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青鳥島の合宿 ~陰キャでぼっちな俺が、引き籠もり女子と孤島に向かった~  作者: シッポキャット


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7/18

7 出発

「出発の時間となりました。お子様方はバスの中へ、お見送りの方は後ろへお()がりください」

二十代(なか)ばくらいの生真面目(きまじめ)そうな女性が、バスの乗車口前で指示を出した。(かも)し出す雰囲気から、彼女がこの合宿の主導的(しゅどうてき)立場のようだ。首に下げた名札に、【職員】秋月令子(あきづきれいこ)と書いてあった。


 根本遥(ねもとはるか)と俺は最後尾に並び、黙々(もくもく)と乗り込む参加者たちの後に続く。マイクロバスの座席は、ざっと数えて20席。参加者たちは席についた途端、相席(あいせき)(こば)むように隣りの座席に手荷物を置き、後続(こうぞく)に無言の圧力をかけていた。


 根本遥は参加者たちの顔をじろじろと(なが)めながらゆっくりと進み、一番奥、四人掛けの左の座席に腰を下ろす。俺は右奥に腕を組んで座っていた男性職員(名札は田中忠(たなかただし))に軽い会釈(えしゃく)をして、根本遥の隣りに座った。


 エンジンが掛かり、秋月令子がガイド席に着席すると、プシュッと音を響かせてドアが閉まった。参加者たちは車窓に(ひたい)をつけ、ぼんやりと外を眺めている。密室となった車内に、緊張と不安が入り混じった、重苦しい空気が(ただよ)い始めていた。


 バスが停留所を離れしばらく()っても、参加者たちに(はず)んだ様子は一切無く、車内はしんと静まり返っている。

 ガイド席に座っていた秋月令子が腕時計を確認し、マイクのスイッチを入れた。スナック菓子を(むさぼ)()っていた根本遥が袋を丸めて輪ゴムで留めた。窓の外を眺めているが、耳はしっかりと話を聞く態勢に入ったようだ。


「参加者の皆さん、おはようございます。これから和歌山県の青鳥島(せいちょうじま)へ向かいます。

 皆さんは団体行動(だんたいこうどう)が苦手な人ばかりでしょうから、この合宿は少々きつい試練(しれん)になるかも知れません。

 しかし重度(じゅうど)のあがり症で人前(ひとまえ)に出られなかった私が、このように社会復帰できたのは、人と()れ合う経験を何度も()(かさ)ねたから。

 皆さんの中には嫌々(いやいや)参加させられた人もいるでしょうが、人を()けて自分の(から)()()もっていては、いつまでたっても自立(じりつ)できません。残念ながらこの世の中は、人と人の(つな)がりで成り立っています。一人で生きていく事なんて出来ないんです――」


「フフフ……合宿の説明かと思ったら、いきなり説教くさい演説(えんぜつ)が始まったわ」

根本遥は輪ゴムを(はず)して、再びスナック菓子をボリボリと食べ始めた。


「まことに(きび)しい事を言うようですが、皆さんを(やしな)ってくれている人たちが、この先ずっと面倒を見てくれる保証はありません。

 この合宿での経験が、少しでも皆さんの成長に(つな)がるように、誠心誠意(せいしんせいい)、全力でサポートさせていただきます! 以上、指導主任の秋月令子(あきづきれいこ)でした」

秋月令子はマイクのスイッチを切り、深々(ふかぶか)と一礼した。車内は(しら)けた雰囲気が(ただよ)い、一つの拍手も起こらなかった。


 おもむろに立ち上がった男性職員の田中忠(たなかただし)が、申し訳なさそうに手刀を切って前に進み、満足そうな顔をした秋月令子からマイクを受け取った。


「秋月先生の補佐(ほさ)(つと)める田中忠だ。今日はみんな朝早く起きて、中には目を閉じている者もいるようだが(かま)わず話そうと思う。

 和歌山の港に着くまで、あと三時間ほど掛かる。途中、二度サービスエリアに寄るから、そこでトイレや水分補給を済ませておくこと。


 港に着いたら昼飯時(ひるめしどき)だが、食後に船に乗ると気分が悪くなるかも知れない。なので、そこで用意された御当地(ごとうち)弁当を受け取って船に乗り、島に上陸してからみんなで一緒に昼食を取る。ちなみに港からはチャーター船で約50分。()()めが必要な者は前もって教えてくれ。ここまでで、何か質問はあるか?」


 田中忠の問いかけに、反応を(しめ)す参加者は誰もいない。退屈そうに外の風景を眺めているマスクをした少女、スマホで必死にゲームをしている金髪の少年、窓ガラスにほっぺたを付けたまま(いびき)をかいている巨漢(きょかん)の男子……。


 田中忠はお構い無しに話を続ける。

「それと、保護者には前もって(つた)えてあるが、島へはスマートフォンやゲーム等の通信機器は(つな)がらないし持ち込めない。当然、刃物等の危険物もな。合宿に必要なものはすべて島に(そろ)えてあるから、許可できない物は船に乗る前に回収させてもらう。


 そして、これが一番大事なことだが――港を出たら無事に戻ってくるまで、自分勝手な行動は(げん)(つつし)んでもらう。軽はずみな行動が、命を落とす原因になる場合もあるからだ。

 ルールを守れない者には、それなりの(きび)しい指導をせざるを()ない。(きも)(めい)じておくように。以上だ」

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