アビスグラップラー
主人公はチートっぽいけど、チートじゃないです。
「GRUUUUUUU…」
早速、魔獣が前に立ちはだかる。
ワーウルフ。
魔獣の基本中の基本である。
群れをなして行動し、その鋭い牙と爪で相手を傷つける。
一匹であれば、何も問題ないが、それが10数匹になると脅威になってくる。
「なんだけどなぁ…やっぱ、群れでくるよね!っと!」
一匹のワーウルフが、鋭い牙で噛みつこうと突っ込んできた。
その一撃をよけ、返す刀で胴体を真っ二つにする。
「うぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!!!!!!!」
その一撃を合図に、ワーウルフの群れがコンビネーションを駆使し、襲いかかってきた。
「ん~…コンビネーションをしても、まだまだだよなぁ…もっともっとスピードを上げないと、僕には傷1つもつかないよ。」
襲いかかるワーウルフを避けては斬り、受けては斬り、双剣だからこそできるカウンター技で、死体の山を築く。
残った一匹は、逃げようとしたため、追いかけて処断。
ワーウルフの群れは、きれいさっぱりいなくなった。
「昔は、結構苦戦したのにな。やっぱり、もっと奥に進まないと、相手がいないかな。」
ワーウルフの死体を、収納鞄に入れ、さらに奥へと進む。
道中、ワーウルフだけではなく、クリッターなどの小型で群れで襲ってくる魔獣が多く、経験値としてはありがたいけど、一匹ずつ倒してくのは、とても手間だった。
1時間ぐらいが過ぎた頃だろうか、日も傾き掛け、そろそろ帰ろうとした時だった。
『GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』
「ちぃ!アビスグラップラーの登場ですか!?」
魔境には、様々な魔獣がいるが、現段階でこの魔獣には会いたくなかった。
アビスグラップラーは、体調2~5メートルの中型魔獣で、見た目は走竜みたいな形であるが、四肢の筋肉が以上に発達しており、そのパンチは鋼の盾ですら破壊しかねない、強力な力を発揮する。
今回出会った個体は2m弱、それでも十分に強力な魔獣である。
パーティを組んで来ていれば、戦う気も起こるが、今回はソロということもあり、撤退することにした。
『パキ!』
「ついてないな…」
後ずさり使用としたその一歩目で、見事に枝を踏み抜いた。
『GUGUR?AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』
「くそ!」
その音を聞き、アビスグラップラーが接近する。
移動速度は、早くないもののそのプレッシャーは言うまでもない。
接近した瞬間、頭を下げる。
アビスグラップラーの右拳が空を切る。
そのまま、カウンターの斬りつけをするが、相手のいなしによって流される。
そして、いなした力をうまく使い回転肘がとんできた。
その肘をうまく避けると、下からは膝蹴りが追加でとんでくる。
「ちぃ!」
双剣をクロスし、武器破壊覚悟の防御態勢を取る。
『GURAAAAAAAAAAA!』
勝利を確信した、アビスグラップラーの雄叫びが森に響いた。
そして、双剣とアビスグラップラーの膝がぶつかった。
『GURAAAAAAAAAAA!?』
「やっぱすごいよね、この双剣…」
双剣と膝がぶつかる瞬間、クロスした双剣をそのまま、アビスグラップラーの膝に切りつけた。
結果として、アビスグラップラーの硬い膝には大きな傷が生まれ、今までに経験をしたことがない痛みにさらされた。
「やっぱね、攻撃と防御は表裏一体だからね。まぁ、僕もいい感じにやられたけどさ。」
双剣を握り治すと、指の感覚がとても鈍かった。
衝撃を逃がす予定が斬りつけたため、指が何本か折れたらしい。
さらには、腕にもひびが入っているかもしれないな。
「だけど、ここで終わる訳にはいかないよな…」
傷を負った魔獣は経験を積むことでさらに強くなり、村を襲う可能性が高くなる。
ましてはアビスグラップラー…強くなることを求める魔獣は放ってはおけない。
幸い、武器は壊れていないので、あとは身体強化をかけ無理矢理体を動かせば、なんとかなるだろう。
「と、言うわけで、そのままほっとけないので、やらせてもらいます。」
身体強化を行い、双剣を握りなおす。
敵は目の前。
地面を蹴り、肉薄する。
狙うは、首。
そこを一閃することが、最大目標である。
「らぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!」
剣が首に触れた瞬間、アビスグラップラーの装甲の厚さに、一瞬抵抗があった。
しかし、この剣の鋭さは、その装甲すらも凌駕した。
首を一閃し、通り過ぎると、アビスグラップラーの首が地面に落下していた。