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青鳥島の合宿 ~陰キャでぼっちな俺が、引き籠もり女子と孤島に向かった~  作者: シッポキャット


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6/18

6 見送り

 青鳥島(せいちょうじま)は和歌山県すさみ町の南西(なんせい)、約25キロメートル(おき)に浮かぶ小さな島。以前はサバイバルキャンプを売りにした無人島だったが、自治体とNPO法人の支援によって設備が整えられ、前もって物資の準備をしておけば、一週間程度の合宿を(おこな)える環境になった。

 数年前から近畿圏(きんきけん)のフリースクールが夏休みの一定期間を貸切(かしきり)で使用する、合宿施設としての役割も果たすようになった。


 俺は一通(ひととお)りネットで下調べを済ませた後、根本遥(ねもとはるか)の母親から受け取ったパンフレットを母親に見せて、簡単な説明と、この合宿に参加する意向を伝えた。


「つまり、(ひとみ)ちゃんのお友達の付き添いで合宿に参加するわけね。旅行の保険とかはちゃんとしているみたいだけど、無人島って……本当に大丈夫?」

「まぁ二泊三日だし、島は港から船で50分ほど。ちゃんとした建物や発電機もあるみたいだから、問題ないと思う」


 根本遥の親が主催者側と手続きをしてくれるとは言え、保護者の同意と事務的な書類の提出が必要だった。他にも、俺のパーソナリティーに関して記入する書類があったが、見せずに隠しておいた。

 今更ながら俺の内向的(ないこうてき)な性格を、親には知られたくなかった。


 そして夏合宿当日。根本遥の要望で、彼女の自宅まで(むか)えに行った後、集合時間に間に合うように、大阪駅前のバス停留所までエスコートしなければならない。

 俺は二日分の下着と筆記用具、水筒をリュックに入れ、黒ジャージの上下で始発の電車に乗った。


 白川(しろかわ)とは出発前に出来る範囲で宿題を消化し、夏休みの活動計画(スケジュール)を話し合った。この合宿に関しては、容易に根本遥の口車(くちぐるま)に乗らないこと。危険な場所に近寄らないこと。帰った後、合宿の(くわ)しい内容と根本遥の様子をしっかりと報告することを、念入りに約束した。

 白川からは他にも様々な注文があったが、今覚えているのはそれくらい。あとは何とかなるだろう……と思う。


 日差しが少し(まぶ)しくなってきた頃、不動産屋とコンビニに(はさ)まれた細長いマンションを見上げると、四階の窓の遮光(しゃこう)カーテンの隙間(すきま)から黒い双眼鏡が(のぞ)いていた。

 首に下げていたスマートフォンが鳴った。


『時間通りね。今から下りるから、ちょっと待ってて』


 ガラス製のエントランスドアの前でしばらく待っていると、小豆色(あずきいろ)のジャージを着て、目一杯に(ふく)らんだリュックを背負った根本遥が、母親に付き添われて出てきた。


(はじめ)君、(はるか)の事をどうか、くれぐれもよろしくお願いします!」

何度も頭を下げ、まるで花嫁を送り出すような素振(そぶ)りの母親に居心地の悪さを感じながら、俺と根本遥は()()って駅へと向かった。


「フフフ、同じジャージね。色は違うけど」

小豆色(あずきいろ)が根本さんらしくていいね。それにしても……リュックが()()()()なのはどうして?」


「港に着くまでに食べるお菓子よ。(しま)には許可された物しか持っていけないから、それまでにバスの中で()()めしておかないとね。

 電子機器も持って行けないから、白川瞳(しろかわひとみ)とやり取りするなら、スマホを回収される前にやっといた方がいいわよ」

根本遥はニヤリと笑い、早くも明太味(めんたいあじ)の棒状スナックを(かじ)り始めた。


 根本遥から受け取った(ひも)付きのがま(ぐち)を開けると、中に多めの現金が()まっていた。俺はがま口を首に下げて二人分の切符を買い、電車を乗り継いで、無事時間通りに大阪駅に辿(たど)り着いた。


 貸切(かしきり)バスの集合場所には、すでに見送りの保護者と参加者たちが集まっていた。俺の後ろを歩く根本遥が小さな声で(ささや)いた。

(はじめ)には一緒に来てもらったけど、あたしに気を(つか)う必要はないわ。あんたはあんたでこの合宿を楽しんで。フフフ――それが()()()ってもんでしょ?」

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