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「おじいさん、早速魔法教えてくれッっ!!」
日が未だ昇っていない朝早くから、鉄製のドアが立派な家の前で頼み込んでいる子供がいた。
その者の髪は白く、眼は赤い。また肌も病弱とまではいかないが、かなりの色白だ。
背も小さく、おおよそ6歳から8歳くらいの容姿である。
まだ外は寒く、親がいたら心配しそうな程ではあるが、その体躯で叫んでいるのは自分の欲望。
あまり心配しなくてよさそうだ。
そんな子供の名前はイルン。
6年前にこの地に転生した...そう俺である。
「こんな朝早くに誰かと思ったら、お前か。
昨晩魔法を教えるといったのは儂だが、流石にこの時間に来る阿保だとは思っ ていなかったわい。」
「はぁ...」とため息をついて、不機嫌そうな顔でドアから顔を覗かせた老人。
「いやでも、魔法だよ!?魔法!」
「何故お前は魔法になるとそんなにテンションが上がるのか知らんが、魔法なんぞ誰でも呼吸のように使える”当たり前”の現象じゃろう?少なくとも元宮廷魔術師の儂を朝からたたき起こす理由にはならんだろう。」
そう言い、「もうひと眠りするかのう」と老人はドアを閉めようとするが、
「なっ!?」
俺ことイルンはすかさずドアの隙間に飛び込む。
「教えてもらうまで動かないぞ!」
と、ドアにはさまれた不格好のままに喋る。
「別に教えないとは、いっておらんのだが.....はぁ...。」
「まあでも学ぼうとする気概はバカ弟子たちよりはよいのか?」と、手を顎にあて何やら考える様子...これはあと一押しか?
だがご老人はやはり朝早くに起こされたのが相当頭に来てたらしい。
「そんなに魔法を知りたいのならほれ、「魔法式起動 yミニバースト+出力最低」
その声が聞こえると同時「あ、やべ」とドアの枠組みにしがみついた俺を、突然発生した突風がたやすく、ドアから数メートル離れた庭まで吹き飛ばした。
「ぐヘッ!」
地面を何度も転がり、近くの井戸に当たり止まるイルン。
「いったぁ..」とイルンが擦り切れた腕をさするなか、「バタン」とドアが閉められた。
それを見て急いでまたドアに走ろうとするが...
「魔法は教える。その切り傷も治す。だがそれは午後からだ!」とドアの向こうから怒鳴られ途中でやめる。
「流石に朝早くはダメだったかー、。でも魔法が使えるのを知ったら日本人なら誰でもこうなるだろ。」と呟き、イルンは寒い中得られた切り傷ともに家に一度帰るのだった。




