魔境へ
さて、いい汗をかいた。
「ユージンさんは大人げないな。」
「…それ、隣にいる俺の姿を見ても言えることか?」
だって、ボコボコにしちゃいたいくらいにムカつかせるからさ。
「…さて、あちらは、まだまだ時間がかかりそうだから、僕は一足先に、帰りますね。」
そう告げると、僕は一路、校門へと向かった。
「お!バーンも今帰りか?」
「そうだよ。キッシュも?」
「そうだな。精霊術を専攻している子も少ないし、精霊が付いているからほぼ教えることもないしさ。みんなの精霊と話をして帰ってきたってわけ。やっぱ、王都の精霊達と違って、みんな心温かいやつらばっかだったわ。」
精霊術は、その名の通り、精霊と契約をする。
そのため、その適正が必要となるが、適正を持った人が多くいるわけもなく、その人数は限られてくる。
そして、キッシュ曰く、精霊にも性格があるらしく、王都の精霊達は、高飛車で本当に辟易したらしい。
キッシュ本人は、精霊術との相性がとてもよく、よく様々な精霊達から声をかけられるらしい。
もちろん、契約する精霊の数は、人によって決まっているがキッシュはその素質から、多くの精霊と契約できるらしい。
精霊にも育った環境によっても性格が違うらしく、最果ての村の周りの精霊は、穏やかで暖かく、かといって弱くはなく、とても居心地の良い雰囲気を持っているらしい。
その一方、王都の精霊達は、人間の貴族と似ているらしく、生まれや家柄等を自慢し、高飛車な態度で、契約をしようとするらしい。
ちなみに、寝ている間に本人の承諾もなく、契約しようとした精霊もいたらしいが、キッシュが元々契約している精霊達の力によって、阻止されたそうだ。
「はぁ…なんかさ俺、王都の学校辞めて、ここに残ろうかな…」
まぁ、本心であろう言葉が漏れたのを聞いて、うなずいた。
「それもいいかもね。あっちはさしがらみが多すぎるし、生徒会とか貴族とか、さらには先生とかさ、本当に面倒くさいよね。僕も、こっちがいいなぁ」
僕たちの意見は全く一緒で、二人して大きな声で笑った。
「バーン。愚痴聞いてくれてありがとうな。」
「どういたいたしまして。こちらこそありがとう。」
お互いに例を言うと、校門をくぐり、分かれた。
僕は、その足で村の城壁…町になっているよね。
町の城壁をくぐり、門番に挨拶をした後、今回の目標であるレベルアップを目指して、魔境へと向かった。
身体強化魔法をかけ、30分ぐらい走ると、魔境の入り口が見えてきた。
入り口といっても、門があるわけではなく、そのあたりから、鬱蒼と茂った森が見えてくるのである。
森は、左右に広がり、奥はどこまでも続いていると考えられている。
考えられているというのは、誰もこの森を踏破したことがなく、また魔境であるが故のことなのだけど、毎回入るたびに道が変わり、マッピングの意味がないのである。
「という訳で、早速ですけど、魔境へと入りますか。」
ベルクカイザーから譲り受けた、二振りの剣を手に取り、魔境の中へと進んでいった。