A-018.0427.1653 敗北の感触
なぜか懐かしいと感じていた。いつだったか同じことがあったような。
近くで、話し声がする。
「まさか倒れるなんて……」
「医者には診せただろが。問題ない」
「湾野班長の意見も聞きたいですー」
「ふん」
模擬戦……そうだ。あのとき。
「えっ……」
首元になにか温かい物が触れていた。刃が触れているのだと理解するのには時間が掛かった。背後に鮫浦副隊長の気配。身体が硬直している。
拳は空を切り、行き場をなくしていた。
「ここまでだな」
首に触れていた刃が離れ、自由が許される。
「はぁっ……はぁっ」
力が一気に抜け、床に手をついた。
「お疲れさん」
「きぃ!」
炎翼から大鷲の姿に戻ったヒカリが顔を覗き込んできた。
押し寄せる疲労感はあったが、それより。
「どうやって避けたんですか?逃げ道は塞ぎました!なのに目の前から消えて!」
「おぉ、元気だな。今のはなぁ……」
歯切れの悪い鮫浦副隊長を見上げるも、視界がだんだん暗くなる。そのまま手足から感覚が抜け落ち、
倒れた。
「うわ!?限界だったかよ!熱出てるし」
「アスカちゃーん!?大丈夫ー!!??」
いくつかの足音と比女さんの声が遠くで聞こえ、意識が遠のいていった。
薄く目を開ける。
魔石特務部隊の人だろうか?初めて見る人が居た。目の下のくまが深くて不健康そうなその人は、白衣を着ていても医者には見えない。
「……あの」
気怠さを覚えつつも身体を起こす。
「ほう。起きたか新人」
「継目さん呼びますー」
「いくつか質問がある」
「湾野班長ーアスカちゃんはまだ目が覚めたばかりですよ」
「では、尋問タイムといこう」
お疲れ様です。
模擬戦が終わり、次のフェーズに進みます。
次回も一週間後、4月18日の更新予定です。
よろしくお願いします。




