蜀漢建国
分かるること久しければ必ず合し、
合すること久しければ必ず分かる。
「陛下、御命令の書をお持ち致しました」
皇帝は静かに座り、古き良き時代を偲ぶように、眼を伏せていた。
「徐永、お前か。待ちわびていたぞ、入れ」
徐永は礼をした後、大事な書物を差し出した。
「かの書は、見つかったか?」
「はい、すでに忘れ去られた書庫の奥に、隠し扉がありました。そこには、忠烈帝に関する資料が数多く残されていたのです」
皇帝はうなずき、信頼のおける徐永に感謝の意を示した。
「我が祖先の偉業と歴史を辿れば、反乱を鎮め、皇帝の権威を回復し、この国を導くことができるだろう」
厚い歴史書を手に取り、皇帝は埃を払った。
中国全土は三つの王朝により統治され、各国が相互に勢力争いを繰り広げるさなかであった。
皇帝劉備には二人の御子がいた。長男の劉禅(阿斗)は、側室の甘夫人との間に生まれ、今年で十五になる。彼は愛されるばかりで、のびのびと育った。一方で、三つ下の次男劉徳(阿義)は、孫権の妹、孫尚香との間に生まれたため、周囲からは軽蔑されて育った。なぜなら、孫尚香は既に敵国の皇族となり、呉に逃亡していたからである。
父である劉備が皇帝として即位すると、民衆は喜びと祝福の声をあげ、首都成都では、大いなる宴会が催された。
「陛下万歳!陛下万歳!」
宴会には劉備の家族や臣下が参集し、大変賑わった。劉禅と劉徳もその中にいた。
「父上、蜀漢の建国と皇帝への即位、誠におめでとうございます。私も父上のように民を想い、民を救う人になれるよう、日々努力致す所存でございます」
「阿義よ、そなたの言葉を聞き、朕は嬉しく思う。お前はまだ幼くして賢く、学問に励み、情に厚く謙虚な心を持っている」
「ありがとうございます。これからも精進致します」
劉備は劉徳に期待を寄せながら、厳しい言葉も投げかけた。
「しかし、優しさだけではこの乱世を生き抜くことはできない。時には自分の意志を通すことも大切だ。将来、蜀漢を支える立場に立つためには、そうした強さも必要なのだ。期待しているぞ」
「ご期待にお応えできるよう、尽力致します」
劉徳は頭を下げ、席に戻ると、隣に座っていた劉禅に鋭く睨まれた。
「兄を差し置いて、父上と話すとは何事か」
「兄上、申し訳ありません。一刻も早く父上にお祝い申し上げたく、つい先走ってしまったのです。」
「お前は何もわかっていない。兄弟には序列というものがあるのだ。皇太子になるのはこの俺だ。でしゃばるな」
劉禅は劉徳の足を踏みつけ、怒りを露わにして部屋を出て行った。
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