R-027.0427.0910 妥協案
昨日と同じ面接室へと戻ってきた。
面接特有の緊張感が部屋に満ちる。
「昨夜、襲撃の一件を踏まえ、魔石特務部隊内で班長会議が行われました。結果、こちらの鮫浦副隊長の意見を元にまとまりました。今回は提案者である本人からお話をさせていただきます。ちゃんと説明しろよ、黎次」
「はいはいご紹介に預かりました……いやぁ前置きは要らないだろ。結論から言おう」
ジトっとした視線を感じたが、無視して話を続ける。
「一か月だ」
「……というと?」
返事をした彼女の声色は固く、緊張しているらしい。
とても大人びているから勝手に、泰然自若としているものと思っていた。
肩に力が入っていたのは俺だけじゃなかったんだな。
「現状、正式に雇うことはできない。襲撃を考えると今後も狙われる可能性が高い。それは魔石特務部隊にとってはリスクになる。ただでさえ人手は足りてない。お前の入隊がきっかけで起こる事件に巻き込まれるのは御免被りたい」
ぎゅっとスカートの裾を掴むのが見える。
「……はい」
「ただな」
「?」
「このままお前を地下に帰すのも危険だと俺たちは考えている。地下には犯罪が無いと言うが、今後の保証はない。Nコードが奪われて悪用されようものなら本末転倒だ。そこで、提案がある」
大人の都合を口にするのが後ろめたいが、
「後援班に仮入隊しないか?お前が自衛できるように鍛える。だが、期限付きだ。一か月経てば地下へ帰ってもらう」
「一か月」
「そうだ」
「……」
声のトーンは下がり、表情には影を落とした。
採用を断られただけではなく、半ば厄介者扱いだ。きっと不満もあるだろう。
「残る方法は、無いんですか」
「残り続ける方法は、無い」
「そうですか……分かりました」
あとは本人次第。
空気の重い数秒の沈黙を挟み、魚石アスカはこういった。
「わたしを入隊させてください」
お疲れ様です。
お互いにとっての先を考えての妥協案をひねり出した鮫浦副隊長。
魚石アスカにも目的がありますが、思った通りにはいきません。
次回も1週間後、3月14日の更新予定です。
よろしくお願いいたします。
どうでもいい話ですが、皆さん、サンドイッチは好きですか?




