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青鳥島の合宿 ~陰キャでぼっちな俺が、引き籠もり女子と孤島に向かった~  作者: シッポキャット


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11/18

11 出港

 問題なく身体検査を終え、俺は手荷物を(まと)めて外に出た。回収されたのはスマートフォンと、がま(ぐち)の中に入っていた四万五千円ほどの現金。がま(ぐち)は理由を説明して、島への持ち込みを許可された。

 他の参加者たちは漫画やおやつの持ち込みで()問答(もんどう)が続き、職員たちは説得に手間取っていた。


 埠頭(ふとう)でぼうっと水平線を(なが)めていると、(かす)かな足音が聞こえた。振り向くと、ピンク色のマスクをした少女と目が合った。


 お互いに動揺して、すぐに視線を(はず)したが――瞬時に頭の中で布引真子(ぬのびきまこ)の似顔絵が浮かんだ。根本遥(ねもとはるか)はメモ帳に小さな文字で【ピンクマスク】【馳久美子(はせくみこ)より背が低い】と書いていた。


 俺は背後の少女に意識を向けたまま視線を水平線に戻した。気まずい沈黙を覚悟したが、ざわざわと足音が聞こえてきた。手荷物検査を終えた他の参加者たちが、ようやく出てきたようだ。


「1、2、3、4、5、6、7――OK(オーケー)、参加者全員、準備が(ととの)いましたね。これから船に乗って、いよいよ青鳥島(せいちょうじま)に上陸します。船酔(ふなよ)いが不安な人は、必ず酔い止めを飲んでおくこと。

 それでは船に向かいますので、一列に並んで私に付いて来てください」


 田中忠(たなかただし)が参加者たちを要領よく整列させ、秋月令子(あきづきれいこ)引率(いんそつ)で参加者たちは歩き始めた。並びは以前に点呼(てんこ)を受けた順番で、根本遥のメモ帳通りで分かりやすい。明らかに曽我部太(そがべふとし)の巨体が際立(きわだ)っていて、他の参加者たちの存在感が薄くなっている。

 観察に(かたよ)りがないように注意しながら、俺は前を歩く根本遥の後に続いた。


 年代物と(おぼ)しきチャーター船の前で、秋月令子が足を止めた。船首が細い乗降口になっていて、すでに船のエンジンがポンポンと鳴っている。

 準備されていたライフジャケットを装着し、参加者たちは職員たちの後に続いて恐る恐る乗り込んでいく。さすがの根本遥も怖気(おじけ)づいたのか、痛いくらいの力で俺の手を握ってきた。


「先に乗って」

「わかった」

俺は波に揺らぐ船首に先に乗り込んで、根本遥の手を軽く引っ張った。

「フフフ。ありがとう」


「それでは、青鳥島(せいちょうじま)に到着するまで自由時間とします。海を眺めるのは結構ですが、手摺(てすり)から身を乗り出したり、海に飛び込んだり、とにかく軽はずみな行動をしないように。気分が悪くなったら、すぐに私か田中先生に申し出てくださいね」

秋月令子の注意を合図に、参加者たちはそれぞれの縄張(なわば)りを確保するように動き出した。


 根本遥は他の参加者たちが移動した後、近づき過ぎない程度に距離をあけ、()いているベンチに座った。

 船はトイレが併設(へいせつ)された操縦室以外に屋根は無く、船縁(ふなべり)にはステンレス製の手摺が()え付けられていた。俺は手摺にもたれて景色を見るフリをしながら、参加者たちの様子を(うかが)った。


 持ってきた荷物を確かめる者、早速横になって眠る者、読書を始める者(文庫本の持ち込みは許されたようだ)……などなど。

 田中忠は監視の役目があるのか、立ったまま腕を組んで時折視線を移動させ、秋月令子は操縦室で船長と打ち合わせをして来ると言っていた。


 人物観察に集中し過ぎて気持ち悪い奴だと誤解されても困るので、島に着くまではあまり意識しないでおこうと思った。


 波に揺られ、手摺にもたれたままうたた寝をしている間に(しま)が見えて来たらしい。ざわざわした空気を感じて目を開けると、根本遥は甲板(デッキ)に寝転んだまま、リュックを抱き枕にして眠っていた。


「皆さん、お疲れ様でした。まもなく青鳥島(せいちょうじま)接岸(せつがん)します。船長さんの上陸許可が出るまでは危険ですから、その場で待機すること。

 上陸後、美味(おい)しいお弁当を(くば)りますから、長旅の疲れを()やしながら楽しく昼食を(いただ)きましょうね!」

操縦室から出てきた秋月令子が満面の笑みを浮かべて言った。


「やったー!」

金髪の金田龍人(かなだりゅうと)が声を上げて飛び上がり、巨漢の曽我部太(そがべふとし)が不気味な笑顔を浮かべて肩を揺らした。


「ちょっと待て!」

(なご)やかな雰囲気を()き消すような(するど)い声が船上(せんじょう)に響いた。声の(ぬし)は田中忠だった。


「ど、どうしたんですか急に……(こわ)い顔をして」

(おび)えるような声で秋月令子が(たず)ねた。参加者たちは息を()んで田中忠に注目した。


御当地弁当(ごとうちべんとう)が――()()()()()

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