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青鳥島の合宿 ~陰キャでぼっちな俺が、引き籠もり女子と孤島に向かった~  作者: シッポキャット


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3/5

3 相合い傘

 俺はスマートフォンを制服のポケットに仕舞い、(ぬる)くなったコーヒーを口に(ふく)んだ。

「あんな無神経な挑発に乗らなくてもいいのに」

白川(しろかわ)は背もたれに体を(あず)けて腕を組んだ。


「根本さんの部屋に、一緒に付いて来てほしい……んだけど、ダメかな?」

恐る恐る目を向けると、白川はふうっと息を吐き出して俺に言った。

「夏休みのスケジュールは……根本遥ねもとはるかの依頼の内容を聞いてからで、どう?」


 ぼっちな俺の夏休みの予定は、当然ながらほぼ真っ白だった。白川も、八月の(なか)ば頃に家族の用事があること以外は未定らしい。

 簡単な打ち合わせをした後、俺は根本遥に電話を掛け、二日後の正午に、白川と一緒に訪問するということで話が(まと)まった。


 そして翌々日。俺と白川は根本遥の自宅に程近(ほどちか)い、小鳩(こばと)駅のホームに()り立った。


「またこの町に舞い戻って来るとは思わなかったわ」

白川は髪を後ろで(たば)ね、(しず)んだ気持ちを切り替えているように見えた。


「面倒に付き合わせてごめん」

「気にしないで。(はじめ)はとばっちりを受けただけ。根本遥を呼び寄せたのは私の所為(せい)だから」


 ホームの階段を降りると、強い日差しが照りつけていた。白川は(たた)んでいた黒い日傘を広げた。


「根本さんの依頼がどんなものか分からないけど、(たよ)ってきた相手を門前払(もんぜんばら)いするのはちょっと……」

ぼそりと俺が言うと、白川は日傘を差したまま俺の隣りに並んだ。


「私は今でも根本遥(あの子)()()()じゃないかと思ってる。人を(コマ)のように動かして、高みの見物を楽しむような人物よ。

 この(あいだ)の電話でも、(はじめ)にムチとアメを使って言葉(たく)みに依頼を引き受けるように誘導していた。私が今日(はじめ)と一緒に来たのは、あの子の依頼に(うたが)わしい点がないかを見極(みきわ)めるためなの」


 正午前。不動産屋とコンビニに挟まれた細長いマンションを見上げると、四階の窓の遮光(しゃこう)カーテンの隙間から黒い双眼鏡が(のぞ)いていた。

 白川の首に下げていたスマートフォンが鳴った。

「私よ。ちゃんとお弁当を持って来たから上がっていい?」


相合(あいあ)い傘で来るなんて、あんたも中々(なかなか)やるじゃない。……前と同じ。インターホンを鳴らしたら鍵を開けるから、すぐに入って施錠(せじょう)する事。わかった?』


OK(オーケー)

白川は日傘を(たた)んで、ちらりと俺を見た。


「ありがとう。帰りの傘は俺が持つから」

小声で礼を言うと、白川は静かに笑った。


 ダイニングで昼食を終え、根本遥は俺と白川を自室に(まね)いた。以前と同じようにリビングのテーブルを部屋に持ち込んで、俺と白川は絨毯(じゅうたん)に座り、根本遥は壁際のゲーミングチェアに深々と腰を下ろした。


 根本遥はあどけない容姿をしているが、中学時代からイラスト業で身を立て、ずっと独り暮らしを続けている。

 何の目的も持たずフラフラと日々を過ごしている俺とは違い、彼女はすでに人生の()いも(あま)いも知りつくしている(かん)すらあった。


 どう考えても力不足な俺に、一体どんな(たの)み事をするのだろうか。俺は期待と不安を胸に秘め、固唾(かたず)()んで耳を傾ける。隣りに座る白川は、(するど)眼差(まなざ)しで根本遥を見据えていた。


「フフフ。何だかあんたたち周辺の空気がピリついているようだけど、取り越し苦労だから。あたしの(たの)みっていうのは、()()よ」


 根本遥はパソコン机の上にあった色鮮やかなパンフレットをテーブルの上に載せた。

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