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R-027.0427.0818 心配り


 シャワーを浴び、制服を着替える。


「お早う御座います」

 待機所に出勤すると、一人ノートパソコンに向き合う燈台さんから挨拶された。

「おはようございます。珍しいですね。燈台さんがここで作業してるなんて」

 デスクワークなら機材の揃った基地塔部のオフィスの方がいいはずだ。

 燈台さんはノートパソコンから顔を上げ、こちらを見た。ちょっとすくむ。

「鮫浦くん」

「はい?」

 若干声が裏返ってしまった気がする。

「魚石アスカさんの件、わたくしは新人を拒んだわけではありません」

「ああ、分かってますよ」

 燈台さんはいつも合理的だ。昨日の提言は、魔石特務部隊の負担を重く見てのことだった。

「必ずしもヒロイズムを是認ぜにんしていないだけなのです。後先考えず動く人ばかりでは、サポートする者にしわ寄せが来ます。我々は全能ではありません。人助けや美容は効率良く、適切に行わなくてはならないとわたくしは考えます」

 おーっと、これはお小言の流れだな……美容がどうとか言った?

「はっきり申し上げて、きみの仕事の仕方は嫌いです」

「……そうですか」

「なんでもかんでも自分だけでやろうとして、とても効率が悪い。ハイリスクです」

「それは、すみません。先輩たちとは違って、優秀ではなかったから」

「そう思うなら!」

 燈台さんが声を荒げるのをひさしぶりに聞いた。

「もっと頼ってください!共有してください!他班にも!新しい誰かにも!わたくしはもう、あの日の失敗を繰り返したくありません」


 六・八。その渦中でも、燈台さんは先輩たちに臆せず進言していた。

 他班との連携を見て、足並みをそろえるために様子を見るべきだと。

 しかし当時は前線部隊の意見が強かった。この間にも救える命を取りこぼしてしまうという意見が前線部隊の総意となり、人命救助と魔石獣迎撃は並行して行うこととなった。

 他班は必死に追従する形となるが、たった一発の広範囲に及ぶ攻撃が前線部隊を一掃。

 抵抗力を失った東京基地周辺は甚大な被害にあう結果となった。

 燈台さんの胸中はどんなものだっただろうか。

「きみはこの砦を守る二代目刀主であり、その要です。努努ゆめゆめ忘れないでください」

「……はい」

 彼女の言い分はいつも筋が通っている。

 規則的な靴音と共にすれ違う彼女を、目で追う気概は俺には無く。

『新しい誰かにも』

 言われた言葉が、頭の中で反芻していた。


 ふと、靴音が止む。


「ああは言いましたが」

 不意に声をかけられぎくりと固まったが、先ほどとは声色が違うことに気付く。

「?」

「……きみの、人としてのり方は嫌いではありませんから」


 聞き慣れない、うわずった声が聞こえた。

 驚いて振り返るも見えたのは一瞬のうしろ姿だけ。

 カツカツと、響く靴音が遠ざかっていった。

「ふ」

 つい笑ってしまう。

 朝早くから待機所までわざわざ足を運んだ理由。

 ちらりと見えたうしろ姿は、耳が少し紅かったような。


「お互い、不器用だよな」

お疲れ様です。


燈台さん回になります。

話は進みませんが、キャラにフォーカスすることも多分大事。


次回更新は一週間後、2月28日になります。

どうぞ良しなに。


次回はちゃんと話が進むよ!

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