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R-027.0422.1110 憂慮



 今日もまた、魔石獣襲来を知らせるサイレンが鳴る。

 急行したが、小物だったのであっという間に片が付いた。

 あとは研究班と、民間の清掃業者に後処理を任せることになる。

 無線機を拾い上げ声をかける。

「こちら前線部隊の鮫浦。事案対応終了、以上」


 旧丸の内中央口から基地の中へと入る。

 顔を洗い、汚れた制服を着替え、椅子に腰かけ一息つく。

 本当は報告書とかあるんだが休憩した後でもいいだろ。

 漫画の単行本を取り出し、目当てのページを開く。

 うきうき読み進めていた矢先、背後に迫る足音に気づく。

 振り返ると継目つぎめがいた。

「よう、ご苦労だな。ん?お前、何読んでるんだ」

 こいつが声をかけてくるときは厄介ごとを持ち込んでくる可能性が高い。

 漫画に向き直りながら答える。

「俺のバイブルに等しい何かだ」

「その漫画、女子が全員同じ髪型か?気持ち悪いぞ」

 聞き捨てならない言い方だ。

「何を言っている?ポニーテールこそ理想の極致だぞ。それこそが要であり、必須条件と言っていい。馬尾先生の描く漫画は全て女子がポニーテールでな。俺の理想を体現してくれる素晴らしい作家なんだ」

「とんだ過激派じゃないか。他人の趣味にどうこう言うつもりは無いが、くれぐれもその危険思想は隠して生きてくれよ。何かあれば俺は他人の振りをするからな」

「薄情な奴だなぁ……そうだ、復興はどうなっている?早く本屋が欲しいんだ」

「急に私欲を露出するんじゃない。基地の復興なら進んでいる。ただやはり街に活気を持たせるのは難しい。魔石獣の出現頻度が高い土地だ、投資しようとは誰も思わん。こればかりはどうしようもないだろう。あと敬語を使え。俺は上司だぞ」


 確かに被害を受けた東京基地は修繕が進み、周辺は以前より物々しく、要塞としての機能を備えていた。

 しかし東京基地を少し離れると、建物の数は一気に減る。

 災害直後山積みになっていた瓦礫こそ撤去されたが、民家のほとんどは一度崩れた家を十分とは言えない修繕を施し使いまわしている。地震なんて来たら一巻の終わり、防災のぼの字もない。

 更地のまま残っている土地も多く、風化の道を辿っていると言えるだろう。


 改めて、上司と向き合う。

 千葉継目ちばつぎめ。現在三十二歳。キャリア組のエリートで、二十七歳という若さでこの東京基地のトップに就任し、魔石特務部隊の隊長も兼任している。

「それで、千葉隊長はどんな御用でこちらにいらしたんですか?」

 顔を歪ませる継目。それでもハンサムな顔は崩れないのが小憎らしい。

「まあいい、本題だ黎次。いつまで部隊を一人で引っ張るつもりだ?」

 なんだまたその話か……。

「一人じゃない。後援班もオペレーター班も研究班もいる」

「屁理屈をこねるな。いくら扶桑剣で常人離れしているとはいえ、お前が動けなくなった瞬間、我々は敗走しなくてはならない。いい加減、前線部隊で運用できる新しい人材を探す。いいな?」

 頼み事ではなかったが、触れたくない話題だった。

 ……だが、確かにそろそろ決めなくてはいけない。

 現在、前線部隊に所属し戦闘を行っているのは自分、鮫浦黎次さめうられいじただ一人。

 昔は何人もの精鋭が所属していたが、大災害の日に先輩方が殉職してから俺以外の人員補充はされていない。


 いや、正確には俺がさせていない。


 精鋭であっても、彼らはNコードホルダーでも異法使いでも無い、生身の人間。先輩たちでは、魔石獣を相手取るにはスペック不足だった。

 だが国内で登録されているNコードホルダーは俺だけだし、異法使いは見つかっていない。存在自体が希少だ。

 今まで継目が見つけてきた者たちは優秀であったが、どちらでもなかったために全て不採用にしてきた。


「お前が何度不採用の判を押しても、俺はまた見つけてくるぞ」

「……」

 望み薄なのは継目も分かっている。

 それでも探してくると言う。必要なことだからだ。この隔離された東京でも。

 住んで、生活している人たちがいる限り。絶えずやってくる脅威に備えるために。

 時間は残り少ない。後釜を探さなくては。

 そんなこと、分かっている。


 分かっているが、決めきれずにいる。


次回更新はまた三日後、十一月十七日を予定しております。


まだまだ説明の段階を踏んでいる状態ですので、あまり面白味が……。

根気強く読んでくださる方が居ることを祈りつつ、三日後に備えて参ります。


それと!誤字脱字は確認次第どんどん修正していきますので、細かいところが変わっていることがあります。悪しからず。


追記 自衛隊に後処理を任せることになる→民間の清掃業者に任せることになる、に変更されました。

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