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アクシデント

何度も、恥ずかしい思いしつつ昼食を食べ、夕方までテレビゲームで人生ゲームを楽しんだ。今夜は、美春が夕食を作ると約束をして、途中抜ける。


「周吾さん達、出来たのでゲームは終わりにして下さい」

「はーい!あっ、和食なんだね。美味しそう」


周真が子供の様にはしゃぎ、ゲームの片付けはほったらかしで美春の作ったご飯をつまみ食いした。


「周真君、駄目だよ。ちゃんと手を洗って、皆で食べよう」

「お前、一つおかず無し」

「何それー?兄さんこそ、ご飯無しでも生きていけるでしょ育ち盛りの僕に全部ちょうだい」


兄弟ってこんな感じなのかな?美春は、自分の兄姉あにあね弟妹おとうといもうとがいないので周吾達の行動がちょっとだけ羨ましかった。美春特製和食を食べ、周吾達と少しだけ距離が縮まった様な気がする美春だった。


――――――――


「美春ちゃんお風呂入ってきなよ」

「周真君、ありがとう準備したら直ぐ入るね」


先に入っておいでと、いつの間にか準備されていたお風呂に一番風呂で入らせてもらう。周吾は、部屋で本でも読んでいるのか、夕食が終わると直ぐに部屋に行ってしまった。

(何だかんだで、周真君がいるから周吾さんの前では緊張しないな)


あの時の夜、田中に言われた事を思い出した。周吾の事を今後、どうすれば良いか別の意味で家出をしたくなりそうだ。でも、相変わらずの部分もあるが、以前に比べスキンシップが無くなったような気がする。てっきり、抱き枕で一緒に寝ると言い出すかと思ったが、鼻血の件もあって別々の部屋だ。

それが、ちょっとだけ寂しく感じてしまう。

(だめだめ、何一緒に寝たいとか一緒にいたいとか・・・いやらしい事考えてるのよ)


気分を変える為、お風呂に浸かり終始周吾の事を考えてしまいのぼせそうになった。慌てて上がり、寝間着に着替え自分の部屋に向かう為、階段を上った。上りかけた時に突然停電になり、真っ暗になってしまい急に暗くなった事によって、目が慣れず何も見えない。壁伝いを頼りに、歩こうとしたら周吾の声が聞こえ、ほっと安心する。しかし誰かにぶつかり、中途半端に上りかけていた美春は、ぶつかった相手と一緒に階段を転げ落ちてしまう。相手が痛くない様に、護ってくれたおかげで美春は何も痛くない。


そして最後に転げ落ち、止まった瞬間何かに当たる感触がした。自分の唇と同じ、柔らかさのある感触に美春は、周吾の声がしたからもしかして?と、思った。非常用電源に切り替わり、直ぐに周りは明るくなり相手が誰か直ぐに分かった。


「美春ちゃん?」

「周真君・・・」


唇に触れていた柔らかい物は、美春の思っていた相手では無かった。お互い、同じように驚き固まってしまい、周吾がキスの離れる瞬間を見ているのも気付かなかった。横を見れば、周吾がいるのを気付いて慌てて周真から離れる。だが、周吾は怒る事も何か言うわけでも無く、そのまま部屋に戻ってしまう。


「周吾さん違います!話を・・・」


何事も無かったかのように、周吾は美春の言葉さえ耳に入っていないかのように居なくなってしまった。周真に、ごめんと言われ美春は涙が止まらなかった。独り部屋に戻るのも気分が落ち込んで、周真がレモネード作ってくれたのを一緒に飲む。


「酸っぱい・・・周真君これ凄くすっぱいよ」

「うーんといっぱい、レモン搾ったからね」


周真が優しく微笑み、美春も少しは落ち着いた。自分の気持ちに気付いての、アクシデントに今までとは違う落ち込み。気付かなければ、周吾に対しこんなに不安になる事もなかった。


「美春ちゃん本当ごめん。僕が停電になった時に、動いてぶつかったから」

「周真君のせいじゃないよ。それに、落ちた時護ってくれたでしょ?ありがとう」

「わざとじゃないんだ・・・だから、お互い気にしないで忘れよう・・・」


周真の言葉に、悪いことしたわけでも無いのに美春は、気まずくなってしまう。


「そうだ、美春ちゃん夜空をまだ見ていないよね?」

「うん、昨日は恥ずかしい事に鼻血出しちゃったからね」

「気分転換にも、夜空みてみよう」


周真の提案に、美春は素直に頷きけれど、周真とは一緒に見れないと断る。これ以上、周吾に誤解されたくないから、独りで夜空をみて周吾にちゃんと謝りたい。周吾にとっては、関係ない話だが謝っても意味ないのかもしれないでも、美春は周吾と一緒にいたい。嫌われて、一緒にいられなくなるのは嫌だ。


***


「兄さん、中に入るよ」


周真が、美春と別れ周吾の部屋に入ろうとしたが美春時の様に、鍵のせいで中に入れない。


「兄さん気持ちはわかるけど、美春ちゃんの事無視しないであげて」


周真の言葉は、むなしく終わる。何を言っても仕方ないと思い、美春が夜空を見に独りで出掛けた事だけを伝え、その場から離れる。途端、バンと激しい何かが投げられて様な音がして、周真はその場に立ち止まる。


「お前、自分が何言ってるのかわかってる?メイドを独りで、夜歩かせるなんて馬鹿か」

「に、兄さん落ち着いてよ。別に問題ないだろ?島ごと、所有地で何もないんだから」

「そうじゃない!区切られてるが此処は、一部野生の生物を育ててる。間違って、入ったら」

「何で言わないのさ!美春ちゃんが危ない」


懐中電灯一つ持って、周吾は美春を探す為外に出る。周真も一緒に行くと言うが、面倒なので家に置いてきた。


――――――――


「やっぱり周真君に来てもらうんだった。昼間も何か居そうで怖いのに、夜はもっと怖い」


美春は、独りで来た事に後悔する。整備されている道とはいえ、辺りは暗く星の明るさ頼りに、海辺までやって来た。辿り着けば、周りに何もないおかげで満点の星が満喫出来、少し怖さが薄れた。


「星綺麗だな、周吾さんと一緒に見たかったな」


想えば想うほど、周吾の事が恋しく感じこんな感情は初めてなので苦しくも感じる。美春は、今まで初恋も恋愛も、お付き合いでさえ何も無かった。

そんな事を考え、星に夢中になってると何かの唸る声が聞こえる。振り向きたいと思いながらも、美春はその声が恐ろしく固まってしまう。


(周吾さん!)

そろそろ周真さんの年齢や不破家の謎?的な物だしていかないと・・・

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