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「周吾さん此処は何処ですか!?」

「避暑地」


 そんな事を聞いているのではない。そう、周吾に訴えるが素知らぬ顔で進んで行ってしまう。こんな所で迷子になっても困るので、大人しく周吾の後ろに付いて行くが明らかに避暑地では無いのは分かる。田舎から東京に戻ってきて、大きな病院に連れて行かれ足を診てもらった。ただの捻挫と言う事で、一週間から二週間で完治すると医者からの言葉。大袈裟な事に、療養だと言われホテル暮らしをさせられ断ったにも関わらず、頑固として首を縦に振る事はなかった。過保護過ぎるのか、一生ホテル暮らしでもさせるつもりなのかと思う程ホテル内しか歩かせてもらえなかった。やっと外に出れたと思えばいきなり空港に直行、パスポートなど持っているはずがないのに何故か用意されているではないか。説明を求めようと詰め寄るが時間がないと、あしらわれた。


 そして時間が過ぎてやっと着いたかと思えば、次はヘリコプターに乗らされる。初めての経験で数分間は物凄い揺れで落ちるのではないかと不安だったが、案外快適にそんなに揺れる事も無く乗れると気付き安堵する。見えてきた島に普通は無いと思う専用の離着陸の場所があり、今度こそ目的地に着いたようだった。そして美春が周吾に問うたわけである。


 避暑地と言っているが、どうみても涼しい場所では無い先程から汗が出てきて喉が渇く。人が歩く所だけ整備された道があり、一部密林に近い風景がある。

(此処でサバイバル生活しようとしてないよね)


 少しの不安と一緒に周吾の後ろを付いて行き、歩き続けた。漸く辿り着いた場所は、ヘリコプターで上から確認していなかったが少し高い場所に建てられた家があった。


「周吾さんこの家は・・・」

「俺達の家」


『俺達の家』と聞いた途端、美春は顔が蒼くなってしまう。本当に此処でサバイバル?一生暮らしていくものなんだと、勘違いしてしまい泣けてくる。ずっとホテル暮らしさせていたのは、この島に行く為の準備期間では無かったのだろうかと思う。不自由な島生活が嫌なわけじゃない、ただ海外で周りに得体の知れない怖い生き物がいると思うと嫌なのだ。半泣き状態で周吾の事を見ていると、キスしたいのか?馬鹿な勘違いをする周吾に大声で叫んでしまう。


「此処で一生暮らすのですか?」

「メイドはそうしたいの?」


 避暑地と言ったけど?と、お世辞にも避暑地と呼べない場所で周吾が家の中に入って行く。美春は時々、周吾は世間一般の常識など分からないのではなく、少々お馬鹿?と疑ってしまう。

(避暑地ってこんな暑い場所の事言わないんだけど)


 少々呆れながら、遅れて美春も家の中に入って行く。外見は城みたいな洋風の造りだったが、中に入れば和風と洋風を組み合わせた日本人向けの内装だった。しかし中に入ってから、美春は違和感を感じるのは気のせいでは無い。目の前の周吾は、いつの間にか長袖を着ている。そして部屋の中に入った時は、暑かった為涼しく感じたが、時間が少し経つと異常な程寒く感じる。


「周吾さんこの異常な寒さは何ですか」

「避暑地だから」

「避暑地は涼しい場所であって寒い部屋の中ではないです」


 正論を言ってるはずだと、自分は正しくて間違っていないと周吾に言った。しかし、あっちを見ろとでも言う様に周吾は首だけ窓の外に向け、意味が分からないまま窓の外を覗いてみると、とても綺麗なエメラルドグリーンの海が広がっていた。思わず綺麗と口にすれば、涼しげな景色だから避暑地だと言う周吾に我に返った。色々と屁理屈が多い周吾に、美春は諦めるが異常な寒さだけ何とかしてほしいとお願いしてエアコンの温度を調整してもらった。


 ご飯をどうするか尋ねると、海があるだろと言われる。つまり自分で釣って、ご飯の支度をしろと言うわけである。昔は父親に釣りを良く連れて行ってもらったので、出来ない事はないが道具はあるのだろうか?と悩んでいれば、外に用意されているようで周吾に締め出されてしまう。何日間いるかも分からずとりあえず今日、明日分の食材を釣れるか疑問だが整備された道を外さないで、海の方向へ向かった。明るいが、正直何か生息しているのではないかと時々後ろを振り向きながら早足で歩いて行く。


 ◇◇◇

「こんな綺麗な海に食べれそうな魚釣れるの?」


 一時間ほど経っても何も釣れない。避暑地とはいっても、周吾が勝手に言っているだけで暑い。それに凄く眠い、空はまだ明るいが時差のせいだろうか美春はうとうと瞼が閉じかけていた。


「こんな所で寝ちゃ駄目だよ」

「誰?」


 突然上から声が聞こえるので美春は驚く。上を向くとにっこり無邪気に笑う少年?がいて、日本人?なのか髪の毛は金髪で瞳が青色、日本語が達者な外人か日本とのハーフなのかと美春は思った。


「残念純潔の日本人だよ」

「私口に出してました?」


 君面白いねーと、ずっと笑顔の男のは何となくそう思ったと答えてくれた。瞳の色はカラーコンタクトらしく、特注でブルーサファイア色を作ってもらったらしい。聞いてもいない事をベラベラと機関銃の様に話す男に、危ない人なのかもと話に夢中になっている間にそっと逃げる。


「ねぇ、何処行くの?家はそっちじゃないでしょ」

「ちょ、ちょっと離して」

「やーだ。離したら逃げるでしょ」


 だから駄目なんだよ?と何故か語尾が疑問符付けられ、美春は知らない男に腕を掴まれどんどん歩かされていく。


「たっだいまー。って此処が本当の家じゃないけど」

「ねえ、勝手に入っちゃ駄目ですよ」

「いいの、だって兄さんの所有地でも家族だし」


 美春は一瞬固まる。兄さんって誰?家族って?この少年のような男は、いったい何者なのと美春は無い頭でぐるぐる考える。此処は周吾の家、少年のような男は兄さん、家族と言っていた。つまりこの男は、周吾の弟になるのだろうか?兄さーん、兄さーん、兄さーんと今度は叫びだす男に、周吾が怒るのではないか冷や冷やする美春。


「兄さん・・・いないならいっか。イケない事でもしちゃおう」

「えっと、此れは何でしょうか」

「ん?勿論イケない事をするためだよ」


 男は美春の顎を手で少し上にあげる。顎を上に向かされたことにより、嫌でも上目使いになってしまい美春は意識していなくても相手は違うようだ。とってもそそるよ欲情しちゃうかもと、うっとり目になり美春の顔に自分の顔を近づけさせる。退こうにも両手は簡単に相手の片手で塞がれ、暴れようとすれば顎が容赦なく力込められ固定され凄く痛い。寸前の所で、周吾の声が邪魔をして美春の唇は阻止された。


「人のものに触るなって教えられなかったか?」

「嫌だなぁ冗談に決まってるでしょ」


 相手のチッと舌打ちが小さく聞こえると、周吾が現れたと同時にぱっと美春から離れる男。本気っぽい顔だったと思ったが、冗談にしろ笑えない行動に美春は無意識に周吾の所に行き、後ろに隠れる。


「酷いな美春ちゃんったら僕は悲しいよ」

「こいつの事など視界に入れるな」


 何故自分の名前を知っているんだと疑問に思いながら、態度が悪かったと思い謝ろうとしたが周吾に抱き締められる形で、顔を胸に押し付けられる。不謹慎だが周吾の温もりと匂いに安心し、でも直ぐにこれでは変態ではないかと周吾から離れた。そんな行動に、男は兄さん嫌われてるーと笑っていた。散々周吾を馬鹿にして、漸く自己紹介をしてくれる事になる。


「初めまして僕は弟の、周真しゅうま


 宜しくね。そう右手を出す周真、美春も右手を出そうとすれば周吾に手を叩かれて引っ込める事になる。

久々の投稿。弟、周真登場です。

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