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時を超えて

アビスグラップラーとの死闘の後、回復薬を一気にあおぐ。


「ふぅ…転ばぬ先の杖とはこのことだよね…」


回復薬を飲んだあと、アビスグラップラーの死骸を収納鞄に納め、その場を後にした。


ダメージもかかえているため、帰り道は魔獣に合わないよう、慎重に戻った。


途中、魔獣に遭遇しそうになったが、気配を消し、やり過ごすことを選択した。


入った時間の倍の時間をかけて、魔境を脱した。


魔境を脱した後は、回復薬の効果である程度身体が回復したため、身体強化を使って村へと向かった。


「…た、ただいま…」

「…おかえり!ってえっ!?」


家に着く頃には夜中近くになっていて、メアリーと母さんは就寝していた。


そして、うたた寝をしながら待っていた父さんは、僕の満身創痍の姿を見て驚いた。


「バーン!どうしたんだ!?その傷!?」


満身創痍で帰ってきた、僕をみるなり父さんが駆け寄り、体の心配をし始めた。


「ちょっとね…魔境ですっごく強いやつに出会ってさ…戦ったらこの様…上には上がいるって体感したよ…」


そう伝えると、僕は父さんに体を預けて気絶した。


「…!おい!バーン!ってか、重いだろお前!我が息子ながらよく成長したもんだ…」


傷ついて帰ってくる息子を見て成長したと思えるのは、男親だからだろう。


こんな姿、母さんとメアリーには見せられないな。


気絶したバーンを担ぎ、2人を起こさないように部屋へと運んだ。


「…っつ…」


朝が来た。


僕は痛んだ体に悩ませられながら身体を起こす。


「…いたっ…めっちゃ痛いな…」


アビスグラップラーとの戦闘で壊しかけた腕は、回復薬の効果で回復したけど、身体強化を使った反動が身体全身にきていた。


それでも体を動かし、食堂へと向かった。


食堂では家族が早い朝食を食べていた。


『おはよう』


「おはよう」


3人の普通の挨拶に驚きを隠しつつも、父さんの方を見ると、テーブルの下で親指を立てていた。


それが何のことか気づいた。


食卓に向かい父さんの後ろを通る時にお礼を伝えた。


微かに父さんの頭が動いた気がする。


「いただきます…」


体は痛いけど、家族愛を改めて知った朝だった。


朝食終了後は、アビスグラップラーの件を話にベルクカイザーへと向かう。


途中、メアリーとの攻防もあったが、何とかかいくぐり、今は応接室にいる。


「さて、バーン君が倒してきたという、アビスグラップラーを見せてもらえるかな?と、その前に、セイラ、バーン君に回復魔法をお願い。」


セイラさんは頷くと、回復魔法をかけてくれた。


「ありがとうございます。お陰様で楽になりました。それではこちらがアビスグラップラーです。」


応接室の奥に空き空間を作り、そこにアビスグラップラーの死骸を出す。


『………』


3人が大きく息をのむのが分かった。


最初に言葉を出したのはジョーンズ先生。


「…バーンよ。これを一人で倒したというのか?」

「はい。」


ジョーンズ先生の目を見て答える。


「そうか…よく倒せたものだ…こやつはなかなかの強敵でな…硬い装甲により、物理攻撃が効きにくく、さらには魔法までも弾く…そして極め付けは、その格闘術とスピード…あの当時、ベルクカイザーがいなかったらと思うとゾッとするわい…」


一気に捲し立てるジョーンズ先生。


それほど、アビスグラップラーとの戦闘が嫌だったのだろう。


「ほんとうに…肝を冷やした戦いでした…回復魔法をかけるのが少しでも遅かったらと、今でも思い出したくない一戦です。」


セイラさんがそう言うと、シンさんとジョーンズ先生が頷く。


「まぁ…そのあとが辛かった…ベルクカイザーさんがこのままだとやられると思ったんだろうね…その場にキャンプ地を作り、アビスグラップラーと幾度となく剣を交えたよ…もう、ほんとうに…もう…」


シンさんが当時のことを思い出し、頭をくしゃくしゃとかいた。


「じゃな…と言うわけで、アビスグラップラーってのはそのくらいの魔獣なんじゃ。よく生きて帰ってこれたな…バーン…」


あぁ、そう言うことか。


一歩間違えれば死があったと言うこと…今そのことが実感できた。


自分が強くなったと勘違いし、単身で魔境に入ったのは大きな間違いだったようだ。


「…はい…心配をおかけして申し訳ありません…」


ことの重大さに気づき、3人に頭を下げる。


「…そうですね…あなたがいなくなることで、悲しむ人たちがここにはたくさんいます。ですので、以後はちゃんと一言言ってから魔境に行って下さいね。」


セイラさんの優しい言葉が身に沁みる。


「まぁ、男だからな。そう言うこともあるだろう。俺もそうだったし。でも、時を超えてベルクカイザーさんは、僕たちを守ってくれてるんだな。」


シンさんの言葉が出た時、双剣が少し輝いた気がした。

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