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A-018.0428.1909 食堂

 移動すると、既に魔石特務部隊のほとんどが集まり、それぞれ席に着いて楽しそうにおしゃべりしていた。

 聖ヘレナ女学院より遥かにこぢんまりとしているが、特務部隊の人数はわたしを含めても十三人と少ないため、そこは人の活気溢れる食堂になっていた。

 長机が二列並び、種類もばらばらのパイプ椅子が五脚ずつ向かい合うように配置され、班の違いに関わらず、みな顔を突き合わせて食事している。

 鮫浦副隊長は居ないみたいだけど。

「お、来たな。新人」

 湾野班長が声をかけてきた。

「お疲れ様です」

「湾野班長!あ、一区切りついたんですかー?」

「ああ、面白いことがわかったぞ。比女班員。いや待てなんで一区切りついたって分かるんだ?」

「いやぁ?誰でも分かりますよ?」

 隣の席から、同じく研究班の瀬戸先輩が口を挟んできた。湾野班長をくんくんと嗅ぐ仕草をする。

「今は臭くないですもん」

「ほお?言うようになったな?瀬戸」

「顔こわ!事実でしょ事実!気にしてんならいつも風呂入ってくださいよ!」

「あははーあたしは湾野班長が、みんなと同じ時間に食堂に来てたから想像しただけですよー」

 やいのやいの研究班が言い合っているのは放って、比女さんが一列隣の席に座った。自分もその隣へ。

「よおし、ご飯の時間だ」

 千葉隊長と髙濵先輩がご飯を運んでくる。上司がご飯運んでる?

「「「おお!!」」」

 と歓声が上がった。

「新人ちゃんの歓迎用メニューですって!」

「魚石ちゃんありがとぉ!!」

「さめちゃん、食べれないなんてかわいそーね」

「酒はないのか!?今日は呑みたい日なんだが!」

「ふふ、ついにアタシの秘蔵をお出しするときが来たよーね……こちらにありますは鴪口食品売り上げナンバーワンのあとり印の生ビール!とっておきだから、味わって呑みなさーい!!」

 若い班員に負けず劣らず、後援班のベテラン組であるおばさまとおじさまも混じり盛り上がっている。

 メインはカツオとブリの刺身、副菜にたたいた長芋とめかぶの梅和え、肉味噌きんぴら、あおさのみそ汁とキラキラ光る白米……!

「うまそーっス!六結(むつゆい)さーん!」

 厨房の奥から手をひらひらと振るのが見えた。

「「「いただきまーす!!」」」

 あちこちでみんなが嬉しそうにご飯を食べ始める。

「こ、これ……食べていいんですか?」

 魚も野菜もご飯も多分、天然物。こんなの地下で食べようと思ったら何万円かかるか分からない。躊躇していた。

「当然でしょー!」

「六結さんのご飯はいつもすごいんだから!ほら魚石ちゃんも食べて食べて」

「は、はい!いただきます!」

 比女さんと髙濵先輩に背中を押され、ようやく箸を手に取る。

「……んっ!?」

 カツオの香りはとても上品で、ブリの刺身は薬味や醤油といっしょに食べるとよりうまみが引き立った。みそ汁は磯の香りが強いけれど出汁は上品で何杯でも飲みたくなる。

「おいブリの刺身と梅の和え物めちゃくちゃ合うぞ?」

「さしみうめー」

「くぅー今日もみそ汁だけでご飯なくなるっス。あーきんぴらもご飯に最高に合う!おかわりしてきます!」

 沖先輩がおかわりに駆けていった。

「いいねぇ。若者のエネルギー補給は見てて気持ちが良いよ」

「健全で何よりですねー」

「あら比女ちゃんも若いんだから、ちゃんと食べなさいな」

「あははーおかわりいってきまーす」

 そう言って、比女さんも席を立っていった。

 いつの間にか空になった、自分の茶碗を見る。

「……」

「ほら、新人ちゃんもいってらっしゃい。沢山食べることは恥ずかしいことじゃないのよ?」

「……はい」


 ベテランのおばさま、汐入しおいりさんに見透かされ、顔が熱くなるのを自覚しつつ茶碗を手に席を立った。

お疲れ様です。


飯食わせたかっただけの回ですが、こんなに恵まれた飯が食えるのにも理由があるかも?

また少しずつ、伏線を撒きます。


次回更新も一週間後、5月23日を予定しております。

よろしくお願いします。


修行パートって知ってますか?

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