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33:星と砂時計

 「嘘……」


 鳩時計は驚いた。盗み見た女の記憶。その中にある星時計……定められた星へと向ける針は、かつて自分を解放したあの鍵だ。


 「クロシェットが、持ってた……鍵」


 あの鍵はどうしただろう。そうだあれは……クロシェットが私にくれた。私の自由を約束するように。鍵を鳩時計は取り出して、恐る恐る星時計に合わせた。それだけで、壊れた時計が姿を変える。記憶の中と同じ姿に。


 「私、は……」


 私はどうして、あんなに彼が好きだったのか。彼が私を助けてくれたから? 嗚呼、それだけじゃなかったんだ。


 「クロシェット……」


 早く貴方の所へ行かなきゃ。


 「時計なら、あげるわ。私、そんなのもう要らない。私は、貴女とは違う」


 星時計。使い方なら私も解る。時計となった彼女のために、回してあげたスターダイヤル。


 「こうやって使うのよ。……知ってるわよね、でも時計じゃそんなことも……出来ないのね」


 空を仰いだ鳩時計は、我が目を疑う。夕暮れに染まった街……あの星はまだ見えない。見えない、はずだった。


 「そんなっ!?……夕暮れが」


 雨雲の向こう。どんんどん空が暗くなっていく。ここは自分達の煉獄。彼と私が救われるまであの夕暮れは決して沈むことはない。その煉獄が終わるのは、彼か自分に何かがあった……。自分自身がこうして無事なのだから、危機に見舞われたのは時間泥棒以外にあり得ない。


 「足止め、ご苦労ステラ」

(しまった! )


 鳩時計はまだ、星時計に手を捕まれたまま。傍で聞こえた男の声に翼が動くも、……飛び立つのは間に合わない。荷物を一人、持っていた。ならばと頭のゼンマイで、過去の記憶を見せつけるのも逆効果。男はもう、立ち止まらない。今度は鳩時計も見ている、男の過去を。


(……! )


 刃のように鋭い機械の腕に貫かれる寸前、鳩時計は取り戻す。自分が何故、こんな身体になったのか。

 そう、“私”は知ってる、これと同じ出来事を。でも、知らない。私を殺した男の手は、生きていた。この男は死んでいる。冷たい機械の手が、私の動力部を引きずり出した。


 「だが、お前ももう用済みだ」

 「だ、だめ……っ! 」


 人形のよう、殺されるのを待つ星時計。身体は人間のままでも、心は時計。持ち主となった男の言葉に従うだけの、悲しい時計。それは鳩時計が、“ステラ”が何より嫌った自分の未来すがただ。


(クロ……シェット)


 鳩時計は最後の力を振り絞り、男と星時計の間に飛び込んで……文字盤女に口付ける。

 心臓を抜き取られても私はまだ考えられる、心がある。私の心は動力部にあったのではない。私の身体、パーツ一つ一つが生きていた。心も魂も、完全には奪えない。取りこぼされる、欠片はある。


 「どう……して」


 私の顔が文字盤になる。代わりに彼女が素顔を取り戻す。


 「私、クロシェットが大好き……だけど、“彼”は……あなたのクロシェットでしょ“ステラ”っ!! 私なんかに取られて良いの!? こんな奴に、あんな女に……クロシェットを、あげないで! 私の方が、私達はずっと前から大好きだったんだから!! 」


 一欠片でも、私は彼女になれただろうか。なれたはず。だって私はあの子だったんだ。逃がした少女を守るため、鳩時計は翼を広げる。機械の翼を大きく広げ、羽根を飛ばして辺りに突き立て道を塞いで。


 「……素材は既に手に入った。お前達をバラす意味など、復讐以外もはやない」


 犬死にだなと、笑う声を鳩時計は聞いていた。


 「それは、どう……かしら“お父様”」


 私は時計でも機械でもない、人間だ。誰かの命令に従い、踊らされる道具ではない。心がちゃんと、あるのだから!

 動力部を奪われても、まだ止まらない鳩時計を前に、はじめて男の顔に狂気以外の表情が浮かぶ。


 「な、何を……っ! 」

 「貴方が時計でも人間でも……っ、本当の永遠なんて無いの。あっちゃ駄目なの」


 大丈夫、まだ飛べる。暴れる男を掴み、鳩時計は雨空へと舞い上がる。高く高く……この向こうにもし天上というものがあるなら、そこまで届くくらいに。


 「狂った時計め! 本物の、星時計……星そのものにでもなるつもりか!? 」

 「嫌よ、貴方と一緒なんて絶対に嫌。落ちなさい、煉獄なんて生温い。貴方が行くのは……」


 鳩時計は空の真上で、男から手を離す。男の悲鳴を聞きながら、その頃には自分自身の限界を感じていた。それでもこのまま落ちたなら、あの男と同じ場所に行く。それならと、鳩時計は力を振り絞り羽ばたいた。


 *


「さぁ、我が主」


 もう遠い昔の話。美しい悪魔は私の前に現れて……覚悟を決めろと、そう言った。


(覚悟なんて)


 もう既に、私はこの手で人を殺めた。皮肉な物ね。


「そんなもの、とっくの昔に決まっているわ」


 手に入れたのは、保証書……紙切れ一枚程度の奇跡。それは永遠を約束してはくれなかったけれど、限りなくそれに近しい時間を私にくれた。夢と現、裏表。彼女の力を最大限に引き出すための時計……私は起きる時間も休める時間も全てを使い考えた。

 そうして私が作り出した時計には、金時計と同じ黄金の輝きがある。目映い星の輝きを、閉じ込めたようなその時計。


 *


 「正直に、教えて欲しいの」


 この状況、混乱する時間が惜しい。それを理解するまでには、歌姫も追い詰められていた。金貸し女王や悪魔が味方とは言え、相手はそれ以上の存在である。状況の部外者である歌姫ですら、それは重々承知している。

 私の味方だと言った悪魔は、私ではない私の味方だった。悪魔は嘘は吐かないが、人を欺く。アムニシアで既に痛い目を見た。だからこそ、歌姫は思う。


 「レーヌ、私は……」


「信用して良いの? 」そう言いかけて止めたのは、それが愚かな問いだと気付いたからだ。それこそが、無駄な時間。理屈は解らないが、味方だという悪魔がこうして時を凍らせた。その時間で、私は彼を疑うことを選ぶのは……本当に無駄なこと。私を陥れるためならこんな回りくどい方法は要らない。見捨てれば良いだけ。だけどこうして肩寄せ合って考えたところで、私達では彼女に勝てない。その上でどうすれば良い? 考えなきゃいけないのは、そういうこと。


(私は……時間泥棒)


 何をすれば良い。考える。私に出来ること。考えて考えて……歌姫は顔を上げる。


「レーヌ。貴方の腕時計に、私の魂を組み込ませることは、可能? 」

「いいのかいソネット? 確かにそれは可能だが、そこに残るのが……君であるとは限らない」

「同じよ、同じ事だわレーヌ」


 既に一度死んでしまった金貸しは、自身の消滅を恐れない。念を押してくるのは、意識を保てる人格……そこに歌姫が入れる保証が無いからだ。例え、金貸しがそれを望んでいたとしても、結果がそれを裏切る可能性を彼女は危惧する。


「あの女が欲しいのは私の身体。私の魂に興味は無い。だから、やれるはずよレーヌ。貴女なら」

「ソネット、君の狙いは解ったよ。だけどそれは……大きな賭けだ」

「私は時間泥棒。時間泥棒は戦うためには逃げるけど、逃げるためには逃げないわ。……私、貴女が居なくなってから。貴女になりたいと思った。だけど……私は貴女になれなかった、私のままなの。その結果があの人だなんて、私は認めない。私、あの人にだけは絶対にならない」


 歌姫の言葉に、金貸しは勝てない。教会に挑んだ彼女を見送った時同様に。仕方ないと帽子を手に取り顔を隠して、彼女はその顔を文字盤へと変える。


「私が時計として、君の時間を魂ごと吸い取る。私という腕時計の中で組み合わされた魂が、どんなものになるかは私も解らない。場合によっては、これが今生の別れだ」

「貴女、言ったわよね。私達は可能性だって」

「ああ、言ったね」

「それなら、何も変わらない。それが私でも、貴女でも。だって貴女は私なんだもの」


 時間を奪わせるために、金貸しへと近付く歌姫は……最後に協力者を振り返る。


「助けてくれて、ありがとう。レーヌ、それから……エングリマ? 」

「悪魔にお礼を言うんですか? 」

「言うわよ、私は」


 驚く少年に、歌姫は顔を綻ばせる。


「だってそれが言えなくて、未だに後悔してるんだから。そんなの、もう嫌じゃない? 」


 *


「……愚かな」


 時が溶け出し動き出す。悪魔が消耗しながら止めた時間で小娘二人が何をしたか。結果を前に大富豪は笑い出す。


「はたして、そうかな」


 現れたのは腕時計こと金貸し女王。抱えるのはぐったりと力が抜けた文字盤顔の歌姫。娘を時計にすれば身体を守れるとでも思ったのか。


「誰がそんな者を使うか。アムニシア! 」

「はい、我が主」


 悪魔が大富豪に差し出すは、黄金の砂が詰まった砂時計。それを目にして青ざめる、もう一人の悪魔。


「っ……! 」

「エングリマ? 」

「あら? 第四公にはこれが何か解るのですね」


 女悪魔が笑いながら砂時計を逆さにすれば、大富豪を包むは光。光の中から現れた大富豪に、金貸し女王も青ざめる。


「他人の魂を砕いて……自らを巻き戻すか!? 」

「誰でも良くはない。若く生命力に溢れた女だ。丁度良い復讐相手も居たからな、これまで不自由はなかったが……“時の砂時計”。私が作った最高の機関がこれだ」


 未来ある娘の魂を砕いて作った時の砂。それを逆さにするだけで、私は若さを取り戻す。永遠を生きられなくても、限りなくそれに近付くことは出来る。

 だが、これ以上は若返れない。私がソネットから大富豪になった時の姿以上に、私が巻戻ることは出来ない。私が私へ戻るためには、やはりあの娘は必要なのだ。


 「嬉しかろう、“ソネット”。いいや金貸し。今若返ったのは……この街のあの娘を使ってだ」

 「……砕くために、鳩時計を作ったのか? もう一人の、“お父様”? 」


 旅人でありながら、今まで気付かなかったとは愚かな。こんな者が私の欠片だとは全く、笑えない。若返った自身よりもずっと、すらりと伸びた金貸しの背に大富豪は苛立った。この女はどれだけの時を犠牲にし、過去を葬ってきたのだろうかと。

 その点、あの男は嘆くだけ。無害なものだ。その魂を砕いて濁りを加えれば、純度は下がり思惑道理に動いてくれる。


 「神など囚人よ。私の手が加わらないと何故思う? 奴にほんの僅かの自由を与えたのは誰だと思う? 」

 「悪魔、か。貴女の傍らの……」


 金貸しの指摘を受け、アムニシアは悠然と笑む。否定の言葉などはない。


 「私から兄さんを奪った奴の大事な物を、砕いて消して行くのは楽しいわ。見なさい、この光を。薄れていく、あいつの命が。もう間もなく跡形もなく消えてしまうわ」


 肉体と共に、口調が昔のように戻っていく。私こそが“ソネット”だ。欠片なんかに私の思いを否定はさせない。時は人を裏切る。だから時間なんて、要らない。取り戻すために必要なものは、まもなく揃う。あの人が帰ってきた時に、あの時と同じ姿の私が居れば、それで良い。やり直せるんだ。

 帽子を深く被ったあの人。貴方のためだけに歌ったあの夜。その、続きから……。それ以上時が進んで、二人が引き裂かれるならば……また時計を戻せば良い。街を移動しても良い。私と貴方以外、全ては時計。私が作り上げた機械に過ぎない……そんな絡繰り仕掛けの停滞! 二人きりの煉獄こそが、最高の幸せ。天国にも地獄にも居場所のない貴方が、永遠に幸せで居られる場所。誰も要らない、あの人以外!


 「私は捨てた。だから兄さんも捨てるべきなの。愛し合うって、そういうことだわ」

 「はぁ……流石は私のソネット。人間も長きを生きれば私と同じ領域まで辿り着けるのですね」

 「そ、それは違うと思います! 確かに貴女の求める愛は、ある側面としてはこの上なく美しいのかも知れないけれど!! 誰かの犠牲を前提とした貴女は、どんなに姿を巻き戻しても、その魂はもう美しくない!! 僕は貴女を祝福したくありません! 」


 同じ悪魔でも、二人の主張と美学は相容れない。同じ“ソネット”が、こうして対立するように。


 「……一欠片でも、人の心が残るなら。かつてそこに在ったものは、決して消えない。私のように」

 「金貸しが。口だけの愛など騒がしくて耳障りだ。お前は兄さんを裏切り、その小娘に愛など語ったが結果はどうだ? お前は自分のために、愛する者を犠牲にし続けている亡霊だ!! 」

 「それは、……どうかしら」


 金貸しの、口調が変わる。思わず奴の顔を凝視して、表情が変わったことを大富豪は知った。


 「やれるものならやってみなさい、ピエスドール」


 金貸しが投げるステッキ。そんな物で時の砂時計は壊せない。呆れる大富豪の耳に、悪魔の焦る声が届いた。


 「いけませんソネット! 」


 奴は“時計”だ。時計に時計を殺す力はない。杖で殴られたところで、砂時計には亀裂一つ入らない。


 「何……!? 」


 焦る言葉を投げながら、悪魔はそれを防がない。擦り抜けるだろうと思われたステッキは、砂時計にぶつかりひびを走らせる。


 「杖自体に、魔力だと!? 」


 しかし魔力ならば砂時計の方が蓄えた力は桁違い。一人二人食らった程度の腕時計が、傷を作るだなんて。我が目を疑う大富豪に、悪魔が静かに囁いた。


 「過去は未来に淘汰される、原始的過去の時計は……未来の時計に決して勝てません」

 「エングリマっ! 」


 金貸しが悪魔の名を呼ぶと、奴の悪魔が再び時を凍らせる。少年悪魔が手にしているのは……


(金貸しの、トランク……!? )


 大事な大事な砂時計。大口を開けたトランクが、大富豪の眼前で時計を一気に飲み込んだ。大富豪がやめろやめろと叫ぶ言葉も凍り、音にはならない。トランクが口を開けた時には、黄金の砂は煌めきザラザラと吐き出され……空へと舞って、消えていく。こうなってはもう、かき集めても戻せない。


 「……第四公。私の力はご存じですわね? 」


 アムニシアの言葉は冷静だった。悪魔の言葉に、大富豪も我を取り戻す。

 そうだ、私の悪魔は……幾らでもやり直すチャンスをくれる。私が兄さんへの想いを捨てない限り、彼女は永遠に私の味方であり続ける。悪魔の力の差は歴然。子供の悪魔では、彼女には太刀打ちできない。


 「勿論知ってます。でも、どこから“なかったこと”にするつもりですかアムニシアさん」


 私には強い味方がいる。そうは思っても大富豪の胸はざわつく。少年悪魔の様子がおかしい。頼りなく落ち着きのない子供らしさが消えている。契約者の変化に呼応するように……


 「こんな継ぎ接ぎだらけの世界で大がかりな技を使ったら……貴女の主の夢は瞬く間に砕け散る」

 「それすらなかったことにしますわ」

 「それを何度続けても、貴女はここへ辿り着く。同じ結果なら、それは時間の無駄です。僕のマスターは、貴女からその時間を奪います」

 「そういうことよ、大富豪! 」


 凍った時間が動き出すのは、生意気な女の台詞と同じ頃。大富豪の視線の先には、紳士服の女が一人。顔が変わっていないというのに、表情に色気が全くない。代わりに浮かぶのは、悪戯好きの子供のような……不敵な笑みだ。悪い意味で中性的には見えるだろう。今の金貸しは、生意気な少年の顔をしている。


 「貴様っ……小娘?! 」

 「結構似てたでしょ? ……レーヌとはもう話せないけど、彼女の心を感じるの。彼女が今までどんな風に苦しんで、生きてきたかを私は知ってる」


 歌姫の心境に現れた変化は何か。自らの可能性だった女達の人生を知り、迷いの消えた顔になった。大富豪は歌姫の表情に、理由のない苛立ちを感じる。己より遙かに短い時しか生きていない小娘が、何やら悟った風にそこにいるのが許せない。

 挑戦的な言葉を呟く娘の静かな瞳は、無謀でも無策でもない。確かな先を見据えるようで……そう、恐ろしかったのだ。


 「エングリマ、アムニシア。貴方達悪魔なのよね。それなら魂を抜き取ることくらい出来るわよね。空っぽになった私の身体に、入れてしまえばいいのよ。後腐れ無くそれで行きましょ。それでそっちの私が残ったんなら私の負け。潔く消えてあげるわ。だけど、あんたが消えたなら……諦めて貰うわよ」

 「それは勿論出来ますけど……でも、レー……ソネット、さん。何度も幸運は続きません。続くなら……それは奇跡」

 「か、確かな勝敗でしょう?」


 小娘め。選択肢を潰すため、砂時計を壊したか。私がその姿に返るには、お前の身体が必要になるようし向けたな。


 「……何故、食えると思った」

 「たぶん、この場所でいう魔力ってそう言うことなのよね。貴方たち悪魔以外は。レーヌの時計もトランクも、先代金貸しの命を糧とした。だからその砂が本当に誰かの命で出来ているなら……食べられないはずがないわ」

 「金貸しの、入れ知恵か……小娘」

 「時計は人の英知の結晶だけど、時計は時間を語るだけ。考えるのは生きた人間の役目よ」


 自らが考えたと、小娘は言う。信じられない。金貸しを取り込む前に、歌姫自らが考え出した? その頃の、その年の私は何をしていた? ……泣いてばかりいたはずだ。奴と私の何が違う。瞬時に答えは出る。答えは“私”だと、大富豪は気が付いた。

 自身の存在が、歌姫に試練を与えた。容易く死ぬはずだった小娘が、何度も生き延びここへ来たのは……もはや自らが仕組んだ運命である。言い逃れは出来ない。大富豪自身が、歌姫を成長させ、ここまで導いた。


 「……貴様の賭け、乗ってやろう小娘。だが」

 「解ってるわよ。信用できない、でしょ? こっちから先にやって貰うわ。それでいいわよ。ただしお互いの悪魔に一字一句約束させて貰うわよ、証人として」


 悪魔は約束事に嘘は吐けない。これは……あちらの悪魔が、いつか何処かの金貸しに教え込んだ記憶だろう。


 「……良かろう。アムニシア」

 「かしこまりました。私のソネット」

 「エングリマ、お願いね」

 「……はい、ソネットさん」


 他に術がないからではない。これ以上の時間の無駄は、此方としても省きたい。自ら望んで身体を提供してくれるというのだ。それが困難故にあのような物を用意しただけだと、大富豪は開き直った。大富豪には自身が残る自信があった。悪魔に見放されない自信の他にも、自らの胸の内にまだ残り続ける想いのために。この小娘は、未練がない。絶対に生き延びてやるという気概がない。ならば、金貸しのよう消えるだけ。おそらく奴は、ほんの僅かな己の記憶で私を思い止まらせる目論見。消滅する前提で、私に意見を申そうというのだ。

 逃げようと思えば逃げる手段もあっただろうに。兄の姿を僅かに重ね、少し胸が締め付けられる。


(最後まで……立ちはだかるか、“時間泥棒”)


曲はアルバム化して完結して、ストーリーのプロットは決まっていたのですが……それ故文字に起こせないスランプに陥りました。もうこれ、小説にする必要ないんじゃないかって。

それでもいつかちゃんと文章でまとめたいなと悩み悩んでやっと、書けるようになりました。近い内に終わりまで駆け抜けたいです。お待たせしました。

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