息を吐けば、突然うるさいチャイムの連打が始まった。

暫くすると止むが、今度は玄関の方からドンドン凄い音がする。周吾は一向に降りて来てくれないので美春は、恐る恐る近付きドアを開けるが其処に居たのは、ボンベマスクの巨人だった。


「いやぁぁぁぁぁぁぁ」

全身汚染され消毒など洗浄する時に着る、防護服を着ている。美春は叫び、不審者だと思い傍にあった箒で、思いっきり頭や、体を叩く。


「痛い、痛いってば止めてよっ」

「この泥棒。出て行ってよお金は有りそうで、無いんだから無駄」


周吾はお金を持ってるはずだが、此処は無いと嘘をつく。体格差で負けるので、美春は必死で箒で相手を叩き追い出そうとする。しかし相手は男の声なのに、女の喋り方で変な感じだ。


「ちょっと止めてよ。周吾、周吾はいないの?」

美春の持っている箒を簡単に掴み、家主である周吾を呼ぶ。どうやら、泥棒ではなく周吾の知り合いだったらしく美春は巨人に頭を下げた。ボンベマスクを取り、防護服も脱ぎ、普通に男性物の服を着ている。黙ってると美形の男の顔だ。身長は、高く推定190近くあるだろう。


「貴女ね。周吾の言っていたメイドちゃん」

「ごめんなさい。まさか不破さんの、お知り合いとは知らず」

「良いのよ私こそ、あんな格好で現れたんだから。驚かしてごめんね」


綺麗になっちゃってと呟き、家の中を見て周りソファーに座る。汚すぎていつも周吾の家に来る時は、完全防護服にボンベマスクを付けてたらしい。巨人で泥棒と勘違いしたのは、堀影翔子くつかげしょうこで周吾の親友だそうだ。お互い自己紹介をしたが、翔子は男の本名だけ絶対に、教えてくれなかった。


「あの、お茶を出したいのですが何もなくて・・・」

「いいわよ。周吾の家はいつも何もないし、汚いゴミ屋敷だったんだから」

「勿体ないですよね。こんな素敵なお家なのに」

「宝の持ち腐れね。無駄に大きな家の癖に、ほぼ寝てるだけで、汚くしてたら意味ないわよ」


気付いたら白骨化して発見されるんじゃない?

けらけら笑いながら冗談を言う翔子に、美春は苦笑いしか出来なかった。

(本当になってそうで、冗談に聞こえないかも)


「ところで、周吾は出掛けてるの?いつもなら面倒くさい言いながら、現れるんだけど」

「あっ、不破さんなら、二階に・・いると・・思います・・・」


強烈な翔子の出会いに、忘れかけていたが周吾とのキスを思い出して最後は、小声になって赤面してしまう。そんな美春に不思議そうな顔しながらも、二階に上がって周吾を呼びに行く翔子。美春は、一緒に行こうか悩んだがどんな顔して接すれば良いか分からず、その場でモジモジしてしまう。

緊張しながら、周吾と翔子が下りて来るのを待ってるが一向に来ない。どうしたんだろう?と、不思議に思いながら待ってれば、翔子の声が聞こえる。


「子供みたいな事言ってんじゃねぇ。さっさと、来い」


今まで女言葉で話していた翔子とは違い、男の言葉で話している。本来なら、当たり前なのかもしれないが信じられないと、思う美春。ドタバタ音がしたと思えば、ドアをバンッと開ける音がして翔子が下りて来るが肩には、周吾を担いでいた。男の大人が、男の大人を担いでる光景は滅多に見れない。周吾は、諦めたのかまたまた面倒になったのかは分からないが、大人しく翔子の肩に担がれ、だらーんとしていた。


「一体どうしたんですか」

「美春ちゃん聞いて、周吾ったら子供みたいに駄々こねるの」

「ここは、俺の家。メイドが呼ぶのは当たり前」

「ねぇ!こんな感じで部屋から出て来ようとしないのよ」


面倒くさがり屋で、特定の誰かを指名などした事がない。翔子が、あれこれ世話を焼いていたが今までにこんな事はなかった。面倒だからと人さえ、雇う事さえしなかった周吾だ。


「親友の、周吾に頼まれて来たんだから」

「悪友の間違い。用件だけ言って、帰って」

「もうー!美春ちゃんに関係してるんだから、本人にも説明しなきゃ駄目でしょ」


落ち着いて話せばいいのに、肩に担いだまま騒ぐ翔子。冷静に話してるが、そっと顔を見ると面倒そうに話す周吾。それに美春の話と聞けば、美春だって気になる。


「私に関係してるって。何のことですか」

「今朝、美春ちゃんが酷い目にあったのはね。闇金っていう危ない人達」


どうして、闇金が美春を追いかけなければいけなかったのか?美春は理解が、出来なかった。漸く周吾を降ろして、ソファーに移動し話の続きをした。

話を聞けば借りた本人は、美春の名前と住所を勝手に使ってたそうだ。張本人は、行方不明で本人の代わりに、美春が追いかけられる事になった。闇金が大家に嫌がらせしたせいで、強制退去にもなった。


「相手、見つけた?」

「勿論。でも、簡単だったし、行方不明でも無かったわ」

勝手に二人で話しを進めるので、美春は聞いてるだけが精一杯。


「相手、美春ちゃんの住んでいた同じアパートの住人だったわ」

「えっ!?」

「しかも、男なんだけど。全く反省もしてなくて、勝手に名前使われたのが悪いだって」

「それで、男をそのままにしたの?」


周吾の言葉に、翔子は『まさか!』と叫べば、色々お仕置きしたと楽しそうに話す。最後は、闇金に突き出したようでこれからは、追いかけられる事はなくなったようだ。

周吾と翔子にお礼を言い、これでこの家にも居る必要はなくなってしまったと口に出せば。

周吾が、『勝手に出て行かないと言ったばかり』と、先程の言葉をもう一度言われる。


「そうねぇ。本来、周吾といると美春ちゃんの教育良くないけど、家具一式持ってかれたでしょ?」


家も、大家に事情説明したが、信用してもらえなかったらしく。家具も服も、闇金に返してもらうよう言ったが、売り払ってしまい手元にないとのこと。翔子が言うには、周吾はお金を無駄に持ってるのでこのまま家に居た方がいいと、言う意見だ。

それでも気が引けて、迷っていると。


「すでに、美春ちゃんの服とか色々買ったのよ」


だから、暫くは此処にいましょうね。と、翔子に笑顔で言われれば何もいえない。

色々、購入したようで後で配達されると。住所変更や、色々な手続きも周吾が指示をだし、翔子や翔子の秘書が手配した。翔子も、お金持ちで有名な会社の跡取り息子と分かった。こんな凄い人達が、美春の為に色々してくれるのが疑問だ。しかし、都会にも親切な人達がいると考え暫くは周吾たちにお世話になる事にした。


「美春ちゃん明日、キッチンとかに必要な物、揃えにお出かけしましょう」

「はい」


勿論、周吾のお金だから遠慮せず買おうと、翔子は言う。

食材など少しは出そうとしたが、周吾からも問題ない。好きなだけ買うといい。と、了承をもらい困りつつも、その場では頷いた。

すると、美春のお腹からぐーっと凄い音がする。一瞬で、その場は静かになり物凄く恥ずかしくて顔をあげれなくなってしまった。普通はこの場で笑い者に、されるはずだが翔子と周吾は真面目に話すので、余計に恥ずかしさが増した。


「周吾、美春ちゃんにご飯食べさせたの?」

「食べさせた」

「本当に?美春ちゃんのお腹、凄い音がしてたじゃない」

「エクレア食べさせた」

「そんなの、ご飯とは言わないわ」


翔子が美春のご飯の事で、揉めてあーだこーだ。周吾は、エクレア食べさせたのに何故怒ると、本気で不思議に思ってる。時間も、夜になってる為三人で食事しにいく事にした


「ねぇ?翔太郎。俺、和食が食べたい」


周吾が、翔子を呼べばピタッ。

翔子は怒り『その名前で呼ぶんじゃねーよ』と、周吾を思いっきり蹴ろうとした。周吾は、簡単に避ける。翔子は、美春ちゃんには知られたくなかったのにと、わざとらしく泣く真似。どうやら、怒ったり本名言われると男に戻るらしい。


「翔子さん、本名だって別に変な名前じゃないですよ」

「だって、太郎よ。翔が付いてるとはいえ、太郎なんて」


全国の太郎さんに失礼ですよ、そっと心の中だけに思う美春。周吾は、面倒と言いながら先に外に行ってしまって。ウジウジ泣く真似をしたらスッキリ?飽きたのか、翔子は元気になった。

(二人のペースに乱されて、この先不安かも)


後ろで、そっと気づかれない様に溜息を吐いた。こうして、周吾の親友(悪友)翔子の本名を知った美春だった。

今回、会話が多いです。

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