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第七話


同時に執筆している「清川家の日常」とのテンションの違いに自分でもビビってる今日この頃。



「これ、やっぱりおいしいです」


今、私は先輩と一緒にいる。ここは、前に先輩に話したカフェだ。


「へー……」


まじまじと見つめてくる先輩。


「どうかしましたか?」


「い、いや……」


「?」


「よく食えるよね。そんな量」


「それはむしろ先輩の方ですよ!!」


先輩はなんとサンドイッチにオムライスにカレーにその他諸々を食べていた。しかも、大盛を。

底無し胃袋!! って突っ込みたい。


「いや〜、こんなに食べられないな〜。……モグモグ」


「いやいや、めっちゃ凄い勢いですよ……」


もう、底無しってレベルじゃない……。


「食いたい時に喰う。これ鉄則」


「知りませんよ、そんなの」


「…………」


「……そんな意外なものを見るような目で見ないでください」


「いや〜、しっかし。これウマいな」


「聞いてます?」


「ゴメン、聞いてなかった」


「…………ハァ」


「……すいませんでした」


ついに、先輩の方が折れた。

さりげなく、優越感に浸っている私。


「……そんなに食べてたら、体に悪いですよ」


しょんぼりしてる先輩を見てると、何だか微笑ましかったので、私は笑顔でその言葉を言った。

すると、先輩は。


「問題ないよ。どうせあと少ししか生きられないし」


途端に、先輩はしまったと言う顔つきになった。


「……………………え?」


何か変なことを聞いた気がした。


「い、今なんて言いましたか?」


「……そんなことより、前に言ったことで……」


「話を逸らさないでください!!」


思わず叫んでしまった。


「……変なこと言うね」


「それは先輩の方です!!」


「君は死にたがりのくせに、人が死ぬとなるとさ……」


「先輩!!」


「……ゴメン」


珍しいことに、先輩が謝ってきた。


「え、あ。いや……」


逆になんだか……。


「……この話、あまりしたくないけどね」


先輩は徐に口を開いた。


「オレ、あと一年しか生きられないんだ」


その時、私はどう思ったんだろう?

分からない、分からない。


「なんか、ありきたりなんだよね……。でもさ、本当なんだよ」


先輩は目を合わせてくれない。

それがなんだか悲しかった。


「先輩……?」


「この話は、終わり」


先輩はいつもの笑顔になった。

あの時、私に『死ぬなよ』と言ってくれた笑顔で。

それが、何でかな……。

ひどく私の心を締め付けた。


「先輩……」


「そんなに悲しそうな顔しないでよ。……オレだって辛いからさ」


それ以降、分かれるまで何も会話することはなかった。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆




帰り道、意外な人と出会った。


「えーっと……、神崎さん?」


「遥香でいいよ」


神崎さん、……いや、遥香さんはフランクな方だった。

先輩には凄くつってかかってたけど。


「……あの、榊原先輩のことなんですけど」


「ん、アイツになんかイヤなことされた? シメてあげるから」


「い、いえ……そうじゃなくて」


「ん?」


あまり、言うべき話題ではないかもしれないけど、私はあえて言うことにした。


「……あの人は、一年しか生きられないって本当ですか?」


「……そうだよ」


ああ、そうなんだ……。

嘘だと思いたかったけど、その幻想は打ち砕かれた。


「病名は知らないけど、かなりヤバめの病気らしいよ……」


「そう、なんですか……。でも、どうして先輩は……」


笑っていられるんだろう?

その言葉は口から出ることは無かった。


「藤澤さん!?」


遥香さんが私に近寄ってきた。


「どうしたの? 大丈夫?」


「……大丈夫、じゃないかもです」


気づいたら、涙がこぼれていた。


「ちょっとあっちで休もう」


遥香さんは優しく声をかけてくれた。私はそれに従った。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「遥香さんは、初めて知った時、どう思いましたか?」


「……分かんない」


「……そう、ですか」


「うん。でも、アイツがそれを受け止めた時、……正直腹が立った」


「……」


「君はどうだった?」


「私は……」


「ああ、ゴメン。分からなかったんだよね」


すまなそうに笑う遥香さん。


「『死ぬなよ』か……」


ふと、私はそんな言葉を口にした。


「?」


怪訝そうに見つめてきた遥香さん。

なんで、榊原先輩は『生きろ』って言わないんだろう?

……分かる訳ないか。

死にたがりの私なんかに。

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