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指輪の意味

自分自身が好きと、全く違う告白をしてしまってから何となく、ぎくしゃくした関係になってしまった。ただ、周吾の態度が他人行儀とかでも無く、なんだか普通だった。これが当たり前の主人とメイドの関係のはずなのに、周吾の並外れた感覚に麻痺してしまったのか、逆に他人行儀に見えてしまった。


一週間これが続き、周吾の身の回りの世話?を多少して朝昼晩食事を作るが夜、少しだけ口にするだけで部屋に籠ってしまう。周真は今まで、これが当たり前だったから気にしなくても良いと言われても、気になって心配してしまう。そんな事で一週間過ぎた時、周真が突然日本に帰ると言い出した。


「周真君独りにしないで」

「兄さんいるでしょ、取って食ったりなんかしないよ・・・多分」


自信無さ気に言う周真。『大丈夫』と言われるが、そんな事を今は心配しているわけでは無く、二人っきりになるあの、何とも言えない空気が耐えられないのだ。あの晩から、二人っきりになっているわけではないが、どうしても一晩耐えるにはキツかった空気を思い出す。


「兄さんと何があったかは知らないけど、大丈夫。美春ちゃんの事は大事に思ってるよ」

「絶対呆れてるよ」

「そんな事ない、ほら美春ちゃんが小指に付けてる物が証拠だよ」


左小指に周吾からプレゼントされた、ピンキーリングを指す。これが何の証拠になるの?と、周真に尋ねる。


「これは意味があるんだよ。ほら、花言葉とかあったりするでしょ?」

「花言葉?」

「そう、宝石にも意味がある。誕生石とか色々あるよね」


指輪を見せて欲しいと、周真に指輪を外して渡す。そして『やっぱり兄さんはロマンチストは似合わないな』と、直ぐに指輪を返してくれる。何の話かわからず、不思議に指輪と周真を交互に見る美春。


「ねぇ周真君どういう意味なの」

「この石はねロードナイトっていうんだ。色々意味はあるけど、薔薇色にも見えるでしょ?」


薔薇には情熱、愛情と恋愛にちなんだ花言葉がある。周吾はわかりにくい美春への想いを、指輪に託していたと教えてくれた。それと、美春の星座の牡羊座の心を癒すと、言われている石の一つでもある。


「ロードナイトは愛情豊かな気持ちを出してくれたり、恋愛に対してお守りに言われたりする」

「恋愛のお守り」

「うん、兄さんは美春ちゃんが大事過ぎて自分の気持ちに臆病になって渡したと思うよ」

「ただの、気紛れだよ」

「気紛れで人にプレゼントはしないよ。それに、兄さんも同じ石を首に付けてる」


普段は服で隠れて見えないけど、同じ石を美春は指輪、周吾はネックレスにして身に着けていると周真は明かす。


「わかりにくいと思うけど、兄さんの気持ちに答えてあげてね」

「周真君・・・ありがとう」


周吾から貰った指輪をそっと撫で、色々な意味があると初めて知り、胸が熱くなる。だからといって、周真の言葉を信じ美春と同じ気持ちかどうか、まだ聞く勇気はない。勘違いして、大恥を掻けば再起不能になりそうでごめんだ。


「それにしても周真君、宝石に詳しいね」

「あれ、僕言わなかった?」

「何を?」

「僕は宝石のバイヤーで、祖父さんの代からそうなんだよ」


言わなかった?なんて笑う周真に美春は、ただ驚く事しか出来ない。宝石のバイヤーなんて、どんな仕事かも想像がつかない美春は、とにかく凄い職業としか思うしかない。


「じゃあ周吾さんも、その宝石のバイヤーをしているの?」

「兄さんはしてないよ。昔は、父さんに世界中連れ回されていたけど」

「そう、なの。じゃあ、周吾さんって何しているの?」


本人がいない所で聞くのは、ちょっとだけ卑怯な気がするが、こうでもしないと周吾の事が何一つわからないと思う美春。


「今は日本で手広く経営とかしてるよ。本当は、宝石に関して凄い良い目と感を持ってるのに」


交渉相手が周吾の噂を知り、女性ばかりになって色々問題ばかりになって嫌になり、簡単に辞めてしまった。そこで引退してしまった周吾の父親が、周真に跡を継がせ周吾が日本で平和に暮らしてるんだよと、愚痴をこぼすのを聞く。


「問題って」

「うーん知らない方がいいかも」

「そうなの・・・」

「お陰で、兄さんの代わりに僕が家を継ぐ羽目になったんだ。更に兄さんの評判が好評過ぎてね」


カツラ被って毎回、交渉をして苦労してるんだよと教えてくれた。黒髪にしてコンタクト外せば、若い周吾に見えるから外国人女性相手には、いつもそうらしい。


「でも、この仕事は好きだし楽しくやってるよ」

「周真様、そろそろお時間が・・・ご友人の斎藤様との日本での打ち合わせに遅れてしまいます」

「あ、そうだったね。美春ちゃん僕は日本で約束してる友人がいるから行くよ」

「周真君、色々ありがとう。寂しいけど、お別れだね」


専用の飛行機に乗って、周真は日本へ行ってしまった。周真の職業や、不破家の事が少し聞けてちょっとだけ、周吾に近付けたかもと喜ぶ美春。色々の問題については気になるところだが、いつか周吾に聞けたら聞いてみよう。知らない方が良いのかもしれないが、美春は知れる限り全て周吾の事を聞きたいと思うほど、周吾が好き。


「さてと、周真君いないし何しよう?」


周吾が部屋に籠ってからは、周真が相手をしてくれたので退屈はなかった。日本なら別に問題がないだろう、でも海外で周りが何もないところでは退屈してしまう。ゲームも一週間で、やり尽くしてしまい面白味が無い。


掃除だって毎日磨いていれば、何もすることが無い。何も持って来ないで此処に来てしまい、周吾の引き籠りに近い日々が続く。本当に何もすることが無い為、美春は物凄い時間のかかる料理をする事に決めた。たとえ、周吾が食べてくれなくても時間の暇潰しにはなるので何をしようか、この家にあるパソコンで検索してみる。


洋食にチャレンジしようかと思ったが、マナーを少しでも覚えてからにしたいので何だかんだで、和食になってしまう。たとえば、ご飯を炊くのを炊飯器ではなく土鍋でやってみたり、煮物中心にあれこれ作ったら時間は潰せたが、量が半端なく増えてしまった。


「作り過ぎたの境界を越えてしまった」


パーティーでも開くのかと思うほど、和食だらけの大量のおかずがテーブルに置かれている。手際の良い美春は時間を忘れ、没頭。周吾が食べてくれたとしても、二人で食べ切れないほどの量を作ってしまった。田舎なら近所に、おすそ分けも出来るのだが此処は海外で誰もいない。仕方なくつまみ食いしながら、周吾が出て来るのを待ちパソコンで指輪の意味を色々調べる事にした。色々な意味があるので、何が正しいかはわからないが左にはめると幸福を逃さないと書いてあった。


「十分幸福を貰ってるから外したら、一気に不幸が訪れそう」


ふふっと笑いながら検索していき、ふと不破周吾と書かれているのを見つけた。気になってアクセスしてみると、宝石について色々書かれている。最後の方に突然、宝石界から去った不破周吾と書かれてあり、父親と同じ才能を持ちながらこの世界から消えた。今でも根強く周吾のファンがいて、何かと弟の周真と比べている者がいる。


「周真君、苦労してるってこの事なのかな?ん・・・周真君って二十七歳だったの!?」


簡単なプロフィールが載っていて、てっきり周真の態度などをみて同じ年ぐらいかと思っていた。だから、年上にも関わらず君付けしてしまったが、最初から年齢を聞いていればと失礼な事をしたと後悔してしまう。


「駄目だ・・・さっぱりわからない」


急に声がしてびっくりすると、周吾が部屋から出て来てテーブルの上に項垂れ始める。


「周吾さん、どうしたんですか」


近寄れば動きもしない周吾。何か食べるか聞くと、先ずはお茶が欲しいと頼まれる。


「周吾さん、お茶どうぞ」

「ん・・・美味しいね」

「市販のお茶なんで、美味しいと思いますよ」

「・・・市販でも美味しく淹れられるのは・・・天才だよ・・・」


何やらぶつぶつ言い始める周吾。それから、いつも部屋を綺麗にしてくれてありがとうや、料理は美味しいよとか、何かと褒めるので変だ。


「周吾さん、何か変ですよ大丈夫ですか?」

「いや、大丈夫。心配してくれて・・・優しいな・・・」


普段言わなさそうな言葉を、無理に話してるからか間があり過ぎる。一体どうしたというのだろうか、あまりに普段の周吾からは想像がつかない態度。


「本当に大丈夫ですか?」

「ああ、風呂に入って来る」


そういって何も持たずに、お風呂場に行ってしまった。周吾の部屋に行って、パジャマとかを用意し持って行こうと部屋に入る。中に入れば自分の部屋だけは、綺麗にしているはずなのに沢山の紙が散乱していた。重要書類物かもしれないので、勝手に触るのを止めようとしたがある文字に目を凝らす。


「ナルシスト女の対応・・・まさか」


周吾は一週間ずっと、美春がナルシストではないか調べ対応を探していたようだ。しかし、美春はナルシストには当てはまらない。周吾は自分自身が好きな場合の対応など、探してる間に部屋中紙で散乱してしまうほど散らかしていた。


「私、周吾さんの中でナルシスト女にされてる」


凄く恥ずかしいうえネットからの情報なのか、とにかく褒めとけとアドバイスが書かれた紙を見つけ納得する。

(だから、いきなり褒めたりしてたんだ)


自分の言葉で周吾に迷惑を掛けてしまったと、情けなく思う美春だった。

※宝石の意味など、様々な意味があります。ネットで少し調べた程度と自分なりの考えで至らない文です。ご了承ください。

この小説で書く事は、決して宝石の意味が全て正しいわけでは無いので、その辺を大目にこれから読んで頂けたら幸いです。


◎ちょっとだけ、周吾さんや不破家の事書けました。そして気付いてくれてる人いるのかな?気付いた人は、凄いと思います・・・気付くって何?は気付いた人と私だけの秘密(笑)


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