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青鳥島の合宿 ~陰キャでぼっちな俺が、引き籠もり女子と孤島に向かった~  作者: シッポキャット


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13/18

13 カレーライス

「では二日後の正午(しょうご)に、また――よろしくお願いします」

田中忠(たなかただし)御当地弁当(ごとうちべんとう)の船内捜索と帰船の手配を船長に確認した。


 秋月令子(あきづきれいこ)に続いて、参加者たちが桟橋(さんばし)に降りると、船長は(つな)いでいたロープを手際よく(はず)して操縦室に戻る。

 孤島に残された乗客全員が見守る中、チャーター船はゆっくりと旋回(せんかい)し、白い泡を残して離れて行った。


「それでは皆さん、船旅(ふなたび)(つか)れているとは思いますが、向こうに見える石積(いしづみ)の階段を登るとすぐに宿舎(しゅくしゃ)が見えます。

 みんなで協力して、美味(おい)しいカレーを作って食べましょう!」

秋月令子は(しず)んだ気持ちを鼓舞(こぶ)するように(こぶし)を上げて言ったが、参加者たちの反応は薄い。彼らの性格にも問題はあるだろうが、それ以上に、正論(せいろん)を振りかざす秋月令子の態度が気に入らないようだ。

 最後尾の俺の横を歩く田中忠も、参加者たちの様子を(なが)めながら溜息をついていた。


 手狭(てぜま)な砂浜の境目(さかいめ)には、コンクリートで(かた)められた護岸(ごがん)が横一線に広がっていて、中央に石積(いしづみ)の階段が見えた。護岸の向こうは(しげ)みに(おお)われ見えなかったが、奥に向かうとパンフレットに載っていた、そこそこ小綺麗な宿舎が見えるはずだ。


 秋月令子を先頭に、参加者たちは無言で階段を上り、雑木林の小道を歩いて行く。視界が開けた先には整地された広場があり、バーベキューやキャンプファイヤーが出来るようになっていた。

 少し奥まった先に、横長のシンプルなログハウスが見えた。


 ウッドデッキで煙草(たばこ)を吸っていた白衣の女性が、(あわ)てて煙草の火を()み消して立ち上がった。


「やあやあ、秋月先生と田中先生、お疲れさま。それと参加者の皆さん、青鳥島(せいちょうじま)へようこそ! 私は主に医療衛生と総務を担当する津田美子(つだよしこ)だ。よろしく!」

ざっくばらんに話す津田美子は、二十代後半くらいに見える。名前の通り鼻筋が通った相当な美人で、参加者たちは男女ともにその肉感的な胸の(ふく)らみに釘付けになっていた。


「津田先生、申し訳ないんですが、急いでカレーを作ってお昼ご飯を食べたいんです。食材の用意とご協力をお願いしてもいいですか?」


「あれ? 御当地弁当を食べるんじゃなかったの? ……まぁ(くわ)しい事情はまた(あと)で。準備をするから、先生たちは誰が何を担当するか決めておいてね」

津田美子は白衣を(ひるがえ)し、ログハウスの中へ入っていった。


 本来なら炭火を()き、外で和気あいあいとカレーを作る予定だったのだろう。しかし今回は時間短縮のため、食堂で非常用のカセットコンロを三台用意し、くじ引きで三班に分かれてカレーを作ることになった。


 一班は秋月令子、馳久美子(はせくみこ)、俺。

 二班は津田美子、瀬野賢児(せのけんじ)布引真子(ぬのびきまこ)

 三班は田中忠、金田龍人(かなだりゅうと)曽我部太(そがべふとし)根本遥(ねもとはるか)


 参加者たちに刃物を持たせるのは危険と判断したのか、食材の下準備は三人の職員が手分けして(おこな)った。

 その後、それぞれの班に分かれた職員が指示を出し、参加者たちは与えられた仕事をおぼつかないなりにも(こな)していった。まあ、やる事といえば、食材を(はこ)んで鍋に投入し、混ぜたり、食器を並べたりするだけなのだが。


 三班は、曽我部太の要領の悪さに金田龍人が罵声(ばせい)を浴びせ、田中忠が何度も(たしな)めていた。根本遥をちらりと見ると、楽しそうにメモを取っていた。


 無事に各班のカレーが出来上がった。ちなみにご飯は飯盒炊爨(はんごうすいさん)ではなく、非常用の炊飯器で()いていた。

「大分遅くなりましたが、みんなで協力して作ったカレーです。おかわりをする人は、他の班のカレーも食べてみてくださいね。それではいただきます!」


「いただきまーす!」

ただ一人元気な津田美子の声が響いた。参加者たちは静かに食べる者もいれば、皿をつかんで流し込むように食べている者もいた。


 曽我部太が真っ先に食べ終わり、金田龍人と先を争うように炊飯器に向かった。


 やはり身軽な金田龍人が先にご飯をよそい、一班と二班のカレーを半々にかけて席に戻った。つづく曽我部太は皿に山盛りのご飯をよそい、スプーンで真ん中に穴を開け、全ての班のカレーを順番にたっぷりとかけて席に戻る。

 その傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な食いっぷりに、一同(いちどう)は食事の手を止めて呆気(あっけ)に取られて見ていたのだが――


「うっ! ウグッ……」

曽我部太が次の瞬間、一度口に入れたカレーライスを豪快に吹き出した。


「うわ!」


「どうした?!」

横にいた田中忠が(うつむ)いた曽我部太の頭を起こすと、口の中から真っ赤な血と、(にぶ)く光った画鋲(がびょう)が、ボトボトとテーブルに流れ落ちた。

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