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A-018.0428.1800 疲れの癒し方

 仮入隊のあいだ、後援班寮棟の一部屋を借りることになった。

「終わった……」

 荷物を置き椅子(いす)に座ると疲れがどっと押し寄せてきた。寝てしまいたいくらいだが、荷物の整理もしないといけない。

 重くなるまぶたに抗っていると、視界の端に二人から貰ったプレゼントが映った。

「……そうだ」

 起き上がり、二人のプレゼントを開けてみる。

 藤子がくれた包みを開くと、品の良い白い箱が出てきた。四隅に青い模様の装飾があしらってあり、金色の文字でハーブティーと書かれている。

 わたしが紅茶好きであることを藤子は知っていた。今回は変わり種のお茶ということだろう。まだ開封していないにも関わらず、ほのかに香ばしい匂いがしていた。

「良い香り。……そら子は何をくれたのかしら」

 今度はそら子に貰った茶色の箱を手に取る。贈り物という雰囲気の一切感じない無骨な箱だ。そら子らしいといえばらしい。

 入っていたのは最新型の二つ折り携帯だった。

 餞別とも言っていたけれど誕生日に携帯?

「ふふふ、実用的でそら子らしい……かしら?」

 役に立たない物を渡しても意味ないでしょう?とか言いそう。すごく言いそう。

「えーと、まずは充電するのね」

 取扱説明書に従い、充電ケーブルをコンセントに繋ぐ。電源が入った後の設定がどうのこうのと読み込んでいると、コンコンとノックの音が部屋に響いた。

「はい!」

 急いでドアを開けると、比女さんが立っていた。

「あははーごめんねー急に」

「いえ、何か御用ですか?」

「アスカちゃん。疲れたよねー?」

「正直、ヘロヘロです」

「あははー。じゃ!癒しにいきましょー!!」


 言われるがまま、着替えを持って部屋を出た。


 南通路を歩いていくと赤と青で分けられた暖簾(のれん)が見えた。

「さあ入るよー!!」

「銭湯ですか……初めて見ました」

 教科書でしか見たことのない古めかしい文化だった。

「地下には無いの?もったいないねー。疲れたならまずは命の洗濯から!色々教えてあげるよーアスカちゃん」

 桶やタオルを借りて、浴場へ向かう。

「大きい……!」

 扉を開けると湯気が身体を包む。窓が無いため日光は入らず、ぼんやりとした暖色の明かりが壁にいくつか掛けられ浴場を照らしている。

 薄暗さは夜を演出しているのだろう。

 大きな湯舟の壁面には、色鮮やかに描き込まれた星々が広がる、天の川の絵で彩られていた。

「綺麗ですね……」

「先輩方がお風呂大好きだったんだってー。珍しくお金かけて(つく)ったらしいよ」

 石鹸を泡立てると桃の香りがした。身体に沿わせた泡を洗い流し、肩までお湯に浸かる。

「はー!気持ち良いー極楽ー!」

「本当だ……気持ちいい」

 実家にも浴槽はあるものの、普段はシャワーで済ませることが多かった。

 引きずるような身体の重みが心地良い気怠さに変わっていく。存分に湯に浸かり、疲労を溶かした。

「ここまでお風呂が沁みたのは初めてです」

「でしょー。でもこれで終わりじゃないからね」

「?」

 首をかしげると、比女さんが楽しみを隠しきれないのか、ふっふっふと笑う。

「デトックスの次はエネルギー補給ー!みんな大好きご飯の時間だよー!!」

お疲れ様です。


休息は大事。旨い飯と風呂が大事だって伝えたい。

シャワーだけでは得られない効能がある!

誕生日プレゼントも開けることができました。前過ぎて、多分みんな忘れてる。

(ep.5 ケイジの外へ 参照)


次回更新も通常通り一週間後、5月16日を予定しております。

よろしくお願いします。


お腹が空きました。

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