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鼻血

 弟である周真は、兄の周吾と違いとても社交的。明るい性格で、少々人の話を聞いていない所が難だが話し上手だ。本当に兄弟なのかと思ったら、カラーコンタクトを外して髪の毛を周吾と同じ黒色のカツラ被ったら似ていた。幼い周吾に見えて、何だか新鮮に思える。


「でもカツラなんて何処から用意したんですか」

「これは仕事用だよ。兄さんみたいな恰好だと客には評判が良いんだ」


 でも凄く地味だから普段は、金髪のカラーコンタクトなんだ。そう教えてくれる周真、周吾は地味で悪かったなと怒っている。しかし周吾のような格好だと客に評判が良いとは、何の仕事をしているのだろう?美春は興味本位で、周真に聞いた。


「兄さんからの代々の職業聞いていない?」

「うん、周真君がいるのも知らなかったし・・・凄いお金持ちは知ってるけど」

「ふーん・・じゃあ当ててみて」


 新しい玩具でも見つけたかのような顔に、美春はうーんと悩む。周真の姿だけ見ると、直ぐに想像がつくのだが客には周吾のような黒髪に黒目が評判。全く思いつかないので、初めに思った印象を言葉にした。


「ホスト?」

「ぷっ・・・美春ちゃん面白い事言うね」


 周真は何が面白いのかくすくす笑っている。周吾の方を見れば、固まっているのでホストという職業ではない事は確信した。そんなに可笑しな事を言ったのだろうかと思うが、周真の笑うツボが美春とは違うので仕方ない。


「兄さんに勿体ないなぁ、どう美春ちゃん僕のメイドにならない?」

「周真、後で痛い目見るぞ」

「本当兄さんは冗談が通じない。だから家出されるんだよ」


 笑いが止まったかと思えば、周真のメイドにならないか誘われ更には家出していた事を知っている。一体何故、そんな事を知っているのか目を大きくしていたら、周真が不破家の情報網は凄いんだよと教えてくれた。恐るべし不破家、敵に回さない様気をつけよう美春の心の中に一つ刻み付けた。


「ところで食事は何時作るの?」

「それがまだ食料を調達出来ていなく・・・」

「何それ、兄さん美春ちゃん苛めちゃ駄目だろ」


 ほら見てごらんと、大きな冷蔵庫の中に連れて行かれ中身を見せてくれた。中には沢山の食材がたっぷり入っていて、海で釣りなどしなくても十分だった。ちょっとだけ落胆したが、早速ご飯を作る事にする。しかし周真によってキッチンに入るのを遮られ、周真専属の料理長が作ってくれる様で周真が相手をしてほしいと言われた。お言葉に甘え、大人しく周真と会話する事にしたがメイドの役目が果たせてないなと、苦笑してしまう。話の流れでどんな仕事しているのか聞きそびれてしまったが、後で機会があれば教えてもらおうと思った。周真の合図と共に、料理長やメイドが一気に家に入ってあれこれ美春達の世話をしてくれた。食事も数人の料理人がいる為、あっという間に出来上がり店に来たような待遇をさせてもらう。


「どう美春ちゃん僕の専属料理長の味」

「とっても美味しいよ。でも私、こういうマナーとか知らなくて」


 以前、周吾に連れて行かれた時の店の様に全くマナーの仕方が分からない。だから恥ずかしいなと笑う美春に、周真はとんでもない行動に出た。


「此処では家族しかいないんだから気にしないの」

「周真君!それは行儀が・・・」

「勝手にやらせればいい」


 周真は美春の為なのか突然、ナイフやフォークを離し素手で食べ始めた。小さい頃から教育を厳しくされているはずなのに、簡単にやってしまう所が凄い。


「ほら美春ちゃんもこうやって食べてみなよ」

「メイドに強要するな」

「何で?カレーを食べる国は素手で食べたりするよ」

「いや、それは文化といいますか・・・」


 凄く不思議に二人を見る周真に流石、周吾の弟だと思った。兄弟で世間一般とは外れた感覚を持っているんだなと、美春は感心してしまう。一応美春の為に素手で食べ始めた周真に感謝の意味も込め、一緒に素手で食べ始めた。最初は勇気があったが、周真の行儀の悪さの食べ方をみたら段々慣れて気楽に食べれるようになった。本当ならこんな食べ方はマナー違反で、有りえないのだが周真の人柄のせいもあって楽しい食事になった。


「手、汚れている」

「当たり前だよねー素手で食べちゃったら」

「すみません・・・今拭きます」


 すっかり楽しく食事をしていたが、周吾の言葉に気付かされ自分の手が汚い事を思い出す。慌てて近くにあった布で拭こうとしたが、二人の手によって拭けずに終わる。


「「こうすれば綺麗になる」」


 周吾と周真、二人は同時に美春の指先を舐めてしまった。美春は二人の行動に、頭に血がのぼってしまい鼻血が出てしまう。鼻血が出てしまった美春を心配して、二人が更に顔を近付けば美春はもう駄目だと、意識を手放してしまった。


「美春は二人の男によって出血多量、鼻血死してしまいました。ああ、なんて悲劇なんでしょう罪深い僕の顔。兄さんも罪を償って、死んでください」


 ナレーションの様に話す周真、周吾は完全無視で美春を抱きかかえ部屋に移動する。つまらないと拗ねていたが、自分のメイドに美春を看病するよう指示して周吾の後姿をみた。


「美春ちゃんは本当面白いね。兄さんを虜するんだもんこれから楽しくなるな」


 くすくす笑い、鼻血を一生懸命拭いてあげる周吾を思い出し周真は楽しそうにしている。あの面倒くさがり屋の周吾が、他人の鼻血を拭いてあげるなど有りえないのだから。片手に携帯、素早い指の動きで誰かにメールを打ち送信する。いつのまに撮ったのか、周吾が美春に鼻血を拭いてあげる姿を一緒に送付して。

美春さん、二人のイケメンに囲まれて私は羨ましい。でも女として殿方の前で鼻血は恥ずかしい・・・ごめんね美春さん。

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