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青鳥島の合宿 ~陰キャでぼっちな俺が、引き籠もり女子と孤島に向かった~  作者: シッポキャット


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12/18

12 トラブル

御当地弁当(ごとうちべんとう)が――()()()()()

田中忠(たなかただし)の発した言葉を聞き、一同(いちどう)は金縛りにあったように動きを止めた。息を()むような緊迫感とは裏腹(うらはら)に、船のエンジン音がポンポンと長閑(のどか)に流れていた。


「消えているって……お弁当が自然に消滅するなんて事、ありえないですよね?」

秋月令子(あきづきれいこ)の問いに、やや落ち着きを取り戻した田中忠が大きく息を吐いた(あと)、参加者たちに目を合わせて答えた。


「御当地弁当は船に乗った際、職員二人と参加者七名分、合計九人分をしっかりと数えて確認している。大きめのレジ袋に積み(かさ)ねて入れ、(いた)まないように屋内の(すず)しい所に保管していた」


「確かに私も確認しています。トイレに行く途中の、(せま)い通路の(たな)に無造作に置かれていて、美味(おい)しそうな香りが(ただよ)っていましたね」

秋月令子が腕を組んで(うなず)いた。


 何とも言えない息の()まるような沈黙が続き、参加者たちの視線が一斉に巨漢の曽我部太(そがべふとし)に集中した。


「……ち、ちがう」

曽我部太はブルブルと顔を震わせながら、無実を訴えるように小さな声を漏らした。声変わりしていないのか、一オクターブ高い声に少し驚いた。


「あの数の弁当を全部(たい)らげて、痕跡(こんせき)を残さずに処分するのは(むずか)しい。この中の誰かが……気づかれないように皆の目を盗んで、弁当の入った袋をまるごと海の中へ捨てた。そう考えるのが、()(とう)だろう」

田中忠はそう言って腕を組み、船縁(ふなべり)手摺(てすり)にもたれた。


「いったい誰が何のために?! そんな事をして――誰も(とく)をしないし、良い事なんて一つも無いじゃないですか!」

期待していた弁当が()くなって怒りが爆発したのか、秋月令子は(つば)を飛ばして田中忠に詰め寄った。


 田中忠は興奮する秋月令子を(なだ)め、参加者たちに向き直って言った。

「残念な事だが、この参加者の中に愉快犯(ゆかいはん)がいるようだな。人が(こま)っているのを見て喜ぶような卑劣(ひれつ)な人間だ。予定されているカリキュラムを引き伸ばすわけにはいかないから、犯人探しは一旦保留(ほりゅう)する。

 だがこの件は放置できないし、列記(れっき)とした犯罪行為だ。合宿終了後にしっかりと検証して、必要があれば警察にも通報する。

 心当たりのある者は、(こと)の重大さをしっかりと受け止めておけ」


 俺は息を(ひそ)めて参加者たちの表情を(うかが)った。

馳久美子(はせくみこ)布引真子(ぬのびきまこ)のふたりは、マスクのせいではっきりとした表情がつかめない。


瀬野賢児(せのけんじ)は銀縁眼鏡のズレを直し、(けわ)しい顔を浮かべている。


金田龍人(かなだりゅうと)(いら)ついた表情で(こぶし)をぎゅっと握り締めていた。


曽我部太(そがべふとし)は暑さか冷や汗か分からないが、肌に張り付いたピチピチのTシャツを湿(しめ)らせて、ふうふうと苦しそうに息を吐いていた。


根本遥(ねもとはるか)甲板(デッキ)に寝転んだまま目を閉じていたが――恐らく起きていて、聞き耳を立てているのが見て取れた。


 俺がうたた寝をしている間に、早くも面倒な事件(トラブル)が発生したようだ。九人分の弁当が入ったレジ袋は、操縦室の後ろにある狭い通路の棚にあり、誰もがすぐ手に取れる場所に保管されていた。


 職員の田中忠は、レジ袋ごと海に捨てた愉快犯の仕業(しわざ)だと言った。その言葉で、俺の頭に最初に浮かんだのは()()()……の疑いがある根本遥。

 だが他の参加者たち、そして(ひね)くれた見方をすれば、船長や職員の二人にも犯行は可能だと言える。(まぎ)れも無くこの中に、悪意を持った犯罪者がいるはずだ。


 この事件(トラブル)が、何か大きな(わざわ)いが起こる前触(まえぶ)れだとしたら――。


 俺の漠然(ばくぜん)とした不安をよそに、船は徐々に速度を落として、古ぼけた木製の桟橋(さんばし)に接岸した。


 田中忠が、心ここにあらずといった秋月令子の様子を見て、しっかりと言い聞かせるように参加者たちに()げた。


「よく聞いてくれ。本来なら夜にみんなで作る予定だったカレーの食材が宿舎(しゅくしゃ)に用意されている。それを前倒(まえだお)しで作ろうと思う。みんなお(なか)も減ってるし、(つか)れてもいるだろうがこの際仕方がない。宿舎に着いたら荷物を置いて、とにかく(メシ)支度(したく)を始める事にしよう」

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