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番外編 あなたに、会いたくて4


 ユッカ祭。

 人目を忍んで生きてきた私にとって、気の重いイベントが始まった。

 毎年七月五日から七日までの三日間、地下東京のほぼ全学校が参加し行う大規模な運動会がある。通行規制がしかれ、商店や企業も参加し、出店が並ぶユッカ祭はお祭りの様相を呈する。

 誰でも観戦や催しの参加が可能で、地下東京で開かれる一大イベントになっていた。

 私はバレーボールにエントリーしていた。

 種目は運動会らしい徒競走や障害物競争、体操やダンス、著名なプロも参加するテニスやバスケ、野球なども人気で、観客席はいつも満員だった。

 それに比べ女子バレーボールは盛り上がりに欠け、チームスポーツなら人目も分散するという理由で選んだのだが、競技場に行くと人だかりができていた。

 魚石アスカが居る。

 編入三か月にして、彼女は有名人になっていた。あらゆるクラブ活動に顔を出し、才覚の片鱗を見せるも、どれも本腰を入れるには至らなかったらしい。強く勧誘される彼女を見かけたのは一度や二度ではなかった。

 偶然はそれだけに終わらない。

「よろしく、早生藤子さん」

 話しかけられて驚いた。名前まで。

「よ、よろしく。魚石さん」

「アスカって呼んで」

「え、じゃあ……アスカちゃんで。が、がんばろうね」

 急な接近にあたふたしつつも、なんとか当たり障りのない返事をする。

「ええ!勝ちましょうね!藤子!」

 人を惹きつける笑顔。一気に距離を縮めてきた魚石アスカはやっぱり眩しかった。近づいたはずなのに遠ざかったように感じる。

 ホイッスルが鳴り、試合が始まった。

 私はひたすらレシーブに専念した。繋げさえすれば、彼女が決めてくれた。バレーなんて体育で少しやったくらいだが、器用にこなせたのは自分でも意外だった。

 魚石アスカが牽引し一回戦、二回戦と勝ち上がる。

 勝ち進めば熱も入る。続く準々決勝ではチームの声出しにも勢いがついた。いつの間にか自分も全力でボールを追っていた。

 だが、勝負の世界は甘くない。

 準々決勝の相手はさまざまな種目で結果を残す強豪校だった。練習も大して積んでいないワンマンチームの聖ヘレナ女学院は打ち込まれる緩急多彩な攻撃を受けきれなかった。

 疑問の余地などない。清々(すがすが)しく、順当に敗北した。

 競った得点表は団結と情熱の結晶である。

 しかし、彼女はそう思っていなかった。


お疲れ様です。


全力を尽くしてなお拮抗する勝負はふしぎと終わってほしくないものです。

果てに訪れる心境とは。


次回更新も一週間後、10月10日の予定です。

よろしくお願いします。


時間が近づいてきます。

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