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落書きの主

第4話になります。落書き事件の真相が分かったようです。

「なんかわかったの?」


部長が俺の顔を覗き込む。


「部長、もう一度美術部に行ってみましょう」


「え、何かわかったなら私にも教えてよ。みずくさいなぁ」


部長はじれったそうに、椅子に座ったまま足をバタバタさせている。

部長なんだから、ちゃんと自分でもたどり着いてくださいよ。


俺はそんなことを思いながら、美術部へ向かうため紅茶を飲み干し、片付けを始めた。



美術部の部室に着くと、今日はみんなで何かを真剣に描いていたのか、それぞれ机に向かって作業をしていた。


部長がお邪魔しまーすと勢いよく扉を開けてしまったため、数名の生徒がびっくりしてこちらを凝視していた。


「お、ウワ研。落書き、なんだったかわかった?」


前回俺らと会話してくれた人が軽く声をかけてくれた。


「後輩くんが気になることがあるんだって」


そう言いながら部室に足を踏み入れ、こちらを見てくる。


そして俺の方を振り向いた時、何かに気づいたように部室の奥にある絵の方へ視線を向けた。


「この前来た時に爆睡していた子はいますか?」


「え、ゆーちゃん?」


そう言いながら誰かがおそらくその子の方を見る。


「へ?私?」


机の上のスマホを見ながらスケッチブックに何かを書いていた少女が顔を上げ、こちらを見る。



「部長、SNSに上がってたさっきの絵、出してください。」


「いいけど……あ!わかった」


部長はすっきりした顔をしながら、さっきSNSに上がっていた写真を探してスマホを操作する。


声をかけられたゆーちゃんは、なんで私?と言わんばかりの顔できょとんとしている。



「あなたは確か、今年の6月に転校してきた友香さんですよね」


その名前を口にした瞬間、彼女の表情と、周りの空気が凍りついた。


なんでこいつが自分の名前を知っているんだ。

気持ち悪い。


そう思われてもおかしくない。



俺のアカシックレコードには「記録」が保存されており、それを閲覧することができる。


記録とは、出来事を見ることができるだけではない。

作品や、実際の資料として残されているもの――そういったものも含まれている。


つまり俺は、この学校に関する様々な記録を閲覧することができるのだ。

当然、誰がいつ、何の理由で転入してきたのかも知ることができる。



その凍った空気を、スマホを触りながら部長がぶち壊してくれた。


「怖がらせてしまってすまない。彼はそういう情報に関して詳しい能力者だと思ってくれればいい」


少し嫌そうな顔をしている彼女をよそに、俺は続けた。


「あなたは、幽体離脱することができる能力者ですね」


少し間を置いて、彼女が答える。


「はい……自分でもよくわかってないですけど、多分そうです」



幽体離脱。

体から魂だけが抜け出し、自由に移動したり周囲を見たりできる能力だ。



「あったよ!これこれ」


部長がその子にスマホを見せる。


彼女はスマホの写真を見て、何かに気づいたのか少し食い気味に画面を覗き込む。


「あ、え……懐かしい!」


彼女から出てきた言葉は予想していたものとは違ったが、俺の考えは間違っていないと確信した。


「これ、私が昔友達と書いてた落書きです!」


そう言って、スマホに映る黒板の絵を眺めながら何かに思いを馳せているようだった。


周りの子達が「どういうこと?」と言いながら少しざわつく。



「たぶん、君は部室で寝ている間に無意識で幽体離脱して、絵を描いていたんじゃないかな?」


部長がそう言いながらスマホを受け取る。


彼女は少し上を向き、顔を歪めながら言った。


「私、幽体離脱してても、あんまり覚えてないんですよね」


まあ、おそらくそうだろうとは思った。

もし覚えているなら、見せた絵を見て「懐かしい」とは言わないはずだ。



つまり彼女は、部室で眠っている間に無意識で幽体離脱し、誰もいない教室で落書きをしていた。そして本人はそのことを覚えていなかったのだ。



周りできょとんとしている美術部員たちに真相を説明し、職員室の先生方にも報告を済ませ、この密室落書き事件に終止符を打つことになった。



帰り際、校門へ向かう道すがら、部長がつぶやく。


「それにしても、あの黒板の絵うまかったね!」


「そうですね。俺、あんまり絵のセンスとかよくわかんないんでなんとも言えませんけど……多分めちゃくちゃ上手いんだろうなとは思ってました」



俺はアカシックレコードで見たから知っている。


彼女が6月という微妙な時期に転入してきたのは、その能力が表沙汰になってしまったからだろう。


彼女は中学から高校一年の間、美術コンクールなどで何度も賞を取り、将来有望とされていた生徒だったらしい。


しかしこの社会では、能力者はこの能力学校に隔離されてしまう。


もし能力がバレることもなく、能力に目覚めることもなければ――

そのまま絵の道に進んでいたのかもしれない。



そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか校門に着いていた。


門の前には、黒く立派な車が止まっている。


「おかえりなさいませ、お嬢様」


執事のような男性がこちらに向かって丁寧にお辞儀をする。


「ただいま。では後輩くん、またね」


そう言って部長は車に乗り込み、帰っていった。



部長も、その能力がなければ……。


いや、なんでもない。

余計なことを考えた。


俺も帰ろう。


そう思い、俺も帰路についた。

第4話、読んでいただきありがとうございました。

なんとなく世界観を理解していただけたのではないでしょうか。

これからも継続的に書いていきたいです。

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