自分のスタイル
何合打ちあったんだろう。
目の前には、バトルジャンキー…もといマチルが、狂気の笑顔で僕を攻め立てる。
これでもかこれでもかと…息する暇がない…わけではないけど、そろそろやり返さないといけない。
そんなことを考えていると、マチルの渾身の一撃が入ってきた。
「考え事してるから!」
上段から振り下ろされた一撃。
「…ふ!」
マチルの一撃を左の短剣でいなし、軌道を変える。
そして、右の剣でマチルの首元に刃を突きつける。
「……………負けました…………」
マチルは渾身の一撃がかわされ、更には返す刀で自分が死地に立っていることを頭では、理解しいたと思う。
でも、顔は鬼の形相だった。
「はい。ありがとうございました。今度はちゃんと、後輩たちの稽古をつけてくださいね。」
釘を刺すことも忘れない。
「……ぐ……」
マチルは頷くと、足取り重く、後輩たちの元へと行き、悔しさの鬱憤を晴らすように、後輩たちに稽古をつけ始めた。
「あの……」
マチルを見送ると、先程マチルにやられかけたシャーンが僕に話しかけてきた。
「どうしたら、バーンさんみたいになれますか?」
『どうしたら、ベルクカイザーみたいになれますか?』
その質問は、6年前、僕がベルクカイザーにした質問と一緒だった。
『どうしたらか……まずは食べる!そして、寝る!その後は体を鍛えて、勉強もする!そしたら強くなれる!』
なーんて、言われたけど、シャーンが聞きたいのはそんなことじゃないよな。
シャーンを見ると、マチルに勝てないのがかなり悔しいのか、下唇を噛み締めながら、僕の答えを待っていた。
あれから、6年…僕も少しは答えられるのかな。
「シャーン…君の武器は短剣だね。」
うなづくシャーン。
「そうしたらさ、今君は攻撃のことしか考えていない。とにかく攻めせて攻めて攻めて攻めて…って感じにね?」
シャーンに確かめるように、話を続ける。
「確かに君のスピードとテクニックは、目を見張るものがある。だけど、それだけだとバランスが悪いんだよ。」
「バランス…」
「そう。バランスだ。体のバランスじゃなくてね。攻守のバランス。」
シャーンがアドバイスを聞いて黙る。
たぶん、さっきの僕の戦いを思い出してるのだろう。
何回も何回も反芻し、自分のスタイルと比べているのであろう。
ブツブツ独り言を言いたながら頭を整理している。
「……バーンさん…ありがとうございました!」
そう言うとシャーンは、一礼をしマチルが稽古をつけているところへと駆け出していった。
その背中には、何か得るものがあったのだろう、自信と挑戦したいという、ワクワクしている気持ちが見てとれた。
「6年前…僕もベルクカイザーと一緒にいた時、あんな感じだったのかな?」
「まぁ、あんな感じだったよ。一期生11人はさ、みんなベルクカイザーにべったりだったしな。あの人がいたから、今の俺たちがあるんだよ。」
懐かしそうに喋るユージンさん。
「そうですねぇ…では、ユージンさん…手合わせをお願いしますね…」
「え…?」
ユージンさんの顔が青ざめる。
「え?じゃないですよ〜…せっかく帰ってきたのに、先生と手合わせしないなんて…そんなことあるわけないじゃないですかぁ…」
多分、めっちゃ嫌な笑顔なんだろうなぁ。
「バーン…いや!お前!あや!やばっ!」
双剣を握り直し、突撃。
ユージンさんのニヤニヤ顔を思い出した。
ユージンさんも剣を構えるが…
10分後…ボコボコにされた先生がそこにいた。