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お茶会の後の再開

周吾達はバイクの後を追い、何とか見失わずにいた。だが相手はバイクなので、狭い道を通られると遠回りする事に。今回は翔子の邪魔を回避して、不破家の情報をフル稼働。美春を見失わずにいた。


「何処まで行くつもりなのでしょうか」

「・・・」


そろそろ走って二時間近く経っていた。言葉を悪く言えば、田舎くさい場所へ来ている。流石に周りに田畑しかないと、周吾達が乗っている高級車は目立ってしまう。周吾の携帯から来る情報では、今現在の位置で美春の生まれ育った場所だと分かった。


「周吾様どうやら、あそこの家が目的地のようです」

「直ぐ捕まえろ」

「ちなみに何処までなら宜しいでしょうか?」

「メイドは手荒な真似したらクビ。男は抵抗するなら容赦なくやれ」


にっこり航佑は承知しましたと、車から出て行く。本来は周吾が行きたいが美春の事だ、周吾を見れば逃げるに違いない。暫くは車の中で三人の様子をうかがう。しかし相手の男、田中は翔子からの情報が根強く航佑の事を怪しんでいる。翔子からの情報では、無愛想な男が美春の事を監禁しようとしたり。いやらしい事を強要しようとしていたと、周吾の事をかなり悪く嘘を植え付けていた。更に、もしかしたら居場所が見つかって追いかけて来るかもしれないと、朝メールが来ていた。その情報では高級車に優しそうなスーツを着た男が、美春に話し掛けて来たらやばいと思えそう書かれていた。


「おい国枝はテメーみたいな奴に渡せねー」

「美春様そのような男の言葉など気にせず此方に」

「えっ!?ちょっ・・」

「だから国枝は渡さない」

「往生際が悪いですね警察に誘拐魔と突き出されたいのですか?」


男二人、美春を挟んで片方は田中の腕。もう片方は航佑の腕で、美春は引っ張られて困惑してしまう。更に航佑は優しい話し方が、サラッと笑顔で酷い事を言って一歩も引かないのが逆に怖い。そんな二人を美春は、どうしたらいいのか分からなかった。美春は田中が何か誤解をしていると、見ていて気付いた。航佑も若干勘違いしてるようにも思え、両腕を互いに掴まれて引っ張られては説明も真面まともに出来ない。


「仕方ないですね。貴方には痛い目を見なければ分からないようです」

「あぁ暴力か?暴力で、もの言わすわけ」

「周吾様には許可を頂いていますので」

「周吾?誰だそいつ」

「あの方を気安く呼び捨てしないでいただきたいですね」


美春の腕を掴んでいたのを、お互い離し美春から離れる。間を取って互いに様子を窺って動かない。


「周吾さんって・・・まさか此処に来ているのですか!?」

「後でお話しさせて下さい美春様」

「余所見するんじゃねーよ」


航佑が美春に向かって話しかけてる最中、田中が航佑に思いっきり殴ろうと近づいてきた。しかし余所見していたにも関わらず、航佑は軽くける。田中は一瞬驚いたが、何回も殴りかかる。その度に航佑が余裕で避けるものだから、田中は段々とイライラが増していく。


「避けてばっかいるなよ!腰抜け」

「腰抜けとは心外ですね。私の少しばかりの良心でしたのに」

「何が良心だよ偉そうな事いって本当は喧嘩もした事ないんだろ」


田中は高校生の時、真面目にいたが中学時代それなりに悪さをしていた。そこそこ喧嘩も強かったので、航佑のような優男に見える奴を甘く見ていた。


「随分舐められてしまったようですね」

「口だけの奴には負けないぜ」

「やれやれ弱い犬ほどよく吠えるはこの事ですね」


一瞬の出来事だった。航佑の右足が上がったと思えば、田中は倒れている。美春は何が起きたか全くわからなかった。田中は脇腹を押さえて、痛いはずなのに声を我慢して出さないようにしていた。


「一体何が・・・」

「首や頭は避けて脇腹に軽くしただけです。大袈裟なんですから」

「何が軽くだよ!滅茶苦茶痛いだろ」


何とか起き上がってもう一度、航佑に挑もうとし航佑も構えるが思わぬ声に二人は固まる。


「二人とも止めなさい。女の子の前で恥ずかしくないの」

「げっ!母さん」

「おばさん!」

「三人とも中に入りなさい」


田中の母が現れ、あれ程喧嘩腰だった二人は大人しくなる。美春も従い田中の家に入る事にしたが、航佑がその場から動こうとしない。不思議に思った美春は、航佑に入りましょうと進めるが渋っていた。しかし航佑の携帯の着信が鳴り、何か話したと思えば直ぐに切り急に家の中に入る為動き出す。この時、電話が来た相手は勿論周吾だ。偵察も兼ねて素直に中に入れと、周吾からの命令だった。そんな事も知らず、美春は周吾が直ぐ傍にいる事を気付きもしなかった。


「急に帰って来るって電話来たら・・・三角関係で困ってたの?」

「はあ?違う違う」

「おばさん完全な誤解だよ」

「美春ちゃんも隅に置けないわねぇ」


全く人の話を聞かない田中の母。田中と美春は必死に誤解を解こうとするが、お茶を入れる為一人去っていってしまった。航佑一人は平然としていたが、残り二人は何となく気まずく感じる。田中は落ち着かないのか、部屋の中をうろうろ。美春は座りながら、モジモジ体を無意識に動かす。そんな二人を立ちながら、観察している秘書の航佑。数分間、同じ行動をして田中の母がやって来る。


「早速お茶会しましょ」

「呑気に茶なんか飲んでられるか」

「はいはい煩い息子はほっといて、そっちのイケメン君も座りなさい」


航佑がずっと立ったまま座ろうとしないので、田中母は気さくに話し掛ける。自分だけ立ったままではいけないのだろうと、素直に皆の所に座る。座った途端、イケメンを久々に見たから目の保養になる。そう航佑の事を絶賛して喜ぶ田中母。


「息子を蹴った時なんて格好良かったわ。あれって何ていう技なの?」

「あれは、回し蹴りです」

「回し蹴り?それってこう何ていうの・・・くるくる回って足を」

「奥様が言ってらっしゃるのは後ろ回し蹴りです」


そうなのー!と、航佑の言葉に喜び二人だけの世界になってしまっていた。奥様と言われて浮かれている母にげんなりする田中。美春は、ぽつん寂しく二人の会話だけを静かに聞いている。


「で、どうなの?美春ちゃんの事奪えそうなの?」

「時間の問題かと思います」

「キャー流石イケメン君。美春ちゃんも息子なんてやめて、イケメン君にしなさい」

「もう!誤解を招く言い方しないで下さい」

「そうだそうだ国枝は迷惑してるぞ」

「だいちゃんは黙って」


航佑の言動が誤解を招く事に、美春は頭が痛い。そもそも何故航佑が此処にいるのかさえ、美春は不思議で仕方ないのだ。


「先ず初めに、嘘の情報を鵜呑みにするのはやめてもらいましょう」

「嘘?」

「堀影様を知っていますね。その方は貴方に嘘を教えた張本人です」

「だいちゃん翔子さんと知り合いだったの!?」


田中の方を振り返れば、しまった。そんな顔をする田中に美春が怪しむ。一体何なの?と、美春が状況を理解出来ないでいれば、航佑が説明をしてくれた。家出の事を翔子が楽しんで、美春と偶然出会った田中に嘘を言った事。手紙の事を知って周吾が、探しているのを邪魔していた事。そんな事実を知り、美春は驚く。更に、美春の本当の家無し理由を聞いた田中も驚いた。


「だいちゃんが一週間可笑しいと思ったけど納得」

「だって、お前が家無しって初めて聞いた後に偶然堀影さんから聞いて」

「偶然を装って近付いたのでしょう周吾様は大変心配なされています」

「本当に周吾さんが探してくれてたのでしょうか・・・」


笑顔で勿論という言葉に美春は嬉しい半分、どうして?半分と思った。一瞬美春が沈黙してしまう雰囲気になったが、田中母のお陰で暗くお葬式のような事にはならなかった。


「お茶も冷めた事だし新しく淹れて来るわね」

「おばさん私も手伝うよ」

「美春ちゃんはイケメン君としっかり周吾さんって方の話しなさい」


もう何を聞いたら良いのか分からない。周吾と自分では住む世界が違うと、実感して家を出たはず。なのに、こうして人に迷惑をかけ、周吾も心配していた。美春は勝手に、面倒くさがり屋の周吾は自分を探さないだろう。探すだけ無駄だと、自分の代わりは、いっぱいいるそう思っていた。


「国枝こいつが本当の話してるなら、お前只の家出じゃん」

「家出じゃないもん。ちょっとしか一緒にいなかったし私の家じゃない」

「その周吾・・さん?世話になったんなら、直接会って話せよ」

「今更どんな顔して会えばいいの?」

「そんな顔でいいんじゃねーの。紙切れ一枚で礼言う奴がウジウジするな」


地元に残るにしろ、東京に戻って仕事探すにしろ、周吾の元でメイドとして働くなり一度は会って話す。そう田中から背中を押され、美春は少し勇気が出て来た。


「美春様、私が周吾様の元へ案内します」

「い、今からですか!?」

「はい善は急げです。車ですから直ぐに会えますよ」

「先延ばしにするよりさっさと会っとけば」


二人の勢いに少しばかり勇気が引いてしまうが、そんな事に二人は関係ない。玄関先に半ば無理矢理、連れて行かれ田中家から追い出される。美春にとって兄の航平なのか、弟の航佑なのか分からない相手に一日、待つようにお願いする。しかし、話は無言の笑顔で無視されてしまった。若干強く掴まれた腕を眺めて、車がある場所に連れて来られた。まさか、車の中に周吾が待機してるとも知らないで。


「さあ美春様どうぞ」

「ありがとうございます」


ドアを開けてもらい、中に入ろうと車の中を見た瞬間。美春は思わず逃げ出してしまった。今から周吾に会いに行くものだと思っていた。でも、実は車の中で待っていたと知らず、反射的に体が動いてしまった。突然の事で、心の準備が無かったのだ。


「美春様!?」

「ご、ごめんなさい。本当にごめんなさい」


航佑の言葉を無視して、とにかく走った。そんな美春を見た周吾は、無性に苛立ちを表す。


「はぁ面倒なガキ・・悪い子供にはお仕置き」

やっと・・・やっと周吾さんと美春さん再開しました。家出引っ張り過ぎて正直悩みました(汗)今回も二人の絡みありませんでしたが、次回たっぷり絡めていきます。

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