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2:少年と歌姫

 少年はポケットに手を入れたまま街を歩いている。

 もう夜だ。人々は仕事を終えて家へと帰った。そうなれば自分の仕事もも終わり。ポケットの中の金時計を読み上げる必要もない。

 こうやって街を歩いていても誰も咎めることはない。大声さえあげなければ、誰も彼がその人だとは気付かない。

 少年は特に目立った顔立ちをしているわけでもない。極々普通の少年だった。

 それに人々は忙しい毎日を生きている。他人に構う暇など無い。


「よ、婆さん。また売れ残り?」


 ふらふらと街を歩く少年が足を止めたのは一軒の店の前。店じまいを始めた老婆に少年が笑みかける。振り返る老婆は肩をすくめて大きく溜息。


「まったくあんたはいつもどうしてそうなんだかねぇ。閉店丁度に現れるなんて」

「俺の腹時計がそろそろだって言ってたんだよ」

「はっはっは!まったくあんたは物乞いかい?仕方ないね」

「おいおい、言いがかりは止してくれよ。俺はちゃんとこの店の手伝いはしてやってるじゃないか。安い所から材料集めて来てやってるし、その分値段も他の店より安く出せるだろ?この不況だ。他から客は流れてくるようなったと思うけど?」

「そりゃあ、最近客は増えたけどね。それでもまだまだ黒字とは言えたもんじゃないよ」


 老婆はもう一度深い溜息。


「でも……まぁ、クロシェット。あんたのうちも父さんが死んで大変だとは思うけど、あたしの家だって大変なんだよ。私の老後の資金も稼いでおかなきゃいけないからねぇ」

「婆さんまだまだ生きる気なんだ」

「あったりまえさね。女は六十過ぎてからが華って言うだろ?」

「言わないと思う」

「熟女の次は老婆ブームが来ると私は踏んでるんだよ」

「熟女ブームなんて一体いつ来たんだよ。耄碌したかい婆さん?」

「なんだい、失礼な子だねぇ。ちゃんと覚えてるよ。あんたがうちの店にツケてる代金は」

「げ、……耄碌理由にぼったくられちゃ堪らない」


 互いに悪態を付き合って、少年と老婆はけらけら笑う。

 老婆には娘と孫がいたが、今はもういない。孫は流行病で死に、娘は裏町での商売が原因で病気で死んだ。娘には夫がいないし、老婆の連れももう死んでいる。独り身の彼女の元にこうやって少年が顔を出すのは何もメシをたかりに来ているだけではない。勿論、少年が老人性愛というわけでもない。老婆の定食屋が家の近所でメシが安くて美味い。それに誰かと安心してこうして会話をすることが出来る場所が少年にはそんなに無い。だからここを気に入っていた。


「あんたの親父さんの時計のお陰で、うちの店は助かってるよ」


 不意に老婆がそう言った。その視線の先には鳩時計。

 こういう下町では近所付き合いが大事だと少年が言ったら、何を血迷ったのか近所に自作の時計を贈呈しに言った大馬鹿がいた。少年の父親だ。そういう阿呆なことをしているから稼ぎがないんだと息子に叱られても、微笑ながら謝罪するような穏やかな人だった。

 少年は父に似た穏やかな時計の音に、彼を思い出していた。他の者は金に困って時計を売り払ったが、この老婆の店だけはその時計をまだ残している。


「親父は駄目人間だったけど、職人としてはそこそこだったから……」


 父の作った時計は滅多なことでは壊れない。ポケットの中の金時計と同じ時刻を鳩時計は告げている。狂うことなく今もまだ真実を刻んでいる。

 ここに時計があるという噂を流すと、その時間を知るためにこの付近で働いている者が昼休みに利用しに来るようになった。昼間に覗くと遠目にもそれなりに繁盛しているようには見えた。だが、元々の値段が安い分、薄利多売ということで……多くを売らなければそうそう儲かるものでもないのだろう。


「まぁ、時計のデザインは可愛いんだけどね……鳩の顔が妙にリアルって言うか首まで動くじゃないか。それが時計本体のデザインと合って無くてびっくり箱みたいだって評判だけどね。うっかり子連れでやって来たお客なんか、驚いて泣いてたよ」

「子供が?」

「いや、父親が」

「…………へ、へぇ」


 制作初期には本物の鳩を入れる籠を作ってその籠に装飾と仕掛けを付けてリアルハト時計にしようとかあの親父が企んでいたことを老婆に告げる気にはならなかった。

 あの妙なハトへのこだわりは、それを息子である少年に止められたことでそれを中止したためなのだろう。

 金持ちばかりが時計を所持している現状を憂い、時計を広く普及させたいという願いを持っていた父だが、一般市民の何割がハトを飼っているというのか。時間になると籠が開く仕掛けを作っても、第一どうやってその一羽一羽を躾けるのか。そのまま逃げ出して戻ってこなかったら苦情が止まらなくなる。

 少し考えれば解ることなのに、父はそういうことは解らない。妙な発想だけで暴走する彼を止めるのが少年の役割だった。


(……そう言えば家の柱をそのまま柱時計に改造したりしたことがあったな)


 それも一本じゃ飽きたらず二本目に取りかかろうとして、ほっといたらそのまま家中の柱を改造して終いそうな勢いだった。家の耐震補強を下げるつもりかと叱ると今気付きましたという顔で驚愕の後、褒められたが父の考え無し加減に泣きたくなった。

 つまらないことを思い出してしまったと、少年は老婆に礼もそこそこに家へと帰る。そこに音はない。

 少年の家には誰もいない。母はいないし、父は死んだ。こうやってじっとしていれば、一日中誰とも会話をせずに時を送ることが出来る。事件直後は帰れなかった場所に、こうしてまた帰ることが出来るのは嬉しいが、以前とすっかり変わってしまった家の姿に虚しさを覚えることもある。

 周りに時計工の息子は死んだ者と思わせて、浮浪者でも住み着いたと思わせるため。

 定食屋の老婆だけは自分の顔を覚えていたが、後の近隣住民はとうに自分を忘れていた。それだけ影が薄いのだ。もしかしたら初めから、時計工に息子がいたことを知らない人間もいるのかもしれない。

 ここは時を刻むことを止めた家。そこら中に転がったままの時計とそれ以前の部品。

 もしも少年が父の後を継いでいたなら、これらの時計は時を取り戻すことが出来たかもしれない。しかし全ては仮定論だ。

 少年は父の後を継ごうとしなかった。だから時計工の知識を持たない。止まった時を動かすことも、新たに時を刻ませることも出来ない。

 そんな寂しさを紛らわすよう、少年は金時計のゼンマイを回す。

 彼は日に何度かゼンマイを回す。そうしなければ時計は止まってしまうもの。しかしこの時計が止まらないのは、別にこの時計はゼンマイ時計ではないからだ。それでもゼンマイを回すと内に仕込まれたオルゴールが鳴る。だからゼンマイを回すのだ。下らない仕掛けではあるが、音のない家に明るいメロディーを響かせるそれは、少年にとっての過去の全ての結晶だった。

 少年は知っている。父親がどんなに時間を掛けてこれを作ったか。その日、その日にどんな顔をしていたか。それを思い出させるのがこの時計。

 一日中街を駆けて足は疲れた。けれど頭は冴えている。どうにも眠れそうにない。


(ちょっと買い出しにでも行ってくるか)


 夜の街は昼間と姿を変える。

 昼は寂れた時計塔広場も、賑わいを取り戻し、一夜の夢を思わせる幻想的な風景に変わる。

 華やかな衣装の女達。花屋に扮した者、歌姫や踊り子に扮した者。みな派手な真っ赤なドレスを着ている。あれはすべてが夜の蝶。年若い少女から年齢不詳の美女まで。

 少年に女を買う気はないが、この近辺でやっている闇市には用があった。

 父が家に残した形見を流せばそこそこの金にはなる。金にならない仕事ばかりしているせいで、質に流さなければ生活もままならないというわけだ。


「よ、おっさん」


 少年は闇市の一角……腰を下ろし煙草を吹かしている中年に片手を上げる。彼の前には多種多様の商品。しかし彼は何を売るでもなくそうしているが、それは彼が買い専門の店だからだ。


「何だ?常連さんには見えないが」

「おいおい、常連の顔を忘れるなよ」


 家から持ってきた商品を前に出すと、ようやく店の親父の顔がほころぶ。


「ああ、お前か時計坊主!」

「俺の顔じゃなくて商品を見て思い出す辺り相当だな」


 自分の顔が印象に薄いものだと少年は知っている。昼間の仕事が上手くいっているのもおそらくそのせい。ちょっと髪型や服装を変えればさっき会った者でも彼を忘れてしまう。足の速さと相まって、それは彼の家業を支える天性の才能でもあった。


「にしてもいつもどこからこんなもんかっぱらってくるんだい?時計なんて高価なもの」

「時計工がゴミ捨て場に捨ててる失敗作だよ」

「ほう、どれ……おっさんにその場所を教えてくれんかな?」

「それは俺の企業秘密だから言えないな」

「何が企業だ、盗人が」


 店の親父が舌打ちしながら、金を放り投げてくる。その金は通常のレートより遙かに低い。


(人の足下見やがって……)


 表で売ればもっと高値で売れる商品。修理が必要ではあるが、父親の作品はギルドの職人にだって負けない。

 ただ、表で売れば足が着く。見る者が見れば、その時計を作った者が誰か解るし、それを売りに来たという自分を怪しむ者が出てくる可能性もある。そうなると昼間の仕事の危険性も増す。

 けれど、裏で流せば真っ当な職人の手に渡ることはない。だから大した腕ではないそいつらならばそれを作ったのが誰かなど気付かない。改造されて遠くに別の国に運ばれていく。

 形見が姿を変えて遠くへ行くのは寂しいことだが、あの家でずっと止まったままよりは、誰かに使って貰った方が時計にとっても幸せなのだと少年は割り切っている。

 にこやかに毎度ありと微笑む親父に肩をすくめて、少年は路地裏を後にした。

 表の店に並べないような粗悪品。それでも材料として使うには問題ない。そういったものが表より安い値段で並ぶのがこの闇市。老婆へ届ける食材も、ここで購うことが多い。

 今日は食材調達を頼まれていなかったが、明日食べるパンでも買っていくかと少年は市を廻った。

 その時だ。夜風に乗って聞こえてくる歌声があった。これが初めてではない。この市に来ると、彼女の声が聞こえてくる。

 彼女の歌を最初に聞いたのは、まだ父親が生きていた頃だ。その日の少年は、父親に頼まれて買い出しに来ていた。店を転々としている内に日が暮れて……その帰り道。見つけた闇市を覗き込んでいた少年の耳に聞こえたのがこの声だ。

 綺麗な声。思わず聞き惚れる。ふらふらと、その声が聞こえる方向へ向かう足を止められなくなる。声の先……そこには一人の少女がいた。

 喪服のような真っ黒なドレス。赤いドレスの女達のテリトリーからすれば場違い過ぎるその恰好。夜の闇に融け込むような喪服のドレスで少女は歌っていた。

 その歌声は、はっきりと彼女の輪郭を描き出す。強い存在感を持っていた。

 少女の前には籠が一つ。中にある金は僅かな金だ。足を止め、立ち止まる人間は多くても、こんなに歌が上手くとも、稼げる仕事ではないようだ。

 立ち止まった群衆が、彼女に小声で何かを告げるが、彼女はそれには静かに首を振る。その様子に舌打ちしながらその者達は帰って行く。それを見た他の者達もやがて彼女の傍から離れ、赤いドレスの女を捜す。

 一度中断された歌を、彼女は再び紡ぎ出す。なんとなく離れがたくて、少年は彼女の歌を最後まで聞いていた。少女がぺこりと礼をしたとき、周りにはもう誰もいないようで、顔を上げた少女と少年は目が合った。普段他人に気付かれないような生活を送っている少年にとって、他人と目が合うというのは稀であり……慣れないことで、彼は咄嗟に帽子を深く被って視線を防ぐ。その時、手にしていた財布が逆さになって、籠の中に所持金全てが流れ込む。


「え……?嘘、こんなに……いいんですか?」

「え、ええと……」


 何かを言い返そうとした。けれどにこやかに微笑む少女に赤面し、口はもごもごと動くだけで何も発することが出来ない。確かに少女の歌は素晴らしかった。今更手が滑ったとも言い難く、少年はそこをそのまま立ち去ったのだ。

 そんなことを思い出しながら、少年は……どうせ覚えていないだろう、そう思い少女のいる広場へ足を運ぶ。もう一度、近くで彼女の歌を聞いてみたかった。もう一度、彼女の顔を見てみたかった。


「あ!また聞きに来てくれたの?ありがとう!!」

「え……?」


 広場へやって来た少年を見つけるやいなや、少女は歌を止め、少年の方へと駆け寄ってくる。自分の顔を覚えられていることに驚いた。驚きすぎて思わず逃げ出しそうになったほど。 それでも少女が満面の笑みを浮かべているから、足が土に根を張ったように動かなくなる。


「そりゃ、忘れないよ。あんなお客さん初めてだもの」


 歌は目には見えない商品。仮に歌の対価が金ならば、彼女の歌を最も評価したのは少年だ。

 彼女は自分を認めてくれた少年に感謝をしているようだった。


「本当にあの時は助かったけど……でも、貰いすぎたから。今日はお礼にどんな歌でも唯で歌わせてもらいます」


 ぺこりと少女がお辞儀をする。顔を上げた彼女の瞳が見開いていることに少年は気付き、振り返る。そこには柄の悪そうな男が二人。


「ただねぇ……随分と景気がいいみたいじゃねぇか嬢ちゃん」

「そんなら貯まりに貯まった利子付けて、今月分返済して貰おうか?」

「そ、そんな!!期日にはまだ時間があるじゃないですか!!」

「うるせーな!返せって言ってんだよ!こっちは商売女にぼったくられて機嫌が悪いんだ!」

「そうだそうだ!こっちはギャンブルで負けて今日飲む酒代くらい返して貰いてぇんだよ!!第一なぁ、期日は今日の12時だっただろ?」

「ええ。いつも通りお昼休みに届けに行く予定です」

「だがなぁ、今日は何日だ?お嬢ちゃん?」

「六日です」

「いいや。もう12時を回ってる。だから七日だ」

「そうだそうだ!それに時計は12時を過ぎている!」

「言いがかりです!午後の12時のことでしょう!?」

「俺たち浅学の人間にはよくわかんねーなぁ?なぁ兄弟?」

「そうだな、兄貴。12時は12時だ。広場の時計を見てみろよ。12時を回ってやがる」

「大体歌なんかたかが知れてる。そんな儲からねぇ商売するよりもっと稼げる仕事を回してやるぜ。そうすりゃお前のおっかさんも喜ぶってね」

「ふざけないでっ!」


 自分勝手な言い分だった。端で見ていても彼らの身勝手さがよく解る。

 高利貸し達に迫られる少女を、なんとか助けたいと思っても……少年は極々普通の人間だ。喧嘩に強いわけでもないし、街の支配者にコネがあるわけでもない。むしろそういう意味なら普通と言うより追われる方の、危ない側の人間だ。

 時計を売った直後ならまだしも、買い物後では持ち合わせもそんなにない。だから少年は逃げ出すしかない。それしか自分には取り柄がないと知っていた。彼は走って逃げて、物陰に身を潜め……そして声を張り上げた!


「0時!0時!午前0時!!昼休みまで12時間!」


 その大声に、広場の人間達がざわめき立つ。


「近いぞ。この近くにいやがる!!」

「何だ何だ!こんな夜中に時間泥棒が出るとは!」


 それを聞いた高利貸し達は、その大金に目が眩む。渋る少女からの取り立てを行うより、時間泥棒を捕らえた方がずっといいと思ったのだ。


「やったぜ兄貴!捕まえればすげー金がわんさか貰えるらしいじゃねぇか!追おうぜ!」

「おう!」


 酒が回っていた高利貸し達は、自分たちが泥棒如きに負けるはずがないと考え、大金を得た後の使い方まで妄想していたに違いない。

 しかしそれは間違いだ。時間泥棒には勝ち負けなど無い。そもそも戦わないから。言うなれば、逃げるが勝ち。逃げた時点で時間泥棒の勝利は確定している。

 声を聞いた後に追いかけてももう遅い。

 少年は適当に追っ手を誘導しながら高利貸しを少女から遠ざけ、それを撒いて家へと帰る。


「……金か」


 少年は朝晩走ってくたくたになった身体をベッドに横たえて、ポケットから金色の懐中時計を取り出した。


「金が在れば……か」


 幸せの尺度を金で計るのはおかしいと少年は考える。

 実際、彼の父親はそんなに稼ぎがない駄目男で、母親にも逃げられた甲斐性無しだ。それでも父との生活が不幸だったかと言えばそうではないと言い切れる。

 いつもおかしな発明ばかりで実用性の程がわからず、常人には理解しがたい才能を発揮する父は、ギルドでは面接で落とされ、ブラックリストに載せられるほどだ。数世紀先を生きているようなぶっ飛んだ人で、突拍子もないことを言い出す人でもあった。

 そんな彼のテンポに付き合うのは疲れるが、そんな日常が楽しかったと言えば楽しかった。少年は、彼がいなくなった家で生活する内にそれを痛感していった。

 金=幸福ではない。けれど、金がないことで逃してしまう幸もあることは……事実でもある。

 金さえあれば取り戻せるものもある。金を手に入れることで失ってしまうものもある。

 父は職人としての誇りと生活を選び、家庭を崩壊させた。父親としては立派とは言えない人間だったが、職人としての父は何時だって情熱を持っていた。

 周りに合わせて、顧客に合わせて、標準的な商品を生み出すこと。それが金に繋がる。

 そこで独創性を出して暴走するからいつも客に逃げられる。

 時計をもっと身近なものとして普及させたいと、材料費より安い値段で販売なんかするから赤字になる。腕はあっても儲ける気がない。それが父の性格の問題だった。

 やりたいことをやれば彼の職人魂は満たされるかもしれないが、その他は駄目になる。職人魂を抑え、商品を生み出すだけの機械のように働けば、金にはなるし家庭だって守れたはずだ。

 金持ちにだけ時計を売って、ご機嫌窺っていれば、母親を連れ戻すことくらい出来ただろう。いや、父は……最後の最後で職人魂を折り、そのために仕事をしていた。

 気に入らない仕事でも、誇りと情熱をやっぱり忘れずに……彼が創り上げた最後の時計は、それは素晴らしいものだった。

 そうだ。本当なら、彼は父親に戻った。壊れた家庭をもう一度、やり直すことが出来たはずだった。

 けれど、その時計はあまりに出来が良すぎた。それが大きな問題だった。

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