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背水の陣

前回のあらすじ

陸遜は無謀な攻撃で敗退するも、蜀軍の弱点を見抜き火攻めを決行し、蜀軍を壊滅させる。呉軍は大勝利を収め、陸遜の卓越した戦略に呉の将軍たちは感服したのであった。

「何としても陛下をお守りするのだ」

 そう叫びながら、蜀の武将たちは劉備を囲み、火の海を縫うように進んだ。炎が四方から迫り、兵たちの顔に汗と煤が混じり合っていた。その光景はまるで地獄絵図のようであった。武将たちは命を賭して戦い、君主劉備を守った。

 戦場から少し離れたところ、かつて一万人もいた蜀軍の兵士たちは、今や数十人しか生き残っていなかった。劉徳と関興も、迫りくる呉軍と激しく戦いながら、なんとか生き延びていた。

「少し休憩しましょう」

 将軍たちは劉備を休ませようとした。その時、劉徳がふと周囲を見渡し、顔色を変えた。

「張苞がいないぞ」

 劉徳が声を荒げた。

「探しに行かなければ。戦場にいたら、生きて帰ることはできない」

「よせ、劉徳。自分の命を大切にしろ」

 趙統が止める。


「畜生め!」


 劉徳は涙を流し、地面を拳で打った。

「張苞は必ず帰ってくる。あの暴れん坊のことだ、きっとどこかで生きている。安心しろ」

 関興が劉徳を慰めるように肩に手を置いた。

「どうしてこうなってしまったのだ。我々はすべてを失ってしまった」

 劉徳が嘆く。

「弱音を吐くのではありません徳皇子!今まで私たちが生きてこられたのは、陛下のおかげです。それを忘れてはならないでしょう」

 関興は木に腰掛ける劉備を見て言った。

「そうだ、まだ諦めてはいけない。なんとしても父上をお守りしなければ」

 劉徳の目つきが変わった。


「いたぞ!」

 突然、茂みから声が上がったかと思うと、呉軍が突如襲いかかってきた。

「しまった」

 敵兵は劉備を標的に剣を振りかざした。関興がすかさず前に立ち、剣を交えて防いだ。

「やはりここは危険です。一旦夷陵まで退避しましょう」

 劉備たちは自らの砦である夷陵を目指して急いだ。

「はあ、助かった」

 なんとか夷陵に辿り着いた。しかし、その城の様子が異様であった。いつもなら蜀軍の兵士が城壁にずらりと並び、見張っているはずなのに、今日はその姿が見えない。

「これは一体どうなっているのか」

 城門の前まで進むと、突然声が響いた。

「逆賊劉備よくぞ参った。我が名は韓当。夷陵はすでに我が手中にあり、お前の逃げ場はない」

 呉の武将韓当が冷笑を浮かべながら現れた。

「劉備を討て!」

 胸壁にぞろぞろと兵が集まり、弓を引き絞った。

「まずい。これは想定外だ」

 矢が雨のように降り注いだ。城門が開き、多くの呉兵が押し寄せてきた。

「必ず陛下をお守りする」

 関興は迫りくる敵兵をなぎ倒した。しかし、関興は数本の矢を受け、膝をつきながらも必死に劉備を守り続けた。

「ここまでか」

 劉備が諦めの表情を浮かべた。


「諦めてはなりません。あなたは蜀の皇帝なのです」


 劉徳がそう叫ぶと、劉備の背後に回り戦い続けた。

「終わりだ、劉備」

 韓当が冷酷な笑みを浮かべたその瞬間、背後から雄々しい声が響いた。

「我が名は常山の趙子龍。陛下には指一本触れさせん」

 趙雲の援軍が駆けつけたのだ。その横には、張苞の姿もあった。趙雲軍は呉軍の包囲を崩し、次々と敵を蹴散らしていった。

「張苞ここにあり。どっからでもかかってこい!」

 張苞は丈八蛇矛を振り、敵を切り裂いた。

「これはまずいことになった」

 先ほどの威勢は一体どこへ消えてしまったのか。呉軍は瞬く間に崩れ去った。韓当は焦り、まだ場外に兵士がいる中、急ぎ城門を閉じた。

「今のうちです。西へ逃げるのです」

 趙雲の指示に従い、劉備たちは命からがら白帝城へと逃げ延びた。

「本当に助かった。趙雲よ」

 劉備が深い息をつきながら言った。

「張苞が早馬で知らせに来てくれたのです」

 趙雲が答えた。

「そうか、張苞。姿を消して心配したが、援軍を呼びに動いてくれたのだな。本当にありがとう」

 劉備は張苞の肩を叩き、感謝の意を示した。

 この戦いで劉備は大敗を喫し、莫大な損害を被った。蜀軍の未来は依然として暗雲に包まれていたが、劉徳や張苞、関興、そして趙雲の救援のおかげで歴史は紡がれたのであった。

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