6話 雨の廃屋で
雨が降り始めたのは、翌日の午後だった。
空は一気に灰色に覆われ、冷たい雨粒がエレナとルナの頭を叩く。
ルナの傷はまだ再生途中で、右腕は肘から先が半分ほどしかなく、左足は足首から下が不完全な形でしか戻っていない。
痛みは因子のおかげで和らいでいるが、歩くのはまだ辛く、エレナの背中で小さく震えていた。エレナは急いで道を外れ、古い廃屋の軒下に駆け込んだ。
屋根は半分崩れ、壁には苔が生え、床には水溜まりができていた。
だが、雨をしのぐには十分だった。エレナはルナをそっと下ろし、濡れた髪を絞った。
ルナは壁に寄りかかり、息を荒げながら、エレナの袖を弱々しく掴んだ。
「エレナ離れないで……、雨、怖い」
エレナはルナの隣に座り、彼女の体を抱き寄せた。ルナはすぐにエレナの胸に顔を埋め、小さな体を寄せてくる。
エレナの体温と、因子が共鳴する温かさが、ルナを落ち着かせる。
ルナはエレナの胸に?をすりつけ、小さな声で呟く。
「エレナのそばにいるとセレス様の力が、もっと感じられる……温かくて気持ちいい」
エレナはルナの髪を優しく撫で、微笑んだ。
「ルナの中の因子が、私に触れると活性化するのね。セレス様の力は、信徒同士で繋がっているの……だから、もっと近くにいてもいいよ」
ルナは、恥ずかしそうに顔を赤らめながら、エレナの腕に自分の体を預けた。
「エレナ好き……セレス様も……大好き……ずっと、こうしていたい……」
エレナはルナを抱きしめ返し、静かに頷いた。
「私も、ルナが好き。仲間として、信徒として……ずっと、そばにいる」
雨音が強くなり、屋根の穴から水滴が落ちる。
エレナは枯れ枝を集め、指先から光の膜を広げて火を起こした。
魔法による炎は、濡れた枯れ枝に簡単に火を灯す。
炎が小さく揺れ、二人の顔を照らす。
ルナはエレナの胸に顔を埋めたまま、
左手の甲をエレナの手に重ねる。
ふたりの信仰の証がほのかに光る。
「セレス様……私はあなたの信徒として生き、あなたの光を広めます。この体、この命、すべてを捧げます。エレナと一緒に……永遠に……」
エレナはルナを抱きしめる。
「うん、私たちは……永遠の仲間です」
ルナはエレナの胸に寄り添い、心地よさそうに目を閉じた。
因子が活性化し、温かさが全身に広がる。
ルナは、エレナの腕の中で、小さな声で呟いた。
「エレナずっと、こうしていたい離れたくない……」
エレナはルナの髪を撫で、静かに答えた。
「うん……離さない。ずっと、そばにいる」
焚き火の炎が揺れ、二人の影が重なり合う。
雨音が遠ざかり、廃屋の中に、静かな温もりが満ちた。
二人の少女は寄り添い、今日も静かに眠りについた。




