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手を触れた。何も起きない。何もだ…
水晶は輝かないし、ひび割れないし、ましてや周りがおおっとも言わない。
なぜだ。もしや…これはもしや
「ゆ、勇者様。結果が出ました。魔力値1043、属性は風です」
仮に、仮にだ。成人男性の平均が10だとしたらこれでも十分無双できる。しかしティーナの表情を見る限り…
「ちなみに成人男性の平均は1000です」
のおお!終わった。どうしよう。普通じゃん俺普通じゃん!
試しに近くの石造りの柱を殴ってみた。痛い、普通に痛い。柱なんともない。
「ティーナ!」
「はい!」
「異世界から召喚された勇者は魔力、身体能力が非常に高いものだよな?」
「そう聞いてます」
「実は平均が10なんてことは…」
「ありません」
「風属性が古代に失われた属性ということは…」
「ごくごく普通の属性です」
「この柱が実は伝説の鉱石で作られてる可能性は…」
「皆無です」
俺は音もなくその場に崩れ落ちた。無双、ハーレムの夢がたたれた瞬間である。
夢のような世界で、右手はジンジンと熱を帯びていた。