A-018.0520.1235 調べ物2
サンドウィッチを食べ終わり、湾野班長にまとめてもらった資料の一部を手に取る。
わたしの調べ物は、少しずつ進展している。
当然、知るべきは六・八事件だ。地下東京では一切語られていない大事。
資料にはこう書かれていた。
六月八日
午前六時二十五分 魔石獣が地上東京の複数箇所に出現。内、板橋区に現れた魔石獣はこれまでに類を見ない大型であった。
午前六時三十三分 政府は魔石緊急事態宣言を発令。板橋区より進行中の大型魔石獣を、身体的特徴からフジツボと名付けた。
午前八時七分 魔石特務部隊は板橋区除く各所へ別れて対応を開始。順調に撃破を重ねた。
午前十一時五十分 フジツボが東京基地に到達。半壊する。
午前十一時五十一分 前線部隊が集結。作戦会議後、各班それぞれの配置へ移動。
午後零時九分 作戦を開始。フジツボ迎撃に当たるが、前線部隊壊滅を全班が目撃。国際連合にも救援要請が出された。
午後零時二十八分 当時後援班所属の鮫浦黎次が、東京基地に収蔵されていた扶桑剣を無断で起動。
午後零時三十八分 フジツボの撃退を確認。
事件後、被害状況や初の討伐失敗の責を問われた魔石特務部隊は規模の縮小を余儀なくされる。
扶桑剣の無断起動を行った鮫浦黎次は刑法百九十九条で死刑判決が下った。
湾野班長が資料を渡してくれた時に言っていた。
『撃退って書いてあんだろ。ヤツは海に帰っただけだ。あれからずっと、鮫浦は海を気にしてる。海からの魔石獣って聞くと焦るように出ていく。うっとーしいもんだろ?おれらもなんかしないといけない気にさせられんだよ』
資料を閉じる。約二キロ先、まだ見ぬ海と汐風に思いを馳せた。
「お、いたいた。魚石ー今日は模擬戦だぞー」
「……はい」
「どうした?にらまれてるのか俺」
「いえ、そんなつもりは。すみません」
思わずまじまじと顔を見つめてしまっていた。
「ふーん?先行ってるぞ」
「わたしも行きます」
急いで立ち上がり、資料を抱えて鮫浦副隊長のあとに続いた。その背中を見て思う。
六・八事件。魔石特務部隊にとって大きな転換点となったあの日。
父さんも、副隊長もどこにいたのか。何をしていたのか。
聞いてしまえば早い気もしたが、踏み出せずにいた。
脱退の期限まで、残り一週間。
お疲れ様です。
復習回。改めて、お疲れ様でした。
次回から話が動きますので、見捨てずお待ちください。
次回更新も一週間後、7月11日を予定しております。
よろしくお願いします。
一つ目。




