密室落書き事件
主人公が所属している部活の噂研究同好会でのお話し。学校にある噂が気になるため確認する。
次の日の放課後。
久しぶりの噂研究同好会の活動日だ。
俺は教室の隅でスマホをいじりながら、部長が誰かと話している様子をメモしていた。
……と言っても、調査というよりほぼ立ち話である。
「それでさー、昨日のドラマ見た?」
「え、見た見た。あの展開ずるくない?」
完全に女子トークだ。
俺は横でスマホを構えたまま固まる。
いや、確かに聞き込みではある。
でも、これは本当に噂の調査なんだろうか。
なんだろうこの感じ。
友達と立ち話を始めた母親が、夕方になっても帰ってこない時のあの空気に似ている。
止めるタイミングがわからない。
「……部長、そろそろ本題に」
俺が小声で言うと、部長は「あぁ」と軽く手を叩いた。
「そうだった。つい話が逸れてしまったな」
つい、で済ませるには長かった気もするが、ようやく聞き込みが始まった。
⸻
その後、教室に残っていた生徒や、廊下を通りかかった先生にも話を聞いて回った。
そしてわかった噂の内容はこうだ。
鍵のかかった教室の黒板に、
チョークで落書きがされている。
それも一度ではない。
朝、登校してきた生徒が見つけることもあれば、
夕方の戸締まり確認の時に先生が見つけることもあるらしい。
絵の内容もバラバラだ。
ぐちゃぐちゃの落書きの時もあれば、
妙に上手い絵が描かれていることもある。
途中で描きかけのまま終わっているものもあったらしい。
「ふむ」
話を聞き終えた部長が腕を組む。
「つまり、鍵のかかった教室に落書きが出現する……と」
「なんかそれっぽいですね」
「うん。オカルトっぽい」
それで納得するのもどうかと思うが、
とりあえず俺たちは実際に落書きがあったという教室へ向かうことにした。
⸻
教室は校舎三階の奥にあった。
常に使われているクラスの教室ではなく、
科目によって使われたり、自習室として使われたりする空き教室だ。
扉を開けると、部長が一言。
「普通の教室だね」
確かに、これといって変わったところはない。
机と椅子。
教卓。
黒板。
俺も何度か使ったことがある、ただの教室だ。
窓の外を見ながら俺は言う。
「どこかの人間離れした能力者なら、三階くらいすぐ登ってこれそうですけどね」
笑太の顔が頭に浮かぶ。
あいつなら余裕だろう。
だが、問題はそこではない。
窓を確認すると、鍵はしっかり閉まっている。
「施錠されてますね」
「うん」
部長が頷く。
この教室の鍵は職員室で管理されている。
誰かが使えば、記録が残るはずだ。
「誰かが施錠するのを忘れてて、外から入ってきたとか?」
俺が思いつきを口にすると、
部長は窓を軽く叩いた。
「いやぁ、もしそうだったとしても」
コツン、とガラスを叩く音が響く。
「わざわざ三階から侵入する意味がわからない。この学校の生徒なら、絵の練習って言って許可を取ればいいからね」
確かに。
能力者学校で落書き程度、そこまで騒ぐ話でもない。
俺は黒板を見る。
綺麗に消されていて、
どんな絵だったのか全くわからない。
「どんな絵だったか聞けませんかね」
「綺麗な絵が描かれてたこともあるらしいし……」
部長が言う。
「絵が上手い奴が描いた可能性はあるね」
ふむ。
……いや、待てよ。
俺はふと思いついた。
「そうだ」
部長を見る。
「美術部に聞いてみましょう」
「ほう?」
「絵のことなら、あいつらが一番詳しいでしょう」
⸻
というわけで、俺たちは美術室へ向かった。
美術室は、噂研究同好会がある旧校舎の二階にある。
扉を開けると、数人の生徒がだらっと机に座っていた。
なんというか、ゆるい。
うちの同好会と似たような空気である。
「うちの部員が落書きでもしたのかな?」
誰かが笑いながら言う。
そこで部長が元気よく手を上げた。
「最近、黒板で落書きした人ー?」
突然の質問。
美術部の連中は一瞬顔を見合わせる。
「黒板?いや、してないね」
「俺じゃないな」
そんな声が聞こえる。
その中で、一人だけ机に突っ伏している生徒がいた。
完全に寝ている。
「ゆーちゃん落書きした?」
誰かが肩を揺するが、反応がない。
ぐっすりだ。
「うちじゃないかも?」
扉の近くにいた生徒が、申し訳なさそうに言う。
「お邪魔しちゃってごめんね」
部長が軽く手を振る。
「話聞かせてくれてありがとう」
俺たちは美術室を後にした。
⸻
その後も、いくつか教室を見て回った。
だが結局、これといった手がかりは見つからない。
「今日はここまでかな」
夕方。
部長がそう言った。
「また明日調べよう」
「ですね」
こうして、調査は一旦終了となった。
⸻
帰り道。
俺はいつものようにバスに揺られていた。
窓の外では、夕暮れの街がゆっくり流れていく。
途中、バスは公園の前を通る。
普段なら子供が遊んでいる場所だが、
今日はフェンスで囲われていた。
どうやら工事中らしい。
街灯の下で、重機が黒い影になっている。
なんとなく、少しだけ不気味だった。
まあ、ただの工事だろう。
俺は特に気にもせず、窓の外から目を離した。
⸻
その日。
俺たちが学校中を歩き回っている間にも。
鍵のかかった教室の黒板に、
新しい落書きが増えていた。
その事実を知るのは、
次の日の朝のことになる。
第二話を読んでいただきありがとうございます。
初めて書いているので、なろ小の使い方もよくわかってないですが、コメントなどしていただければ励みになります。ここわかりにくいとか誤差とかの指摘でもやる気に繋がりますので。




