A-018.0427.1708 特例のひな鳥たち
「では、尋問タイムといこう」
比女さんの言葉は一切聞かず、質問に移った。
「Nコードは普段から使っているか?」
「表で使ったのは初めてです」
「表……?どういうことだ」
白衣の湾野班長が首をかしげる。
「普段はこのペンダントの中に入って練習していますので、使い慣れています。しかし父から人前では使わないように言われていたので、今まで現実ではNコードを使ったことがありませんでした」
しばしの沈黙。
「えーと、なんだって?そのペンダントに入る?そこで、練習?」
「はい」
「それは、おれたちも入れるのか?」
「無理だと思います。登録制で定員が二人までなので」
「二人?」
「はい、わたしと大鷲が一羽。呼んでもいいですか?」
「……いいだろう」
湾野班長の一声と同時にペンダントが輝き、ベッドの隣に大鷲が翼を広げた。部屋中に風が巻き、カーテンやベッドのシーツが暴れる。
「キィイ!」
無邪気に返事をするヒカリをよそに、固まる湾野班長。
「き、気が早いわ!ヒカリ」
「あははーやっぱり大きいねー。人の言葉が分かるの?」
比女さんはあまり驚いていなかった。模擬戦を見ていたのかもしれない。
「分かるみたいです。わたしの大切な友達です」
「ペンダントの中に異空間?しかも待て……この鳥、胸にアヌンライトが!魔石獣!?!?」
「興奮しすぎですよー」
「前代未聞だ!これまで見た魔石獣に知性は感じられなかった。魔石獣を兵器転用する研究を進めている国もあるが、制御に成功したという話は未だ聞いたことがない。完全なる主従関係!!お前、この鳥をどこで!?」
急に饒舌な湾野班長の勢いに気圧されていたが。
「湾野班長、落ち着いてくださーい」
比女さんに制止され、はたと動きが止まる。
「あ、ああ、つい歴史的な事実に目が眩み……すまない」
「いえ……」
「じゃあ、話を戻すが。そうだな、ミーダって言葉は知ってるか?」
頭を掻きながら湾野班長が声色低く訊ねてきた。
「はい。わたしたちNコードホルダーは自身の持つミーダを消費してNコードを起動しています」
「その通りだ。ミーダはNコードの動力、ざっくり言えばエネルギー。保有量には個人差が存在し、使いすぎてゼロになると衰弱死する。時間が経てば体力とともにミーダも回復するらしいが……」
歯切れが悪くなる湾野班長。
「実際になにが起きているか、おれは知らん。なにせミーダは、Nコードホルダーや異法使いしかその存在を感知できないからな。だからこれは憶測に過ぎないが、気絶したのは衰弱死を回避するためだったんじゃないか。鮫浦も最初はよく倒れていた。帰ってきたら師事しろ」
その後、頭を冷やすために研究に戻ると言って湾野班長は帰っていった。
お疲れ様です。
初めて、湾野班長と魚石アスカが話しています。
魚石アスカとヒカリは珍しい状態にあるようです。
次回も予定通り一週間後、4月25日に投稿します。
よろしくお願いします。
さて、当の鮫浦副隊長が居ません。なぜ?




