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番外編 純心烈火の翼4


『お前も大変だな。ヒカリ、だったか?』

 食堂の昼ごはんに目を輝かせて頬張る彼女を横目に、こっそりと鮫浦黎次は話しかけてきた。

『ま、俺にできることはやってやるから。試算した感じ、お前が食ってるミーダ量半端ないらしいし、せめて効率的に使えるよう俺も知恵を絞るよ』

 彼の指南通り、Nコードの使用における効率化は進んでいった。

『魚石、それ力み過ぎ。もっと先端に集めて他を削げ』

『はい!』

 新たな(わざ)の開発も始まっている。こと戦闘技術においてはこの短期間で大きく伸びたと言えるだろう。あの母親に追いつくかもと思わせるほどに。

 だが経験は足りていない。困ると手が単調になるのは踏んだ場数の少なさゆえ。

 その辺りも彼女が後ろめたさを感じる所以(ゆえん)なのかもしれない。


 しかし、彼女は勘違いをしている。

 決定的だったのはそう、あの日。


『ごめんね、熱出ちゃって。もっと、遊びたかったのに』

 熱にうなされている彼女が、わたしに話しかけてきた。

『バカにされて、怒っていたの。三人家族って言ったら、みんな笑うんだもの。ヒカリも、大事な家族なのに』

 怒ったからといって、ストレス発散で倒れるほど遊ぶとは。

 相貌(そうぼう)と元気は母親譲りか。

 わたしの存在が、夢でないことを確かめたかったのかもしれない。

『好きよ、ヒカリ……』

 翼を握ったまま、幼体の彼女は眠りに落ちる。

 その寝顔を見て思ったのだ。

 この()はわたしを兵器ではなく、家族と呼んだ。


 だからわたしは、翼を貸す。

 降りかかる困難、暗澹(あんたん)たる魔の手、それら全てを破邪(はじゃ)の翼で打ち払うのだ。

 この身が、幾度燃え尽きようとも。

 貴女がわたしを呼ぶ限り。


『おねがいヒカリ。力を貸して!!』


 わたしは呼応する。


お疲れ様です。


これにて『純心烈火の翼』は終了です。

またいずれ番外編の機会もあるのですが、次回からはまたしばらく彼女らの視点に戻ります。


次回更新も一週間後、6月27日の予定です。

よろしくお願いします。


少し、状況を整理します。

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