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青鳥島の合宿 ~陰キャでぼっちな俺が、引き籠もり女子と孤島に向かった~  作者: シッポキャット


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10/19

10 優先事項

 根本遥(ねもとはるか)の悪い予感が、どの程度的中(てきちゅう)するのか分からないが――参加者たちの表情や態度から、不穏(ふおん)な空気が(ただよ)っているのは否定できなかった。


 俺が(だま)ってメモ帳をポケットに入れると、根本遥は残りのジュースを飲み干して言った。

「空き缶を捨ててきてあげる。あたしは先にバスに戻って(くつろ)いでいるわ」

 (から)になった缶を渡すと、根本遥はリュックを背負い自販機の方へ走って行った。


 俺は時計を確認し、急いで白川(しろかわ)に電話を掛けた。

『私よ。あれから一時間しか()っていないけど――状況は何か変わった?』

「合宿の参加者は俺と根本遥を(ふく)めて七人。他の参加者たちは、今のところ根本遥と(つな)がりは無いと思う」


OK(オーケー)。参加者の中に――女子も何人かいるの?』

「えっと……根本遥を入れて三人」

俺はメモ帳のページを(めく)って確認した。


(はじめ)のことだから大丈夫だとは思うけど、私は参加者たちにあまり深入(ふかい)りしてほしくないの。根本遥を含めて』

(さわ)らぬ(かみ)(たた)りなし――。合宿では出来る限り傍観者(ぼうかんしゃ)(てっ)しようと思ってる。しばらく連絡は取れないけど、心配しないでほしい。あとで面白い報告が出来るかどうかは分からないけど」


『何事も無く(はじめ)が帰って来たらそれでいい。何度も言うけど、くれぐれも気をつけてね』

「わかった。そろそろ時間だから、悪いけどこの辺で」

俺は電話を切り、ズボンのポケットから黒表紙(くろびょうし)の手帳を取り出した。


 手帳には根本遥の様子を気ままに書き込んでいた。俺は日時と場所、そして先程()わした根本遥との会話を、短く(まと)めて書き加えた。

「引っ込み思案の克服(こくふく)なんて……考えてる余裕は無いな」

俺は頭の中で優先事項を決めた(あと)、小走りでバスに戻った。


 バスはすさみ南IC(インターチェンジ)を南下し、海岸沿いの国道を走って行く。辛気臭(しんきくさ)い表情をしていた参加者たちも、車窓から見える美しい海に目を(うば)われ、身を乗り出すように景色を(なが)めている。


 秋月令子(あきづきれいこ)がマイクのスイッチを入れ、手摺(てすり)をつかんで立ち上がった。

「まもなく見老津港(みろづこう)に到着します。チャーター船に乗る前に、男女に分かれて身体検査と手荷物チェックをしますので、現地にいる職員の指示に(したが)ってください。


 田中先生が事前にお知らせした通り、許可されたもの以外は(しま)に持ち込めません。過去には服や下着の中に、刃物やスマートフォンを隠していた不届(ふとど)(もの)もいましたが。

 私たちはしっかりと合宿のカリキュラムを遂行(すいこう)し、皆さんを無事に帰すという責務(せきむ)があります。必要な事ですので、悪く思わないでください。

 回収したものはリストに記録し、職員が責任を持って保管しておきます。合宿を終えた後、帰りのバスに乗る前にすべて返却しますので、安心して合宿に参加してくださいね。

 ……それでは港に到着したようですから、忘れ物の無いように。体調が(すぐ)れない人は、バスを降りた後、我慢せずに身体検査の職員に申し出てください」


 バスは徐々に速度を落とし、広い車道に停車した。ドアが開いて、参加者たちは秋月令子の後ろに続き、手摺の付いたスロープを()りて行く。根本遥の背中を見ると、リュックは(はか)ったように(しぼ)んでいた。


 参加者たちは(みどり)屋根の建物の前で男女に分かれて整列した。女子の先頭には秋月令子、男子の先頭には田中忠(たなかただし)が立ち、参加者たちの顔を確認した。

「中に入ったら、持ち物をすべて職員に渡すこと。あとで各自(しま)に持って行きたいものを申告(しんこく)して、許可が出れば持参OK(オーケー)だ。


 身体検査は保健の先生が健康チェック、そして不審物を隠し持っていないかをしっかりと調べる。防犯上仕方のない事だから、気を悪くしないように。

 女子の方は秋月先生、男子の方はオレが立ち会う。気になる事があれば遠慮なく言ってくれ」


 参加者たちは不満気(ふまんげ)な表情を浮かべながらも引率され、無言で歩き始めた。


「根本さん、このがま(ぐち)はどうするの?」

俺は前に進む根本遥に(あわ)てて言った。


「そのがま(ぐち)は、あたしのお気に入りなの。あんたが首に下げて島に持って行って。許可は出るだろうから、中に手帳(アレ)を入れておいたら便利でしょ」

根本遥は一方的にそう言って、建物の中に入っていった。

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