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青鳥島の合宿 ~陰キャでぼっちな俺が、引き籠もり女子と孤島に向かった~  作者: シッポキャット


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15/18

15 オセロ

 細長い板張(いたば)りの廊下を歩くと、左側に医務室(いむしつ)、右側に遊戯室(ゆうぎしつ)のドアプレートが張ってあった。

 秋月令子(あきづきれいこ)は遊戯室のドアを開け、()れて来た参加者たちに(あらた)めて言った。

「調べものと食事の後片付(あとかたづ)けが終わったらすぐに戻ります。それまでここで待機(たいき)しておくこと。空腹(くうふく)な人は即席の非常食を用意しますから、あとで遠慮なく言ってくださいね」


 遊戯室のドアが閉まると、真っ先に動き出したのは金田龍人(かなだりゅうと)だった。十畳ほどの部屋の奥に漫画や絵本が並んだ本棚があり、それを目ざとく見つけたようだ。

 畳敷(たたみじ)きの床には、あちこちにふっくらしたクッションが散在(さんざい)していて、カラーボックスに剣玉(けんだま)や木製の脳トレパズル、オセロや将棋、カードゲームなどが目に入った。


 瀬野賢児(せのけんじ)は銀縁眼鏡を持ち上げ、慎重に(あた)りを物色(ぶっしょく)し始めた。馳久美子(はせくみこ)はその様子を軽蔑(けいべつ)眼差(まなざ)しで(にら)みつけていた。

 根本遥(ねもとはるか)(そば)にあったクッションをつかんで、小さな座卓(ざたく)の前に(すわ)った。


(はじめ)、オセロはできる?」

「ルールは知ってる。家には無いけど」


 金田龍人は本棚を独占するように、寝転んで漫画を読んでいる。瀬野賢児は胡座(あぐら)をかいて取り()かれたようにルービックキューブを回している。馳久美子は少し気が晴れたのか、窓辺(まどべ)に座り、ぼんやりと窓の外を(なが)めていた。

 いずれも対戦ゲームには興味が無いらしい。俺はカラーボックスからそっとオセロゲームを引き出して、クッションに(うず)もれるように座った根本遥の向かいに腰を下ろした。


 座卓にオセロを()せると、根本遥は白い(コマ)を中央に並べながら小さな声で(つぶや)いた。

「あたしの悪い予感(カン)は当たったようね」


「まさかとは思うけど……根本さんの自作自演(じさくじえん)じゃないよね?」

俺は根本遥に(なら)って黒い(コマ)を斜めに置いた。確か黒が先手(せんて)だったはず。


「フフフ。あたしが()()()だったら、もっと安全な場所で高みの見物をしたいところよ」

根本遥は時折(ときおり)参加者たちに目を(くば)りながら話を続ける。

「あんたは船の上で手摺(てすり)にもたれて眠っていたようだけど、あたしは甲板(デッキ)で眠ったフリをしながら参加者たちの様子を眺めていたの。

 船が(しま)に着く(あいだ)、あたしとあんた以外の面々(めんめん)が、一度は船尾(せんび)の方へ移動してた。誰がいつ移動したか――ちゃんとメモに残してあるから間違いないわ」


 俺は根本遥の話を聞きながら(はさ)んだ(コマ)を裏返す。

「まさか……すでに御当地弁当(ごとうちべんとう)を消した犯人を知っているとか?」

俺は声のボリュームに気をつけながら根本遥に視線を合わせた。


「フフフ。(あや)しい動きをしていた(ヤツ)はいるわ。そいつが犯人かどうかは、分からないけど」

根本遥はニヤリと笑い、挟んだ(コマ)を裏返していく。


 俺は横目で参加者たちの様子を確認した。窓辺の馳久美子は肩肘(かたひじ)をついたまま船を()いでいる。瀬野賢児のルービックキューブは、ほぼ色が(そろ)いかけている。金田龍人は開いた漫画を顔に載せたまま(いびき)をかいていた。


 どこに(コマ)を置いても根本遥に(カド)を取られる流れ。意識の半分を会話に持っていかれている所為(せい)か、勝負に身が入らない。これも根本遥の作戦だろうか。

画鋲(がびょう)の事件に関しては、どう思う?」


「注意深く様子を見ていたけど、あたしの班に(あや)しいところは無かったわ。(はじめ)の班はどう?」


「根本さんほど意識はしていなかったけど、怪しいところは無かったと思う。単純に消去法でいくと、容疑者は……二班の誰か?」

俺は(なか)ば負けを意識しながら黒い(コマ)を置いた。


「フフフ。手っ取り早く犯人(ホシ)が見つかれば、気楽に過ごせるのにね。とにかく用心に()した事はないわ。あんただってこの合宿の参加者の一人よ。変な濡れ衣を着せられないように、気をつけておく事ね」

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