R-027.0426.1523 見覚え
その日はとても平和だった。
急な呼び出しも出動もなく、トレーニングと研究をしていたらあっという間に時間が経った。
缶コーヒーを買おうと席を立つと、継目が歩いてくるのが見えた。
こちらへ手を挙げ合図してくる。
「?」
「伝達事項だ」
「聞こう」
「本日十九時、面接をする。黎次にも立ち会ってもらいたい」
「急すぎるだろ……どこの班だ?」
「前線部隊だそうだ」
一瞬、息が止まる。
「お前……それでこんなギリギリまで黙ってたのか?無理だぞ」
「まだ何も知らないだろう。俺は少し気になっている」
こちらの反応は予想していたのだろう。継目は特に驚く様子も無く、書類をペラペラとめくる。
「見てみろ。これが履歴書だ」
ファイルから抜き出し、渡される。
「今回は俺のスカウトした人間じゃない。だから俺にとっても未知数なんだよ」
え?と思わず顔をあげる。
「じゃあ一般からの応募か!?いや、広告なんか出してたか!?」
「一鳥新聞にな」
「最大手じゃないか……どんな悪いことしたんだよ」
「一鳥新聞相手なら交渉材料があるからな」
「なんだよそれ」
「あるだろう。六・八で彼らは色々もみ消したがってた。その手伝いをした借りがある」
危ない橋の予感がする。
「裏技はリスクが付き物だぞ」
「ふ、このくらいの交渉無くしてキャリアなどやっていられない」
イケてる面が台無しの自慢顔に呆れる。
「ほら、さっさと目を通せ」
そうだった。
前線部隊での採用がお望みとは、腕っぷしに自信があるということか。
上から履歴書の文字を追っていく。最初は流し読みだった。
しかし見覚えがあることに気づき、視線を戻す。
「どうだ?気にならないか?」
「ああ……動機を聞きたくなった」
ギリギリタイムから失礼します。下地です。
次回も通常通り3日後、11月29日の投稿予定です。
そういえば、タグが変更されています。
シリアスをつけていたのですが、みんなの思うほどシリアスな展開にはならないと思われるので消去しました。そして怪獣は出てくるので新規でイン。
実は他にもつけたいタグがあるのですが、ネタバレになるので今はつけていません。
今後話が進むにつれ、増えていくのでそこもお楽しみに。