1話 起源
私は、地球で普通のサラリーマンとして生きていた。
名前は瀬名雫。
女みたいな名前だが、男であった。
そんな私だが、毎日同じように生きてきたが、事故で死んだと思った瞬間、意識が蘇った。
そこは暗く湿った洞窟の中。
体が……おかしい。
手足がないことに気づく。
そして代わりに、無数の触手がうごめいているのが、視界に映る。
緑色の粘液に覆われた、異形の体。
鏡のような水溜まりをのぞき込み、映った姿を見れば、まるでクトゥルフ神話の怪物のようだ。
(これは……異世界転生か?)
心の中で呟く。
知識が流れ込んできた。
私は星の意思によって生み出された存在。
人類が誕生していない時代。
原始的な獣や精霊、巨大なモンスターが跋扈する混沌の大地だ。
私は「触手のモンスター」として生まれたらしい。
流れ込んできた知識が、私に最適化され、私に理解しやすいステータス画面が浮かぶ——典型的なRPG風のシステムだ。
レベル1、ステータスの数値、スキルに触手伸長、毒分泌、吸収などが記載されている。
私は生き延びるため、洞窟の小動物を捕らえ、吸収した。
経験値が入り、レベルアップ。
触手が増え、強くなる。
外の世界へ這い出る頃、私は既に森の頂点捕食者になっていた。
世界は広大だった。
原生林、火山、氷河、様々な環境。
星にはエーテルが満ち、モンスターたちが魔法を操る。
ドラゴン、グリフォン、巨獣たちが争う中、私は触手を伸ばし、敵を絡め取り倒し吸収していった。
私は所持する吸収のスキルにより、倒した敵のスキルを吸収できる。
例えば火を吐くドラゴンを倒し吸収すれば【炎の息吹】、意識を向けた相手を凍結させる氷の精霊を倒し吸収すれば【凍結】を得た。
瞬く間に数百年が過ぎた——異形の体は時間を感じにくい。
私はレベルアップを繰り返した。
体は巨大化し、触手は数百本。
膨大な量の魔法を使うためのエネルギーであるエーテルを体内に宿し、魔法で周囲を操るようになった。
森を支配し、山を征服し、海を侵略した。
私が最初に星から与えられた知識には、この星の頂点には混沌の龍という魔物が君臨しているらしい。
私は今の生を、RPGのようだと感じている。
RPGらしく、最終ボスらしい、混沌の龍を倒せば、晴れてゲームクリア。
そんな考えで、私は混沌の龍を倒せるほどに強くなるために、旅をつづけた。
更に数百年ほどだろうか? ついに私は混沌の龍と対峙することになった。
混沌の龍は山脈を崩すほどの巨体で、空間を歪める魔法を多用する。
私は触手を無数に伸ばし、どうにか龍の鱗を貫き、毒を注入。
空間を歪められ、防御不可能な魔法で、いくつもの触手が千切られる。
お互いを削り合うような戦いは数日続き、ついに私の勝利という結果で決着。
倒した龍を吸収した瞬間、私の体は神々しい光を放ち、触手はエーテルの糸のように輝く。
【神格化】のスキルを私は得た。
私はとうとうこの世界の頂点に立った。
神格化した私の力はまるで無限。
大地を操り、嵐を呼び、天変地異を起こす。
だが、孤独で退屈だった。
私のRPG《冒険》は終わったのだ。
この星にも、地球のようにいずれ人類が現れるのだろうか?
いいや、生まれるようにしよう。
私は星全体に、進化を促す力を降り注がせ、いずれ人類が生まれることを夢見ながらしばしの眠りについた。




