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富豪の家と娘


「ここが、富豪ハイローの家だ」


 街から山を登り、数十分。セキュリティの門を、マクマホンが権限で突破すると、さらに家の中にずかずかと入っていく。


 まるで自分の家のように歩くのには、違和感を覚える。捜査用のロボットが徘徊している。


「ところで、ハイローはどこだ?」


「やつか、死んだよ」


「いつだ?」


「いつだったかな、数日前かな」


「え! 待て、じゃあ、誘拐の捜査を依頼したのは、その富豪じゃないのか?」


「そんな事、一言も言ってないぞ」マクマホンは笑いながら答えた。


「検死はしたのか?」


「何で、病気だぞ。もう焼却されてる」


「さすがに早すぎないか?」


「わかっている。だが、どうしようもない」マクマホンはつまらなさそうな顔をして答える。


「それでここが、娘、ノーマの部屋だ。何か、感じないか?」彼は俺の顔色や目線を伺っている。


 その部屋の周りを見回すと、頑丈な扉が壊されている。押し入れの床にドッグフードの袋がある……


「いや別に」俺の家にもある普通の犬には食えない餌。


「アンドロイドはどこに?」


「おいおい、富豪の屋敷にそんなものがいるわけないだろ? 嫌がるだろう。警備ロボットくらいだ」


「じゃあ、使用人たちはどこにいる?」


「すでに、次の雇い主のところだ」


「全員その雇い主のところか? 話を聞きたかったんだが?」


「全員だ。新しい雇い主の所有権で面会拒否をされている。なかなか手強い」


『お前の特別捜査権で会えないはずがない』

つまり、第三国か……


「安心しろ、奴らは白だ。行動履歴は全て確認されている。お前の仕事は、娘の保護だけだ」


「基本的なことを聞くが、その娘が誘拐されたのはいつだ?」


「さあ……一週間前かな」


 やはり、いけすかない奴だ。



 昼間から酒を浴び、脳内チップを外すいつもの儀式を終えると、ナノを訪ねた。


 事件を整理しよう。マクマホンは信じられない奴だが、嘘は言わない。

 

 だが、言わない権利を使い、情報を誤認させる。


 今頃になって、マクマホンから情報が送られてくるが、そこには富豪の犯罪履歴や、クロガミたちが娘を攫っていく動画があった。


 ナノの集めた情報には、信心深い慈善家としての富豪の顔があるが、その事はもちろん書かれていない。


 どちらも、真実で、嘘だろう。情報社会ほど、真実を見極めるのは難しいが、物事は表裏一体だ。


「報酬だ」高級なステーキを焼いてナノに食わせる。いい匂いと音が、キッチンから聞こえているはずなのに、ナノはなぜか不満げだ。


「お菓子は後だ。食ったらやる」


 一瞬、残念そうな顔をしたが、あっという間に美味しそうな顔で平らげた。


 俺なら、間違いなく胸焼けするだろう。


「私を太らせてどうするつもり? それとも、太った女が好みかしら?」


「うまそうに飯を食うのを見てるのが好きなんだ」


「変態!」確かに罵られて喜ぶのは変態かもしれない。


 料理のバックグラウンドミュージックは、クロガミたちの会話の盗撮データだ。


「つまり、ギャングの誘拐じゃなくて、保護してるってことか?」


「そうね。古くからの顔見知りみたいな感じね」


 父親である富豪のことを、娘達も、クロガミたちも悼んでいる様子が映されていた。


「双子だったか?」


「違ったわ‼︎」


 クロガミも富豪も、失脚した政治家のグループの一員であることが、ナノの集めた情報で裏が取れている。


「クロガミの噂話は、富豪から聞いたってことだろうな」


 ナノの集めた情報から、関係者数人に連絡をして、作戦を固める。死んだハイローはかなり慕われているようで、協力的だった。危ない橋なのだが。


「ナノ、次に、クロガミと繋いでくれ!」


 盗撮器を通じて、地下と通話をする。色々と揉めていたが、結論が出たようだ。


「それじゃあ、作戦を開始する。サポートよろしく!」


 俺は部屋に戻り、チップをはめると街に出かけた。ロキに細工をしてから連れ出した。 賢い犬はとても嬉しそうに、駆け出した。


 街は相変わらず騒がしい。ギャングのボスに面会を申し込んだが、けんもほろろに断られた。


「探偵如きが、何のようだ?」


 昨日は、あんなに簡単に会ってくれたのに……仕方なく、マクマホンの名前を出すと、手のひらを返したかのような態度になった。


「要件は何だ?」


「クロガミの捜査を担当している。教えてくれ!」


俺が聞くと、ボスは鼻で笑って答えた。


「地下だよ!」


「一緒に行ってくれないのか?」


「馬鹿なことを言うな、今は手を離せない時期だ。一人の兵隊も惜しい」


 仕方なく、マクマホンに電話をかけ、事情を説明する。


「変わってくれってさ」


 目の前のギャングのボスが変わると、みるみる顔が青ざめていく。


「はい、わかりました」


「悪いが、全員出してくれる、勿論、ボス貴方もだ」


 ギャングが、俺を睨むのがおかしかったが、怖がるふりをしておく。


 三大ギャングのもう一つの組織にも声をかける。やり方は同じだ。


 地下の入り口は、オーソドックスなマンホールからの突入だ。


 哨戒用のドローンや警官ロボットも、マクマホンの指示で、投入するようだ。あれ程、出来ないと言っておきながら。


 地下道の散歩だ。ギャングによる大人数のピクニックは、俺も初めてだ。


 きっと、この街で珍しい、今夜は静かな夜に


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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