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幼馴染

前回のあらすじ

孫桓と対峙した張苞は、見事に父の仇である張達と范彊を討った。

この功績には間違いなく黄忠の力が欠かせなかった。しかし、その重要さに気づかない劉備は、、、

 遠く長坂の戦場で名を轟かせた蜀の武将・趙雲は、数多の戦でその勇猛さを示した。彼には二人の息子、趙統と趙広がいた。兄の趙統は劉徳と同い年で、幼い頃からの友であった。

「汝らは、これから阿斗に仕え、立派な将軍になるのだ」

 趙雲は息子たちに告げた。

「なぜ阿斗に仕えるのですか?」

 幼い趙広が不思議そうに言う。

「私は幾度も命を懸けて阿斗を守ってきた。長坂の戦いでは阿斗を背負いながら一万の曹操軍から逃れ、孫尚香に奪われたときも救出した。阿斗に仕えれば、きっとお前らも重用され、蜀漢に貢献することができる」

 趙雲が説明する。

「徳皇子に仕えてはならないのですか」

 趙統が訊く。

「阿斗は次の皇帝だ。阿斗は徳皇子を嫌っているためいずれ排除するだろう。だから関わるのはやめておけ」

 趙雲は苦々しく答えた。

「分かりました。父上」

 趙統は尊敬する友に仕えられないことを惜しんだ。

「蜀漢では皇太子をめぐって後継者争いが起きてしまった。しかし、何があろうとも兄弟間の争いはあるまじきこと。趙統よ、弟を大切にせよ」

「父上、もちろんです。弟は私の至宝。必ず護り抜きます」

「善き答えだ」

 趙統の答えを聞き、趙雲は安堵した。


「趙統か」

「徳皇子。奇遇ですね」

「最近、見かけないな。どうかしたのか」

「心配いりません。少し風邪をひいていただけです」

 趙統が答える。

「最近、流行っている風邪だろう。特効薬を作らせてそなたの屋敷に送っておこう」

 劉徳はにこやかに言った。

「感謝します」

「礼などいらない。ところで先日、関興、張苞と義兄弟の契りを結んだのだ。君も幼馴染だし、もしよかったら義兄弟にならないか」

 趙統は答えるのを躊躇した。

(友であり尊敬する徳皇子の誘いだが、ここで義兄弟の契りを結んだら、一生阿斗に嫌われ、将来、蜀漢に仕えることが出来なくなり、立派な将軍になるという父との約束も果たせなくなると考えたからだ)

「義兄弟の誓いは重すぎる。関興殿らとの親交も深くないので、お断りします」

「そうか、残念だが、そなたがそういうのなら仕方がない。また会おう」

 趙統は複雑な思いで劉徳を見送った。

 

 その頃、張苞と黄忠の部隊は、夷陵へと帰還していた。

「張苞は、朕の弟の仇を討ってくれた。感謝する。その功績を称え関興と同じ位である裨将軍(ひしょうぐん)に任命しよう。蜀には若き光がたくさんおり期待しかない」

 これにて関興、張苞の義兄弟は晴れて蜀漢の武将となり、堂々と父の跡を継ぐことができた。

 これに対し不満を持ったのは老将黄忠であった。

 黄忠がなにか物を言いたげに劉備を見つめていると

「黄忠は張苞を助けてくれたのだろう。よくやった」

 劉備はねぎらった。しかし、黄忠に何の褒美も与えなかった。黄忠はむっとし、援軍の指示を出した馬良へ訴えた。

「わしは、命を懸けて張苞を救った。なのになぜ張苞だけが昇格され、わしには何もないのじゃ。納得いかん」

 黄忠は憤怒した。

「私から陛下に進言しておきますので、心を落ち着かせてください」

 馬良は黄忠にも褒美を与えるべきだと劉備に進言したが、劉備は褒美を与えるどころか、黄忠を戦線から離脱させるよう命じた。

「若者を称え、老兵を軽んじるとは。今こそ我が力を発揮する時だ」

 黄忠は固く決意した。


 一か月後

「朕自ら夷道を制圧する」

 劉備は宣言した。

「断じてなりませぬ。陛下のお命が第一です」

 多くの将軍たちがこの策に反対した。しかし、諫言を押し切り劉備は侵攻を開始した。

 大将軍馮習(ふうしゅう)、黄権、呉班の他にも劉徳、関興、張苞の三兄弟や趙統も劉備軍に加わった。

 総勢五万の兵を率いて、夷道へと向かった。

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裨将軍とは、関興が任命された偏将軍と同じく、独自に軍を指揮するというものではなく、

他の指揮官のもとで指揮をする将軍の一人というような役割です。

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