番外編 純心烈火の翼1
彼女のことは、生まれる前から知っている。
赤子から、育っていく様をすぐ近くで見てきた。
彼女の母親は、いくつものNコードに適合し多重契約を行っていた。わたしもその内の一つ。多才だったと言える。
『あの子を守って。最期の命令よ』
母親と別れてすぐ、父親と娘はイギリスを出て、地下東京へと居を移した。
『ぼくも全力を尽くすけれど……いずれはきみに任せることになる。苦労をかけるね』
最初は口も利けない赤子だが、ホモ・サピエンスの成長は早い。どんどん大きくなって、言葉を話し、一緒に遊ぶようになった。
しかし、遊んでいたら彼女は熱を出して寝込んだ。
『そんなに心配しなくても大丈夫。きみのことが大好きで長時間遊び過ぎただけさ。まあ、これも必要な過程だね』
寝息を立てる娘の頭を撫でながら、父親が言う。
『才あるものには試練が付き物だ。彼女の娘だし、苦労するだろう』
『でも、きみとなら』
そして、彼女に転機が訪れる。
『地上に行く理由が出来たの……力を貸してくれる?』
以前は三週間に一回程度だった異空間での練習は毎日行われるようになった。
彼女は見る見る成長していき、母ほどではないが適合率の高さを示す。
異空間は先代の持つ情報から、イギリスの街並みと巨木の蔭、さまざまなNコードを駆使して捕らえようとする黒服の襲撃者たちが形成される。
迎撃する練習ももちろんだが、彼女自身の戦況判断能力や回避能力を上げることに時間が多く割かれた。
『ごめんね。あなたの力ばかり当てにして』
目標へ着実に向かう彼女はついに地上へと歩を進めた。
だが、ここまで順調であったはずにも拘らず、彼女は結果に納得いかないことがあったようだ。
彼女も変わり始めているのかもしれない。
お疲れ様です。
番外編なるものを始めてみました。変わったこともやってみたい。
誰の視点か、伝わることを願っています。
次回更新も一週間後、6月6日を予定しております。
よろしくお願いします。
第三者?




