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始まり

「これは、君にあげるよ…」


最果ての村を救ってくれた英雄が、僕にくれた二振りの短剣。


英雄は、僕の家で静かに息を引き取った。


周りにはたくさんの村人が集まり、英雄の死を嘆いた。


勇者よりも、賢者よりも、聖女よりも、僕達の近くにいてくれた英雄。


本人は、英雄と呼ばれるたびに、そんなんじゃ無いと照れていたが、最果ての村を救ってくれたのは紛れもない、この英雄だった。


最果ての村を拠点に、様々な魔物から村を守り、僕達を救ってくれた。


戦闘の腕は、めっぽう強く、どんなに強力な魔物でも、果敢に向かっていきいつも笑いながら帰ってきた。


時間が開けば、村の子供達に魔法や剣術、格闘術など、英雄が英雄になるまでに培った、知識や技術を村に与えてくれた。


そんなある日、この最果ての地に勇者の一行がやってきた。


そして、この村の英雄を連れ、最果ての地、魔境に踏み込んでいった。


何日か経った頃、ボロボロになった勇者一行が戻ってきた。


装備品はボロボロ、顔もやつれ、本当に命からがら帰ってきた様子だった。


しかし、その一行の中には、英雄の姿はなかった。


村長が英雄について聞くと


「彼は、俺たちを逃すために、殿を務めると言ってくれた。僕たちも止めたが、村を守るためにもと言って、笑顔で魔物の集団に飛び込んでいった…」


勇者は鎮痛な面持ちで魔境の中で起こったことを話してくれた。


最初は順調だったが徐々に魔物が強くなってきたこと、英雄が時期尚早と言って引き換えそうと提案してくれたこと、そして、その提案を却下し進んだことで、魔物の怒りをかったことなど、勇者と言われた少年は自分の下した決断を悔やんでいた。


そして、逃げる際に、英雄が殿を務め、自分たちを逃す時間を作ってくれたこと…


英雄の帰還は勇者たちが帰還してから2日が過ぎた頃だった。


傷だらけで、装備と言えるものはほとんど破壊され、残っているのは2振りの短剣。


その短剣を手に持ち、殺気を放出しながら、帰還した。


村に着くと英雄は倒れ、そのまま村の宿屋で寝かされた。


運良く、勇者一行が村で滞在していたため、聖女が回復魔法をかけたが、時すでに遅く、回復の見込みはたたなかった。


それから、一週間後、英雄はたくさんの村人に囲まれて静かに息をひきとった。


英雄の墓は、村の一番小高い丘に作られ、たくさんの人が涙した。


そして、僕は、英雄が息をひきとるそのときまで、そばを離れず、看病しながら英雄の話しをゆっくりと聞いていた。


そして、亡くなる前日、英雄は教えてくれた。


「彼らを恨まないでくれ…彼らは彼らなりに…戦った…少し実力が足りなかったが…でも、この世界のために本当によく戦ってくれた…バージ…この2振りの短剣を君にあげるよ…そして、この村、この世界を守って欲しい…やっと、俺もこの役目から解放される時が来たみたいだ…」


そういうと、英雄は2振りの短剣を僕に渡し、静かに寝始めた。


夜が明け、朝になった時、英雄の寝息は静かに消えていた。

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