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決戦の時

前回のあらすじ

蜀の武将趙雲は、息子たちに阿斗に仕えることを勧めた。

友情と家族の約束の間で葛藤する趙統。

一方、張苞と共に功績を上げた黄忠は、劉備の取り決めに不満を抱いていた。

 眩しい日差しが照りつける頃

(目に物見せてやる)

 黄忠は部下数十名を連れて、呉の将軍徐盛(しょせい)の陣へと向かった

「進め。突撃だ!」

 黄忠が叫ぶと、自ら徐盛に向けて突撃を仕掛けた。

 しかし、突撃の際、矢が命中し致命傷を負ってしまった。

 黄忠は、傷を負った身で劉備の本陣に戻ったが、その時には既に虫の息だった。

「私は一介の軍人にすぎませんのに、幸運にも陛下と出会うことができました」

 黄忠は劉備に別れを告げ絶命した。

「また一人、蜀漢の忠臣を失った」

 劉備は嘆いた。

 いつも陽気な張苞も、この日ばかりは静かな様子だった。口を開けば不安そうな言葉がこぼれた。

「俺が黄忠殿を死なせてしまったのか?」

 暗い表情で、張苞がつぶやいた。

「君に責任はない。心配するな」

 関興が慰めた。

(黄忠殿の分まで陛下に仕えます)

 張苞は心に誓った。


 劉備は孫桓の陣に近づくと

「孫桓の軍を窮地に追い込み、陸遜をおびき出さねば」

 と考えた。そこで、七百里に渡り夷陵から夷道への通り道に柵を連ねた陣営を築いた。

「陸遜は臆病者だ」

 そんな油断が蜀軍の中でも出始めていた。


「孫桓を攻めても陸遜が姿を現さない。どうしたものか」

 劉備は困り果てていた。陸遜は遠来の劉備軍の疲れを待つ持久戦を取っていたのだ。

 その後も劉備は孫桓の軍を執拗に攻撃したが、陸遜は救援軍を出さなかった。

「我が陣は、猛暑の中、日差しが当たり、持久戦には不向きである。全ての陣営を山林や渓谷に移動するのだ」

 劉備が命ずると蜀軍はすぐさま陣営の移動に取り掛かった。


 この策を聞いた劉徳は驚きすぐさま参謀馬良のもとへと向かった。

「陣営を移動させてはなりません。もともとこの夷道の地は背後に山があり一つ一つの陣地を密集せざる負えません」

 劉徳は馬良に訴えた。

「長江は西から東に向かって流れています。つまり川沿いを進む我が軍は東征を行う事は容易ですが、退却することは非常に困難です」

 若き劉徳の話を馬良は真剣に聞いていた。

「同感だ。すぐに陛下へ進言しよう」

 馬良が賛同すると、二人は劉備のもとへ向かった。

「陣営を移動するにあたり、各陣営の移動地点の絵図を描いて丞相のご意見を伺うべきではないでしょうか」

 馬良が提案する。

「その必要はない」

 劉備がつっぱねる。

「多くの意見を聴けば正しい判断ができますが、偏った意見しか聴かなければ誤った判断をしてしまいます」

 劉徳はそう言い父に再考を求めた。

「確かにそうだな。諸葛亮の意見を求めよう」

 劉備は納得し、陣営移動の絵図を描き始めた。


 そのやり取りの最中

「陸遜が攻めてきたぞ!」

 陸遜自ら一軍を率い劉備軍の陣営に攻撃を仕掛けてきたのだ。

馬岱ばたい。出番だ」

 劉備が命じると、馬岱は兵を率いて陸遜を迎え撃った。

「私は錦馬超の甥、馬岱である。陸遜はどこだ」

 いくら油断していたとは言っても正面から敵軍が突撃してくれば跳ね返せないわけもなく、馬岱は陸遜をすぐに撃退した。迅速な対応により劉備軍にはほとんど被害が出なかった。

「やはり陸遜は大したことない」

 そのような油断はさらに広がった。

「陸遜には何か企みがあるはずだ」

 劉徳は感じつつも、その真相は突き止められなかった。


 諸葛亮からの返事を待たずに劉備軍の陣営は着々と山林地帯に移された。

「素晴らしい陣形だ。これならば孫桓の軍を一気に壊滅することもでき、持久戦も可能になるであろう」

 劉備は自信に満ちた口調で述べた。

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