第十一話
だいぶ盛り上がってキタァ!!
時は意外と早く過ぎ去る。
もう、クリスマスイブだ。
「雪だ……」
キレイ……。
昔なんて、べちょべちょして嫌いだったのにな……。
キレイ、と思えるようになったのは先輩のおかげ、かな。
でも、その先輩が……。
思わずため息が出そうになる。
そのとき。
「あれ、命ちゃん?」
遥香さんだ。
「こんにちは」
「うん。どうかした? ため息ついていたけど」
「先輩の、手術のことです」
「ああ、そのことね」
遥香さんも表情を曇らせる。やっぱり、この人も心配なんだな……。
「ま、あたしたちにできることは祈るだけだからね」
「そう、ですね」
今、私は先輩の家に向かっている。クリスマスパーティーがあるからだ。
話によると、遥香さんは来れないみたいだ。クラスの人たちとパーティーがあると言っていた。
途中まで道が同じなので、そのまま会話を続ける。
今は先輩のことや、近況報告。そんな会話を交わしていた。
「遥香さんは、翔一先輩のこと、好きなんですか?」
「ははっ、アイツなんかと?」
可笑しそうに笑う遥香さん。
「だってアイツ、イビキはうるさいし、意外とニブチンだし、全然頼ってくれなかったし……」
「詳しいんですね」
「ま、だてに幼なじみやってないからね」
「でも、幼なじみといったら、こう、恋愛感情とかそういうのが……」
マンガやドラマによくある展開とか。
「ん〜、もうある意味家族みたいなもんだから、そんな感情出てこないよ」
「そう、ですか……」
なんか、ちょっと嫉妬。
「ま、別に命ちゃんから愛しの翔一をとったりしないから、さ」
「べ、別にそんなんじゃ……」
今の私の顔、きっと赤いだろうな……。
「告白だってしたくせに」
「う、うぅ〜……」
なんだか、遥香さんが意地悪だ。
「ま、がんばりなさい」
何に対してのかんばれかは知らないけれど。
「言われなくても、がんばります」
私は笑顔で答えた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
先輩の家でパーティー、とは言ってもご両親はいらっしゃらない。つまりは、二人きり。
妙にドキドキしている自分がいる。
「はい、ココアだよ」
「ありがとうございます」
外はすっかり暗くなっている。
ちらほらと降る雪が美しい。
「先輩。今度はちゃんと言いますね」
前にも告白じみたことを言った。先輩はそれを分かっている。
これは、確認。
お互いの気持ちの確認。
「私は、先輩のことが好きです。大好きです」
昔の私とは違う。
素直な気持ちを伝えたい。
……かなり、恥ずかしい。
「……オレも、命ちゃんのこと、好きだよ」
先輩は優しい笑みで、答えてくれた。
「……ありがとうございます」
涙が、止まらない。
嬉しいな……。
私は、思い切って、一つのお願いをしてみた。
「先輩。前にできなかった続きを、……お願いします」
きっと、私の顔は真っ赤を通り越しているんだろうな……。
「ああ」
前と同じようにそっと近づき、先輩の頬に手を添える。
そして……。
「ん……」
キス、とは言っても、本当に軽いものだった。ディープなものでもないし、映画やドラマみたいに激しいものでもなかった。
でも……。
「……」
恥ずかしそうにしている先輩。
「……えいっ」
思い切って先輩に抱きついてみた。
……温かい。
「命ちゃん……!?」
驚いている先輩が、なんだか可愛い。
「ずっと、こうしていたいです」
「……そう、だな」
先輩は私を抱きしめてくれた。そっと、優しく、労るように。
「……」
「……」
見つめ合い、そしてもう一度……。
ああ、この幸せな時間がもっと続いてくれればいいのに……。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
着実に、最期の時に近づいてきている。
でも、もう自暴自棄になったりしない。
だって、彼女がいてくれるから。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
時が早く過ぎるということは、充実しているからか。もう二月になっていた。
オレは病院に入院している。
恋ちゃんは毎日、様子を見に来てくれる。もちろん、秀明や恋ちゃんもだ。
……今日はどうやら、秀明だけみたいだ。
「調子はどう?」
秀明が珍しく、オレの心配をしてくれた。
「ま、ボチボチかな」
「そうか」
あっさりとした会話。それでも、十分だ。
「あと、もう少しでバレンタインか……」
「どうせ、恋ちゃんとか妹さんとかからもらえるだろ?」
「まあ、な」
謙遜はしなかった。
爆発してほしい。
「お前だって、もらえるだろ?」
「まあね」
ただ、入院中に食べていいかが疑問だけど。
「……また、バカなことやれるの、楽しみにしてるぜ」
彼なりに、生きろって言いたかったんだろうな……。
オレはそれに。
「ああ」
と、頷いた。
気づけば、いろんな人に支えてもらっている。
手術の前に、お礼を言わないとな。
成功した後も、言わないと……。外の天気は、二月のわりには明るく晴れていたような気がした。




